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UnUnite  作者: 賀田 希道
Player/Prayer RuNs
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10月25日トニー&トニー

 喫茶店トニー&トニーの中はこれでもか、という冷たい空気が蝕んでいた。例えるなら二股をしていた男の彼女二人が偶然、そうあくまで偶然出会ってしまい、そこから話が進む中で彼氏の話になり彼氏が呼び出されたとき、のような感じだ。

 空気がギスギスするのは当然として、なにより二人の女性の間で存在しないはずの火花が散らされた。しかしながら二人のうち一人が相手に向けるのはもはや百年来の仇敵と退治したかのような苛烈な視線だった。今ここにナイフなどがあればおそらく彼女は目の前の女性を刺していたことだろう。


 それくらいに久城彩音のことをかなえは恨んでいた。UnUniteという文字通りに人生をかけたゲームにおいて自分に敗北を味あわせた、というのもあるがそれ以前に彩音の性格が気に入らなかった。彼女とバトルしているとき、まるでなにもかも知っています、とばかりに自分の行動を穢されているようでどうしてものめり込むことができない。挙げ句の果て、チート級のカードの能力によって敗北を喫した。

 圧倒的なまでに実力が違う。それだけの実力を持っていてバトルを楽しまない。バトルの先にあるものにしか興味がない。そんな彼女の目が史上最悪なまでにかなえは嫌いだった。


 「ねぇ、えっと……あーそういやまだ名前聞いてなかったっけ?いや、聞いてたよね湯人くん。どーいうことこれ?あたし確かに言いましたとも、いいよーと。でもね?なぁんでこの女が、久城彩音がいるわけですか?はぁ、ひょっとして友達になれっかなー、と思ったあたしがおばかちゃんでしたーというわけ?」

 言葉もない、と湯人は視線を反らした。そういえば、名前ちゃんと覚えてよ~、と思う間もなくかなえは畳み掛けてきた。

 「しーかーもー?あんた友達になったとか言っていたのよ、この女、自己紹介のときにさ。ねぇ、それどういうこと?これっていわゆるアレ?二枚舌外交ってやつ?イギリスのフサイン=マクマホン協定とかサイクス・ピコ協定とかバルフォア宣言よかマシだけどさ。だってあんたはおそまつだしね。

 弁明とかがあるんだったら聞くけどまー無理だよね?どこぞの紅茶好きみたいに代替案を提示できるわけじゃないんだしねー。なきゃ、バトルであたしがこのくっだらない追求のために消費した時間を補填してもらおーかな」


 弁明の余地などない。ここで確認をとらなかっったかなえが悪いんだろ、とか言えば間違いなく問答無用でバトルをしろ、と言われる恐れがあった。バトルが始まれば基本的には勝つか負けるまで終わらない。ワンチャン、ミサさんが止めてくれるかも、と湯人は思案したが、今の空気を考えるとそれは絶望的に思えた。

 これが普通のバトルだったらな、と湯人は思わずにはいられなかったが現状かなえが普通のバトルを申し込んでくる可能性はゼロだ。


 「いやー湯人君かわいそーだなー。あ、なんならあたしが代役として戦ってあげようか、湯人君。別に一回くらいなら負けてもいいよ?あたしはまだ一度も負けてないからまだまだ余裕があるしね。そう、anlike you、かなえちゃん?」

 薄い微笑を浮かべる彩音にかなえは明らかな怒りを覚えた。元から怒りはリミッターを超えていたが、ここにきて血流が急激にムチを打ち始めた。おそらく怒りのまま絞殺してもおかしくないだろう。


 「久城さん、それは……遠慮をしておきますよ。名前を知らない間柄の友達とはいえ、さすがに友人同士が喧嘩をするというのは俺は嫌いです。……あー、つまりです。俺がやりますよ」

 しかし、ここでようやく湯人が口を開き、彩音を制したことでその事態は免れた。幼少期、兄の代用品(オルタナティブ)となることを選んでしまった湯人にとって人の感情がどう動くのか予想するのは容易なことだった。ただ、あくまで言動Aを言ったあとの言動Bをどうすればいいかわかるだけでどうすれば相手を怒らせないか知っているわけではない。


 「ふーん、あんたがかばうんだ。やっぱ美人の味方をすんのかねー、男っていうのは」

 それは偏見だ、と湯人は言おうとしたがその言葉を飲み込んだ。今、それを言ったところで恐らく信じてもらえないだろう。客観的視点に立てば彩音とかなえを比べればどう見ても彩音の方が美人だ。だからここで湯人がそんなことないよ、と言っても説得力がないのだ。

 「さぁ、どーだろうねぇ?負けメス犬とー、負け知らずの女王さーまー。どっちの味方をして得をするのかをちゃちゃっと計算したんかもねー?」

 「へー面白いこと言うじゃん。そんなに死に急ぐわけ?あんたはゲームじゃ無類の強さを誇ってるかもしれないけど、リアルであたしと殺し合う気?今なら、フォークで喉を貫く自信があるんだけど」


 ぶっそうなことを言うかなえに対し、あくまでも彩音は微笑を崩すことはない。例え自分が殺されてもそれが終わりではない、と考える目をしてた。その様子を見て湯人は改めて彩音の思考と精神構造がまともではないことを理解した。

 「はいはーい。キャットファイトそっこまっでよー」

 そのときだった。唐突な天上からの声に三人の視線が宙へ浮いた。そしてそこにはティーカップを3つ、トレイに乗っけたミサさんが立っていた。


 「まったく、あんたら人生の先輩から一つ言わせてもらうけどねー、もーちょい声のボリューム考えて喋んなさい。あたしがのんきに新聞よめないでしょーが、あと雑誌。いくら店ん中が閑古鳥泣いているからって、好き勝手あれちゃたまったもんじゃないっつーの。客足が遠のいちゃう」

 見事なまでのエゴイズムだが、筋は通っていた。客商売をする職種である以上、店の中で口論されては困るのだ。


 「それとかなえー?あんたもうちっと言葉遣いを考えなさい。お客さんの前でそんな言葉使ってみなさい。あんたの借金倍に増やすわよ?」

 「はぁ?ちょっとミサさんそれは横暴でしょうが!」

 抗議をするかなえ。それをミサは軽くあしらって嗤う。そこには汚い年長者の余裕というものがあった。


 「それはそうと……湯人君のゲートユニット。一体どういうカードなの?私のゲートカードが言っていたけど、すっごく珍しいカードなんだって?」

 ミサさんが奥に引っ込むと、急に彩音が会話の口火を切った。その言葉に残り二人の表情がやや歪んだ。

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