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前奏28
領主様の館の中庭は広く作られており、数百人が余裕をもって入ることができる。
今日は領民にも解放されており、精霊の舞を今か今かと待ちわびている人々でごった返している。
館では、賓客がすでに到着していた。
「久しいな、マルーカ。今日は世話をかける」
「ようこそ、若様。ご機嫌うるわしゅう。
何もおかまいできませぬが、ごゆるりとお過ごし下さいませ」
領主婦人マルーカ様は、世継ぎの君の乳母として城勤めをしていたため、息抜きとしょうしたお忍びで若君がおとずれていた。
「ここからよく見えますよ。
あら、いつもの護衛の方は一緒じゃないのですか?」
バルコニーに案内しながらいつもと違う護衛がついていることに疑問を投げかける。
「ああ、あれは観衆に混じって護衛についている。
まあ、精霊の加護がふかいこの地で危険などあまりないだろうが・・・」
領主様が広場に現れ、開会の宣言をする。
「我が民よ!
きょうのよきひを共に祝おうぞ!
みなみなに月の精霊の祝福があらんことを」
りーンりーンりンりン、りーンりーンりンりン。
銀鈴の音が響き渡る。
舞の始まりである。




