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後奏32
リリアはいったん月神殿に戻ることを希望し、馬車で送ってもらうこととなった。
「ありがとうございました。奥様によろしくお伝えください」
「それでは、3日後またお迎えにまいりますね」
ノアさんが挨拶し、馬車が走り去ろうとした瞬間、リリアが慌てて声を上げた。
「あの!ハルフォード様!!」
急に呼びかけられ、少し驚いたふうでハルフォードが答えた。
「リリア殿、何かございましたか?」
ちょっとためらってから、答えた。
「あの、いろいろ、ありがとうございました」
最初ボカンとしていたハルフォードだったが、極上の笑顔で答えた。
「これからもよろしく!」
走り去る馬車を見送るリリアの顔はまっかっかだった。
領主舘に戻る道すがら、ノアはハルフォードに尋ねた。
「女性に無愛想なハルフォード様にしてはお珍しいですね。
あのように素の笑顔でお答えになるなど」
「当たり前だろう!大事な想い人を目覚めさせてくれる人だぞ」
そういって再会した場面でも妄想しているのか、ニヤニヤ顔を浮かべているハルフォードを見ながら
少し不安になるノアだった。




