間奏31
「消えろおおお!」
その男は、兄上めがけて短剣を振りかざし迫ってきた。
とっさに兄上の前に立って剣を構えた。
その時のことをよく覚えていないのだが、男が吹き飛ばされて
おじい様に取り押さえられたのは記憶にあった。
すぐさま騎士団が駆けつけ、騒ぎは治まったが
俺たちはおじい様の館に護衛されながら帰るはめとなった。
おばあ様が心配してお茶を入れて下さる中、
ようやく兄上が口を開いた。
「ハール、ありがとう!
さすが、俺の愛すべき弟よ♡
見事な剣裁きだったぞ!!」
「はあ~・・・」
俺は、どうも釈然としないまま、おじい様の帰りをまち、
その後、とんでもない命令を言い渡された。
「ハルフォード、今日からお前は世継ぎの君の護衛騎士として
グラディアスを護るのだ」
「!」
それは、夜遅くの出来事。
密かに赤の領主のもとを男が訪れた。
「久しいの、風の主よ」
「御大もお変わりなく」
「ところで、あいつは月乙女の祝福を受けたのだな」
「目にはしておりませぬが、おそらくは」
「さもありなん。そのおかげで我が孫は九死に一生を得た。
まあ、これで2度目だが」
「月の精霊さまの加護のおかげでしょう。
それはそうと、切りつけた男は・・・」
「お前の推測通り、夢魔にやられておった。
あれではもう、救いようはなかろう。
だが、時満ちるまでまだかかりそうじゃのお。
偶然とはいえ、かくもおもしろいことじゃ、
ほっほっほ」
「笑い事ではありませんよ、ったく」
「まあよい、しばらくは様子見じゃの」
「では、これで失礼いたします。
くれぐれもご油断なされますよう」
そう言って男は去っていった。
それを見送り、つぶやいた言葉は届かなかった。
「危機はすぐそこにせまっておるのやもしれん。
お前こそ、油断は禁物じゃぞ」
こうして兄上と俺の腐れ縁生活が始まったのだった。




