不協和音じゃあ 恋のメロディーは 奏でられません!
満月の輝く月下の下で、彼の乙女は 自ら舞い奏でる。
たんったたん。
たんったたん。
重さを感じない軽やかな足裁き。
ひゅ~っんん。ふうわり。ふうわっ。
舞い落ちて舞い上がる巫女装束が 古の女神の羽衣を 彷彿させる。
シュュンーッ、シュッ。
空切る白銀の刃は 己の瞳に残像を残し、舞う度ごとに 静寂だけが積もり行く。
観衆は息することも忘れ、ただ ただ 魅入るばかり。
ただひとり、
彼だけは己の心の蔵の奏でるときめきに 我を見失いかけていた。
ーああ、ようやく見つけた!!
我が、舞姫。
鬱ふるえる喜びを 氷の仮面の下に封印し、ただじっと見つめ続ける。
舞姫が姿を消した後も、続く静寂のなか 誰も微動だに出来なかった。
ただひとり、彼をのぞいては。
むかうは、舞手の巫女たちの控え室。
仕切りの布越しに聞こえた会話。
「どうしましょう?このあと 宴にお呼ばれしてるのに・・・」
「その足では、歩くのもやっとでしょう?」
「私はご遠慮いたしますわ。お姉さまがたは どうぞお出かけになられてくださいませ」
「何いってるの!あなたが欠席なんてそれじゃあ」
「よろしければ、わたくしが会場までお連れ申し上げましょう」
掛布の向こう側が騒然となり、なにやら一気に慌ただしさがました様が伝わってきた。
「失礼」
無礼だとは思ったが、はやる心を押さえきれずに掛布をめくって 中にはいる。
ーいた!
ずっとずーっと探し続けた乙女が、初めて会うような顔をして 自分を見つめていた。




