フィルイン
薬草の匂いが満ちる部屋の中で、彼の乙女はこんこんと眠り続けている。
傍らでじっと見つめる男は、また、重いため息をつく。
「そんなに見つめていりゃあ、穴があいちまうってもんさ」
「ど、どこに?」
「鼻の下」
「あ、2つもって、おばば、からかうのもいい加減にしてくれ!」
「ふぉっふぉっふぉっ」
きょうも、昨日とほぼ同じ会話が繰り返される。
眠りについたルルカ。
目覚めぬ養い子を心配して毎日ため息をおとす風の一族の長。
そして、それをからかう薬草師のおばば。
ー目覚めぬ理由は誰にも告げられないからのお。
まあ、もうしばらくすれば、変化がおきるじゃろうて・・・
その時、外で長を呼ぶ仲間の声がした。
「何事だ!今は取り込み中だぞ」
「それがあ、そのお、上品なルルちゃんがいるんです」
「はあ?何いってやがる!
ルルカはここにいるじゃねえか。
寝言は寝て言え!!」
「まあ、お待ち!
上品って、月神殿の巫女さんだね」
「と、もう一人」
「もう一人?」
部屋の入り口の掛布がめくられ、ひとりの若者が顔をのぞかせた。
「ご無沙汰しております、長殿。
その節はお世話になりました」
「へたれくそぼーず!!」
「・・・・・、くそはつけないで下さい。
連れが目を白黒させています」
掛布の向こうには、もう一人のルルカ(リリア)がハルフォードの影に
隠れるようにしてたっているのだった。




