80/116
後奏14
「あらあら、先客がいらしたのですか?
それに、もうお知りになったようですね」
「マルーカ様・・・」
戸口に立っていたのは御領主婦人だった。
「ミスカさん、とおっしゃったかしら。
まず落ち着きましょう!
お茶の用意をさせますから、そこにお座りになって。
ノア、支度をお願いいたしますね」
「はい、奥様」
ノアさんが席をはずしている間、取りあえずリリアとミスカが並んで腰掛け
向かいにマルーカ様が腰掛けた。
ザアーザアーザアー。
外は、大雨。
雨音が気まずい静寂を埋めてくれる。
「あの、お気づきだったのですか?」
リリアがおずおず尋ねると、マルーカ様はにっこり笑ってお答えになった。
「気づいたのは、私ではありません。
ハルフォードです」
「ハルフォード様?」
「あなたを失神させたお馬鹿イケメンですわ」
「!」
思い出した!
控え室で出会った方のことだわ!
そこにタイミングよくノアさんがお茶の用意を整えて入ってきた。
「まず、お茶をいただいてから、詳しいお話をいたしましょう。
でも一つだけ、訂正いたしますわ。
舞姫さんは倒れたのではなく、ずっと眠っているだけだそうですわ」
その目覚めに自分が大きく関わってくることなど
予想だにできないリリアであった。




