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フィルイン
ルルカがつれてきた少年は、健やかな寝息をたてて深く寝入っている。
その横で連れてきた本人もぐっすり寝込んでいる。
ーこんなに早く出会うはずじゃなかったのに・・・
選択の刻は、まだ先のはず。
取り敢えず、予防線だけ張っておきましょう
そういうと、記憶を消す“時渡草”の粉を少年に振りかけ唱える。
“汝の選択のその時まで、かの乙女の名、しばし封印せん”
言の葉が輝きを放ちながら、少年の身体の中に吸い込まれて消えた。
ーこれで、ルルカの名前は分からないわね。
これから先のことなんて、まだ、分からなくていい。
今は、ただ、ゆっくりとおやすみなさい。
ぱちん。
まきがはぜる音で、ふと、己の姿が本の精霊の姿に戻っていたことに気がついた。
「おやおや、なんてこったい!
あたしももうろくしちまったかねえ~」
そう言って、普段の老婆のすがたにもどる。
口の悪さも結構気に入っている今の姿は、ここ何年も撮り続けているせいで
すっかりなじんでしまった。
まだ、夜は深い。
いつものように、歌を口ずさむ。
♬おやすみなさい おやすみなさい・・・




