前奏19
「さあ~お腹もいっぱいになったことだし、ここでおさらばしよっかねえ。
ほんじゃ皆様ごめんあさ~せ~」
と言いつつ、去っていこうとするルルカの袖をむんずとつかんだのは、
涙目のリリアだった。
「待って下さいませ!!
お願いします!!
私の代わりに月刀の舞を舞って下さい」
すっと冷たい表情になり、リリアがひゅっと息をのむ。
「月刀の舞は選ばれし巫女だけが舞えるんだろ?
あたいには無理だね。
中止しなよ、ばかばかしい」
「出来ません!だってこの分殿の存続がかかっているのですから!!」
必死の顔でルルカにすがりつくものの、涙でぐちゃぐちゃの顔では迫力もなにも
あったもんじゃない。
「お離しなさい、リリア。
関係のないルルカさんを巻き込むのはよしましょう。
いくら“風舞の癒やし姫“といえど、
この舞は難しすぎますもの」
それを聞いたルルカの表情が悔しさをにじませる。
「難しいかどうかやってみなきゃわかんないよ!
あたいの二つ名にかけて舞ってやろうじゃないの」
(うふふ♡見事に引っかかったわね。
あの意地っ張りで見栄っ張りな兄様に育てられたんですもの、
単純さもまるっと受け継いでいるようね!)
心の中でにまーとわらっている腹黒巫女長にまんまと騙されるルルカなのであった。
ゾゾゾゾワワワワアアアア。
「長、どうしたんですかい?身震いなんかしちゃって?」
「いや、急に寒気がしたんだ。なんか悪いもんでも食ったかな?」
慈しんできた養い子が、自分のトリセツを知り尽くしている妹に、
まんまと利用されているとは知る由もない純情兄であった。




