間奏7
その日は朝早く目覚めた。
昨夜からワクワクして眠れなかった。
彼女に何を贈ろうかと考えるだけで、
それを受け取ってくれた時の笑顔を思い浮かべるだけで、
こんなにも幸せな気持ちになれるなんて・・・
この想いが“恋する気持ち”なんて、当時の俺には分かりっこなかったのである。
まだ眠っている他の人を起こさないように、
俺はそっと抜け出して、街へと向かってとにかく歩いた。
けっこうな距離はあったのだが、弾む気持ちで足取りも軽く俺は有頂天になっていた。
ようやく街の入り口にたどり着いて、市場か露天を探してキョロキョロしていると
出店準備中の雑貨屋を見つけた。
近寄って品物を見ていると
「ぼうず、母さんのお使いかい?」
と声をかけられた。
ふるふると首を振りじっと固まってしまった俺に、親切な店のおやじさんが気を利かして
尋ねてきた。
「おくりもんかい?今いくら持ってんだ?」
握りしめた手のひらを開き、握りしめて汗でべとべとになった小銭を見せた。
「それだけかい?じゃあ、りぼん一本ってとこだな。
おまけしてやるから、こん中から好きな色を選びな!」
それは、本当に色とりどりで、迷ってしまった。
あれでもない、これでもないとまよううち、上から影が被さってきて声をかけられた。
「お探しもうしあげました、ハルフォード様。
お父上がご心配なされておられます。
我らと共にお越し下さい」
そうして、腕を力強くつかまれた。
「嫌だ!離せ!!
俺は、父なんか知らない!
離せったら離せ!!」
しかし、一度懲りているのかなかなか腕を振り切れない。
暴れているうちに、手に持っていた小銭がこぼれ落ちて道端に広がった。
「ああ!!俺のお金が!」
そうこうしているうちに待機していた馬車に無理やり載せられた。
「馬車を出せ」
走り出した馬車のまどから思い切り彼女の名を叫ぼうとしてはっときがついた。
俺は、彼女の名前を知らないことに。




