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UnUnite  作者: 賀田 希道
Player/Prayer RuNs
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10月18日放課後

 石川湯人(ゆひと)は県立夏ヶ原高校の一年生だ。学力、やや高め。一学期の期末学年ランキング25位。体力ほぼなし、唯一保険体育だけが評価点3だった。総合成績は主要五教科が国語、数学、数学、英語、社会、理科の順で5,4,4,3,4,とやや理系向きだ。交友関係は完全に希薄。それどころか、学内でも有数のぼっち、と呼ぶべき存在だ。


 部活にも所属していないし、これと言って何か得意な趣味があるわけでもない。悪く言えば、ただ親の言うことだけを聞いて育った、成績だけの人間、だ。

 ただ彼に至っては別に親に強要された、というわけでもないのだ。


 彼の家族構成は両親含め、兄一人の四人家族。彼の兄は常に自宅警備をしているし、そのことを両親が咎めることはない。文句を言わないのは単純にこの兄がちゃんと自分で金を稼いでいるからだ。だから百パーセントニート、と呼ぶことはできないが、似たり寄ったりだ。

 そんな兄になりたくない、という欲求からか、湯人はある程度の成績を上げている。


 容姿それなり、体型脆弱。

 自分がそこまで優れている人間ではない、と思っているからこそ、才能があるのにただずっと自宅警備をしている兄のことが嫌いなのだ。


 昔は自分の兄を尊敬していなくもなかったが、今となってはそんな気持ちはどこへやら。才能を無駄遣いしている兄と両親から時々比べられて嫌気がさす毎日だ。

 そんな鬱憤を背負った生活をしていた時のことだ。彼の人生は若干の変化が生じた。



 その日、湯人は彼の兄に呼び出されていた。本当なら口も聞きたくなかったが、どうしても、と再三のメールがスマートフォンに届いていい加減にうざかったので、文句の一つでも言ってやろう、と押しかけたわけだ。


 二階建ての一軒家、その二階の一室が兄の部屋だ。ちなみにその向かいに自分の部屋がある。ドアを叩くと、中から色々とかき分けるようなものが崩れる音がして、四十秒くらい経った時に、兄が扉を開けてその若干不健康そうな顔を出した。


 顎髭は手入れをしていないのか、ボーボーに生え、髪の毛も同様に伸び放題。背筋は昔体育会系の部活に入っていたせいか、長い引きこもり生活にも関わらず竹の様にまっすぐだ。肉付きもいいし、今から社会復帰します、と言っても遜色はない気がする。そういうところが、一番腹立たしくて、今すぐにでもこの場から立ち去ってしまいたい、と湯人は思っていた。


 「よぉ、湯人。よく来たな。まぁ、入れや」

 その兄、石川(おさむ)はそんな湯人の心境などまるで考えず、湯人を自分の散らかった部屋の中へと招き入れた。


 その部屋はベッドとデスクと棚くらいしか家具が置かれていなくて、床には書きなぐった跡が見られる何かの計算書だったりが散らばっていた。それに、よほど栄養バランスが悪い生活をしているのか、カップラーメンのゴミが二、三袋のビニール袋に入っている。


 部屋の匂いは一面ラーメン臭く、ラーメン屋にしばらく入れなくなるくらいの臭さだ。換気もあまりしていないみたいで、眉を寄せたくなる。

 そんな散らかった場所に一つ、通販ショップのダンボール箱が無造作に置かれていた。その段ボール箱はちょうど教科書くらいの大きさで、湯人が見たことのないロゴが入っている。アルファベットのUが二つ、片方は逆さになってもう片方のUの曲がっている部分にくっついている。


 修はその段ボール箱を手に取ると、湯人に投げてよこした。

 「それ、やるよ」

 簡素すぎる言葉。兄から投げかけられた言葉の意味が湯人には瞬時には理解できなかった。ただよくわからない段ボール箱を渡された、ぐらいの認識しかない。


 「え、これ何?」

 とっさに湯人は聞き返す。箱の中身も確かめず、彼は兄に聞き返していた。

 あまり重さは感じないから、分厚い本、ということはなさそうだった。でも、自分が薄い本をもらう様なことはないだろうし、第一自分の兄が本を送るわけがない、と勝手に心の中で結論づけていた。


 「まぁ、開いてみろって」

 言われるがまま、湯人はダンボール箱を開く。そして現れたのは、小さな紙の束が入ったプラスチックケースだった。その紙束の表面にはダンボール箱に刻まれていたものと同じロゴが刻まれている。ただし、紙束の方は横文字の英語で、『UnUnite』と書かれている。随分と嫌味なネーミングだ。


 「それ、最近俺がネット経由で買ったカードゲームなんだけどさ、俺はほら、あんま外出しないだろ?だからお前にやるよ。ほら、こういうのって高校生の間で流行ってそうじゃん」

 そう言えば、こんなカードゲームが流行っている、と聞いたことがあるな、と湯人は思った。確か、クラスメートがレアなカードを当てた、とか言っていた。


 「俺が言えた義理じゃないけど、お前、友達いないんだろ?」

 誰のせいだ、と心の中で感じた。自分は兄と比べられたくないから勉学に勤しんだのに、誰がそんなことを言えるのか、という葛藤が湯人の心を支配していた。


 「いらないよ……」

 「え?でも……」

 「だから、俺に構うなよ!」

 そう言うが早いか、湯人はダンボール箱を修に押し付け、その場から逃げ出した。


 短絡的すぎる、と第三者が見たら思うだろうが、実際問題彼にとっては全然短絡的ではない、むしろ自然な反応なのだ。

 誰だって、毛嫌いしている、あるいは、嫌っている人から気遣われる様なことを言われたらちょっとは眉をひそめるし、その人物が四六時中一緒にいるのなら、どうなるかは想像に難くない。

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