10月25日トニー&トニー②
「あんた話したわけ?」
「聞かれたらそりゃ話すしかないでしょう?一応、先輩だし。向こうさんの方が俺よりも強いだろうし」
もうちょっと警戒しろ、という目でかなえは湯人を睨むが、湯人にしてもこれは不本意だ。何よりすでに彼女のゲートユニットが自分のゲートユニットについて少し話していたようだし、隠し事をしてもロクな事にならない、と湯人の対して役に立たない勘が告げていた。
「ちなみにその見返り、として釣り合うかわからないけど一応私のゲートユニットも見せてあげる。――これが私のゲートユニット、龍皇術師ドォル・リシュナ」
湯人とかなえが反目し合う中、我関せずとばかりに彩音はポケットからカードプロテクターを取り出す。二人の視線はすぐさま、そのカードへと集まった。当然だ。なぜなら一度戦ったかなえにしても彩音のゲートユニットを見るのは初めてだからだ。
そのカードは金色に縁取りされており、見るからに豪奢なイラストが描かれている。描かれているのは七対の紅色の瞳のドラゴン。まるでうずまきを思わせるその見た目はどこかおぞましさを感じさせる奇怪なドラゴンだ。
体中がところどころねじれ、さらにそれは不定形な黒い霧を羽状にして展開していた。透けた腹のの中には無数の暴風が吹き荒れ、触れている大地が粉々に砕ける描写がされている。キリキリと武け狂う嵐の牙を持ち、醜悪な笑みを浮かべるその姿はまさしく怪物だ。
所属軍団は『夢幻魔術学院』、種族はエンシェントドラゴン。惑星アクセスにおいてドラゴンという種族は最高峰の存在であり、ただひとつ存在するだけで天変地異を起こし、肉体を保たない精神生命体のようなものだ。
なかでもエンシェントドラゴンは最上位一歩手前の存在だ。最上位の階級であるロストに至るまであと数千年というところまできているほぼ最強に近いドラゴンだ。当然、その能力は他の種族の同レベルのユニットとは比べるまでもない。
なによりドォル・リシュナのレベルは5。シルバーユニットの中での最上位カードであり、多くあるゲートユニットの中でも稀なカードだ。未知の軍団である湯人の『八咫烏』でさえレベル4のヤギョウガラスだ。湯人やかなえは息を呑み、得意げに彩音はほどよく隆起している胸を張った。
「レベル5のゲートユニット?なにそれ。しかも強そう。やっぱあんたおかしいんじゃない?」
かなえの疑問は当然のものだ。普通に考えて彩音の持っているカードはおかしい。ドォル・リシュナ以外は市販のものとはいえ、グラガナッツォなどは市販価格にして万になる限定カードだ。それ以外にも彼女のデッキに入っているカードの多くは大会などでも普通に使われているカードだ。
「ふっふっふ。これがおねぇさんの力だよ。なにより私はお金持ちだからね。グラガナッツォは元から持っていたけど、それ以外はざっと買ったのだよ!」
ふはははは、と声高らかに笑う彩音は初めて自身の心からの感情を吐露していた。そんな彩音を見て、一瞬ではあったが湯人は好感を持てた。だがそれはあくまで一瞬だ。すぐに彩音の危険性を湯人は考えた。
「で?ほら、湯人君も出し給えよ。キミのゲートユニットをさ」
「え?ああ、はい」
しかしその思考は彩音の声で中断された。彼女に急かされ、湯人はヤギョウガラスの入ったカードプロテクターを取り出した。
『お初にお目にかかる我はこの男のゲートユニット、ヤギョウガラスだ。そちらは……なるほど。久しいなドォル・リシュナ。かれこれ千年ぶりか?』
『千年程度、この僕には大した時間ではないさ。不思議なのはなぜ貴様がそのわずか千年の間に復活を果たしているか、だ。どういうわけだ?』
対峙するなり二体のゲートユニットは剣呑な雰囲気を醸し出し始めた。特にドォル・リシュナは敵意にも似た感情をその心の中から溢れさせていた。当然、三人の脳には彼らの会話の声が流れ込んでくるし、彩音にいたってはドォル・リシュナの怒りの感情が流れ込んできていた。
「え、なに?どういうこと?ねぇ、ミリぽんどういうこと?」
わけがわからない、とかなえはアミリュナに助けを求めようとするがその彼女を彩音は制した。
「ちょっと待って。今、ここでカードに話しけてたら怪しまれるよ。キミはそんなことも理解できないわけ?」
「じゃぁどうすんのさ?あたし、人の表情なんて読めないんだけど」
ムッとして聞き返すかなえに彩音は微笑を浮かべて答える。
「こういうふうにする。ドォル、アレやって」
『いいよ。小さな楽園のお茶会』




