前奏11
ルルカが舞っているのは、広場の脇にある水飲み場の四角い縁石の上。
大人の靴幅程しかない石の上を、器用に舞ながら移動していく。
その足下で幼い子どもが手拍子しながら舞を楽しそうに見ている。
ーあのガキ、確かこの前の・・・
あれは、数週間前の出来事だった。
小汚いガキを一人連れて俺たちが野営しているテントに戻ってきた。
仲間からいろいろといだたされるまえに、一言。
「腹いっぱい食わせろ!」
「・・・・・」
「あたいにじゃないよ、この子に」
また始まった。
ルルかはいつもこうだ。
困っている奴は人間だろうと、動物だろうと拾ってきては世話をする。
どうせ情が移っちまって分かれるときにつらいのは自分だっていうのに、懲りない奴。
あの堅物ガキンチョだってそうだったというのに。
「昼餉の残りがおばばんとこにあるはずだ。いってこい」
ガキの手を引いておばばのとこに行ったものの、まず体の汚れを落としてこいと追い返されたらしい。
その後事情をきくと、どうやら市場のルルの店の横でそのこが花を売り始めたらしい。
しかし、その花は野原で咲いてるありふれたもの。
当然売れるはずもなく、そのうちふらふらとルルカの方に倒れ込んできたという。
聞けば、父親が病気でなくなり母親とふたり暮らしだったが
その母親も病弱で寝込んでしまい食べるものもなくなったという。
村おさに申請すれば援助が受けれるのを、移住してきて間もないため手続きを知らずにいたようだ。
生きるためにはまず食え!
これが我が一族の座右の銘である。
だから、まず腹を満たしてやること。そして、どうするか考える。
あん時も堅物ガキンチョに食わせようとしたら、なかなか食おうとしないんで
自分も食わない!といじくらべしたっけ。
最後はガキンチョが根負けしたけど。
今、どうしてっかなあ~
「さあさあ、あたいの祝福付きの花はいるかい?」
「俺にくれ!」「わたしも!!」
かごの花は飛ぶように売れた。
ルルカ舞を見ると幸せになる。
これが、ここでの常識。
実際舞を見ると、心の中がすっきりしてほっこりできるのだ。
そりゃあ、当たり前だ。あいつの舞には、俺しか知らない秘密があるのだから。




