後奏35
騎馬は二人を乗せたまま全速力で駆けていった。
馬上ではリリアが失神寸前だったが、乗り手がしっかり支えてくれていたので
どこか安心感があった。
ーハルフォード様なら大丈夫。
そうしているうちにスピードが落ち、だんだんゆっくりな速さに変わった。
ようやくバクバクしていた心臓も落ち着きを見せ始めた頃、
頭上から聞き慣れた声がおりてきた。
「申し訳ありません。大丈夫ですか?」
「は···い、もう、大丈夫、で、す」
ふーっ、という大きなため息が聞こえ、
完全に動きが止まった。
「うちのバカ兄がついてくるといって聞かなかったので、まいてきたんです」
「バカ兄?あの、世継ぎの君様が?」
「ええ、そうなんです。子どもじゃあるまいし···
過保護過ぎるんですよ、兄上は」
「分かります、そのお気持ち。
お姉様達もとても過保護ですもの」
日頃の過保護ぶりを思い出して、思わずフッ、と笑みがこぼれた。
「リリア殿はみんなから愛されておられるのですね」
「はい!とても」
神殿のみんなを思い出すと、心がほっとしてきた。
緊張がとけたのが分かったようで、ハルフォードが声をかけてきた。
「あと少しでつきます。速さを上げてもよろしいですか?」
「はい。大丈夫です!」
そうして騎馬はスピードをあげて駆け出した。
ーもう、大丈夫。
同じ共通点がみつかったことが嬉しくて、安心して馬上にいるリリアだった。
まわりの景色は紅色に染まりかけ、夜の訪れが間近にせまりつつあった。
戦いの時は、近い。




