表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
UnUnite  作者: 賀田 希道
Player/Prayer RuNs
16/39

10月20日放課後②

 帰宅の道、その途中の路地で湯人はヤギョウガラスのカードを取り出して冷たい目でそのイラストを見つめた。カード自身が困った顔や焦りを見せることはないが、心中で抱えている焦燥は相棒である湯人にはひたひたと感じられる。ヤギョウガラスがなんであんなことを脳裏で呟いたのか、これからの信頼に関わってくることなのでそれが知りたかった。


 「どうしてあんなことを言ったんだ?」

 端的に、ただの欠片の感情も込めずに湯人はヤギョウガラスに聞いた。怖いとは思わない。むしろ、ただの小童が粋がった物の言い方を、と悪たれる。しかし、頭が上がらないのは不快に思った湯人が望みとかどうでも良くなってカードを破ってしまうかもしれなかったからだ。


 カードが破れればそのカードのユニットは彼らの母星であるアクセスに強制帰還してしまう。相棒であるユニットがアクセスに戻ってしまえば当然プレイヤーもバトルへの参加権を失ってしまう。望みが叶うこともない。だけど、時として人は理性ではなく、感性で行動する。むしろ、感性で行動する人間の方が世の中には多い。


 『語る意味が、あるのか?』

 「いや?発言一つ一つに一々文句言ってちゃ時間の無駄だからな。発言を制限するのはどこぞの北のバーサーカーの国だけで十分さ。あくまで俺の興味として聞いているだけだよ。答えてくれるか?」

 『……断る。我の心の中での出来事は我個人の問題だ。汝が介入するべき問題ではない』


 ふーん、と湯人は疑うようにヤギョウガラスの言葉の裏を探る様に見つめる。

 ヤギョウガラスのことを湯人は信用していない。あくまで対等な首根っこの掴み合いをしているに過ぎない。


 『汝はただ我を使ってくれるだけでいい。バトルに勝利すれば自分の望みを叶えられる。……ゆえに!』

 「ゆえに?ゆえに我の言葉に疑うな?船に穴が空いているのを見過ごせ、と?」

 『それは極端な例だな。そもそも、我は翼を有しているので別に船に穴が開こうと……おいおいおいおい!何をしている?』


 下手な反論をされてイラっときた湯人はあえて感性に任せてヤギョウガラスのイラストをやぶこうとした。カードの向きを横にして、ゆっくりと力を入れていく。

 『う……失言したのは謝ろう。すまなかった。だが、昨日汝も言っただろう。信用ではなく……』

 「ああ、首根っこの掴み合いだ。こっちもすまなかったな。これから可能な限り干渉しn……」


 「あの!すいません!」

 唐突に呼び止めた言葉が湯人のセリフを遮った。声がしたのは湯人から見て左耳の方角、瞳をずらせば誰が話しかけてきたのかはわかる。できるだけ警戒している、と思わせないように表情を取り繕ってから湯人は声の主に振り返った。


 そこにいたのは湯人や柊真が通っている夏ヶ原の制服ではなく、近くにある、私立戸塚平学園の制服を着た少年だった。年齢は湯人よりも一つ下くらい。目つきが悪い分、湯人のほうが年を食っているように見えた。顔の作りは童顔で、サラサラとした柔らかそうな黒髪のショートヘアーの少年。見つからに育ちが良さそうなその少年に湯人は片目を細めた。


 それは少年の手に持っているカード。裏表紙にUnUniteと書かれたカードが少年の手元にはあった。そこから導き出される結論は一つしか考えられない。

 見ず知らずの人間に話しかけてくることといい、つまりこの少年も、


 「プレイヤー、か」

 「そうですよ?」

 満面の笑みで少年は笑う。純情無垢、穢なんて感じさせない完全な笑みだ。童顔であることも相まって、余計にかわいい。


 「俺に何の用?」

 「やだなー、お兄さん。僕たちはプレイヤーです。そしたらやることは一つ、ですよね?」

 そう言って少年は手に持っていたカードを反転させる。


 書かれていたのはレベル3のユニット。

 ボタンの目玉に半笑いの表情、アメリカなどでよく見るタイプの人形だ。毛糸で作られた髪の毛をだらしなく流し、比例してか来ている服もどこかツギハギだ。元は赤布だったのであろうドレスは袖口は破れ、ベージュ色の布地で補っている。胸元は白い布、スカートの裾は大小様々な色の布地、時には破れたままの場合もある。


 子供から捨てられた人形、大事に扱われていた人形の末路とはこの様なものなのかもしれない。その証拠に布作られた足は見ただけで自立できないほど潰れている。

 呪いの人形、というものがあるならこういうどこか不気味な人形を言うのかもしれない。目が何も反射しない分余計に怖い。


 名前は、サクラ人形 ジュリエット。所属軍団は『ダンシングテディース』。種族はリビングドール。軍団名、種族共にどこか不吉さを感じるユニットだ。

 そして陰り一つ見せない少年もまた、不吉な存在だと湯人の勘が告げていた。


 「俺とバトルを?」

 「ええ。お願いできますか?」

 「……わかった」


 幸い、この路地には人通りがないから昨日のように途中で中断されることはない。


 「「ローディング」!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ