後奏33
久しぶりの月神殿にほっとしたのもつかの間、姉巫女たちの熱烈歓迎で
一息つけたのは自室に戻ってからだった。
「やっぱりここが落ち着きますわ···」
寝台に寝転び目を閉じる。
浮かぶのは、別れ際に見たハルフォードの笑顔。
はっと目を開け、顔がじわじわと赤くなっていくのが分かった。
「私、どうかしたのかしら?
きっと疲れているのね。
早く休みましょう!」
そういって再び目を閉じる。
こんどはストンと眠りが訪れた。
一方こちらは領主舘。
世継ぎの君とハルフォードの二人きり。
「どうだった?愛しの舞姫との再会は?」
「言葉にならない程感動で打ち震えました!」
そういっておばばから吹き込まれた話を涙をじんわりうかべながら
ドラマチックに語って聞かせた。
ー何かうさんくさいなあ~
ハールのやつ、薬草師殿に弄ばれているんじゃないか?
くそがつく純粋ぼうやだからな···
愛する弟の熱弁を聞きながら、グラディアスは冷静だった。
「そう言えば、おばばから兄上に預かったものがあるんです」
そういって差出された包みの中には、ひとふりの短剣が入っていた。
「これは!?」
「月刀のニセモノです。
俺がいないあいだのおまもりだそうで、肌見放さず持っておけ、
だそうです」
けげんな顔の弟にめもくれず、世継ぎの君は短剣をじっと眺めるのだった。
もうすぐこの国に、危機が訪れようとしている。




