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後奏5
それは、不思議にリアルな夢だった。
新月の夜、その樹はまるで満月のように輝いていた。
ーあれが、月光樹
たわわに実っているのは、銀鈴の形をした貴きもの。
しかし、これを狙って恐ろしきものが迫り来る。
ーやだ!!怖い!!
やっぱり私には無理です!
その場にしゃがみこみ、耳をふさぎ、目を閉じ、
己を遮断する。
「大丈夫、俺がまもるから」
誰かがじぶんを悪しきものから守ろうとして、
間に入る。
「君は君の果たすべき役割を・・・」
「・・・ア、リリア様!
どうかなされたのですか?」
ゆさぶられて、目が覚めた。
視界に入ってきたのは、心配そうなノアさんの顔だった。
「あの、あたし・・・」
「ああ、やっとお目覚めになられましたね。
お声をおかけしてもなかなかお目覚めに
ならなかったので、心配しましたよ」
やっと領主館におとまりしたことを思い出した。
「・・・お、はよう、ございます」
「お腹がすいていませんか?
すぐに朝餉のしたくをいたします」
準備が整うまで、ぼーっとしていた。
そして、朝餉のおいしそうな香りをかぐうちに
夢のことなどすっかり忘れ去っていたリリアなのだった。




