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UnUnite  作者: 賀田 希道
Player/Prayer RuNs
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10月20日放課後

 放課後、例によって柊真とつるんでいる湯人は早速、自分のデッキを柊真に見せてみた。無防備で、対策とかがされそうだったが、別に構わない、と湯人は考えていた。ちなみにシルバーユニットは抜いてある。

 初心者らしい、と言えば初心者らしいが、さらに湯人にはもう一つ、考えがあった。柊真と戦わなければ問題はない、という打算があった。


 それに、デッキを見せたからと言って、別にそう早急に対策できるものではない。昨日、湯人はネットで柊真が使っている『星海騎士団』の特性について調べたが、防御に適した軍団、という認識があるから、あまり退却には特化していないと踏んでいた。調べてみたら一応破壊が可能なユニットはあったが、そのユニットはレベル3、あるいは4。序盤に登場できなければ意味はなかった。


 それに、そんな重いユニットを柊真はデッキにいないだろう。彼のデッキは『星海騎士団』らしく防御に充填を置いたデッキ構成。昨日の金剛石の騎士を見てもそれは明らかだった。

 デッキをひとしきり見て、柊真は感嘆したように湯人に視線を向けた。

 「まさか、初心者がかなり練ったデッキを作ったな……。『流れ人』の中でも低コストのユニットがうまく使われている」


 「いや、ほんとだね。『流れ人』なんて使う人間も珍しいのにねぇ」

 「能力的に代用が効くのがほとんどの軍団にいるからな。だけど、湯人の『八咫烏』は全く新しい軍団だ。既存のカードでの改造はほぼ不可能だ。ま、だからの『流れ人』なんだろうが……」


 デッキをケースに戻して、湯人に返すと柊真は神妙な顔つきになって眼前の下級生の顔を見つめた。遅くまでデッキの構成を考えていたのか、目の下に隈ができている。よほどゲームに熱中したらしい、と柊真は感じた。


 彼らが今いるのは校内の屋上。放課後であるから園芸部の部員以外は基本的には入ってこない。夕焼けも相まって、男子生徒三人の屋上はやや味になる絵と言える。下手に男女一組よりもよほど渋く、また男同士の友情を語る上で必要不可欠な情景だった。


 「でも、あのカードはいらないんじゃないか?『水耕男 ワーロ』……だったか?二枚積みらしいけど、あのカードはレベル3。ゲームでも状況が動き出す時のレベルだ。お世辞にもレベル3の能力とは言えないほどに弱いぞ?」

 柊真が抜き出して見せたのは小作人の姿をした老人のユニットだ。農耕用のつるはしを振り上げているイラストが書かれている。


 ・レベル3

 ・――登場時、このユニットを退却させてもよい。その場合、山札を二枚めくり、レベル3以下のカードを一枚まで手札に加える。

 ・水耕男 ワーロ 『流れ人』、ヒューマン


 確かにお世辞にも強力な能力とは言えなかった。カードのサーチ能力があるとはいえ、たったの二枚。しかもレベル3以下。昨日のバトルで湯人が使った異ヅンの方がまだ能力的には使えた。

 しかし、湯人は首を横に振る。


 「そのユニットは捨て用のユニットですよ、柊真さん。手札にあった時、迷わずに捨てられるためのカード。このゲーム、UnUniteは手札がより重要になるゲーム。そしてまだ俺が使ったことのないコイン。その二つが各軍団の能力開放に必要不可欠。でも、もし手札に捨てられないカードが多ければ?キーユニットで固められていたらどうしましょう?二つは選べても三つ、四つは選べない。そんなときに必要なのが、失っても損失にならないカードです。


 例えば、今柊真さんが指摘して下さったワーロなんかがそのいい例です。数多のトレーディングカードゲームにおいて、真っ先に捨てられる、その時一番価値のないカードをあえて用意しておくのは重要では?」

 その考えには柊真だって同意する。悩む場面を作らないのは、ゲームを円滑にすすめることができる。だけどそれなら、


 「それなら、使えはするが状況に応じて使い分けられるカードの方がよくね?例えばさ……」

 柊真は上級者として、幾つかアドヴァイスを与えていく。それを事欠かさずメモするのは彼の生真面目さを表していた。ただそれが彼のドス黒い望みを叶えるためだと知っているヤギョウガラスからすれば、実に小賢しい小童め、と悪態をつくことになる。


 ヤギョウガラスは別に湯人のことを嫌っているわけではない。望みを否定する気も毛頭ない。むしろ好意を抱いているほどだ。彼のドス黒い望みも知っているが、それを否定する気もない。

 彼が気に入らないのは、湯人が自分を信用してくれていないことだ。相棒であると言うのに、なぜ自分を信用しないで、ほぼ他人と言ってもいい柊真からアドヴァイスを求めるのか、まるで理解ができなかった。


 人間の感情で言うのなら、嫉妬と呼ばれるものなのかもしれない。望みも、心境も、何も知らない人間がなぜ自分の主に求められるのか?

 人間だからか?

 同種だからか?


 『下らない』


 意図せず、湯人の脳裏の中でヤギョウガラスは呟いた。その言葉が湯人に届いたことは言うまでもない。だが、湯人はその悪態を聞き流し、適当なところで柊真との話を切り上げてその場を早々に去った。隠しているようで実際、その顔に貼り付けられた表情は、不快感を少し醸し出していた。



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