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UnUnite  作者: 賀田 希道
Player/Prayer RuNs
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10月19日深夜

 深夜、自宅の自室で湯人は自己学習をしていた。だけど、その中身は勉強、ではなかった。むしろ端から見ればただのお遊びだ。

 彼の目の前に広げられたのはいくつかのバックの破きカスが散乱している。それと同じく、ボックス買いした証拠の空のボックスも四、五個転がっている。


 そして彼の机の上には何百、何千ものカードが山を築いていた。その中から湯人が選んでいるのはUnUnite の中でもどの軍団のデッキにも入れられる万能軍団、『流れ人』のカードだ。

 『流れ人』は能力値こそ基本的ではあるが、どのデッキにでも入れられる、というメリットがある。そして、今湯人が探しているのは特にドロー能力に特化したユニットだ。


 「こいつは、使えそうだな」

 拾い上げたカードを見て、湯人はつぶやく。そして同じ名前のユニットをあと三枚、つまり四枚積みにするためにごそごそと探す。レベルも2なので、容易に招集できる。それに、序盤でのドロー能力は非常に魅力的だ。序盤で手札を稼いでおいて、中盤から一気に畳み掛ける。


 よくあるデッキの回し方だが、型にはまった基本戦術ほどに強いものはない。彼自身、型通りの動きをすることは奇策よりもずっと有効的だ、と思っていた。

 とはいえ、やはりまだカードのスペックに頼りすぎている面があるのは否定できない。彼のカードの能力は主に妨害系だ。相手の手順を遅らせて、その間に最大火力を叩き込む、という実に陰湿な能力。


 しかも湯人の場合、まだその能力を十全には扱いきれていない。つまり、いつずっこけるともわからないのが彼の今の状態だ。その能力に溺れることなく、有用に使うには能力の全体像を掴む必要性がある。今日の最初のバトルで彼が経験したのは、神隠しの能力は決してデッキにカードがゲーム中に戻らない、という側面において十分に強力だ、ということだ。


 だが、その数は少なく、五十枚もあるブラックデッキの中から狙い通りに相手のキーユニットが除外できるかは正直わからない。むしろ、マガツガラスへと進化した時点ですでに相手のレベルは2か3なので、レベル1やレベル2がいくら除外されても痛くはないはずだ。


 「だけど、この神隠し、別にシルバーユニット特有の能力ってわけでもないんだよな」

 条件は厳しいが、レベル2のユニットであっても手札を必要な数捨てれば、レベル3のマガツガラスの能力に匹敵するだけの戦果はあげられる。問題はその条件だ。


 普通に考えてレベル2の時点で手札七枚――これが安全圏――以上持っていることは難しい。まして先行になればアカメメイゲツのドロー能力は意味がない。

 そこで登場するのが『流れ人』の軍団に属しているユニットだ。序盤にほぼ無条件でドローができるユニットを二体、さらに三体目、と、湯人は自分の『八咫烏』デッキで汎用性が薄いカードを捨てていく。


 別に使えないカードというわけではない。むしろ、一体一体の効果は『流れ人』のユニット以上だ。だが、如何せん汎用性がない。特にレベル1の『八咫烏』のユニットはブラックユニットを補助するユニット、それもその条件自体がかなり厳しい。自分のシルバーユニットのアタックがヒットした時、などあまりにギャンブルにすぎる能力だ。


 だからいらない。意味のないカードに対して払う敬意はない。そういったカードのを十二枚分選んで、『流れ人』のカードと交換した。


 『不運な奴らよ。これより戦に参戦できぬのだからな』

 嘲笑声が湯人の脳裏でささやかれる。すぐに湯人はその声の主に返す。

 「あんただって例外じゃないさ。俺が使えないと判断したら……」

 『できるか?汝に。我は汝と望みを共有せし存在、汝が率いる『八咫烏』の中でも最鋭の存在ぞ。その我を失うことは汝の勝利は皆無と言える』


 「冗談だよ、俺はあんたの能力を十分に理解しているあんたの進化前の姿のマガツガラスですらあれだけの力を発揮できたんだ。なら、その進化後の姿であるあんたの力は俺の想像を絶するんだろ?」

 『我を試すと?人如きが舐めた口を聞くものだ。まぁいい。我を使うは汝の権利だ。存分に使ってみろ。どのみち我は汝を、汝は我を見捨てることができないのだからな』


 ヤギョウガラスのその含みある言い草に湯人は少しばかり眉をひそめる。ヤギョウガラスの言い草ではまるで協力関係とかではなく、呪いの様に聞こえる。一蓮托生の呪いだ。試しに自分からヤギョウガラスを捨ててみるか、と一考するが、その考えはすぐに取り下げた。

 リスクが高すぎるな。ここでもし本当に主成ったら俺の願いが叶えられない。


 「ヤギョウガラス、一つ聞いてみたい」

 「申してみよ。我の答えられる範囲でなら我は汝の如何なる回答にも答えよう」

 「俺は望みを叶える、それはいい。だが、それがお前らユニットにとって何のメリットになるのさ?」


 これは湯人が望みを叶えてもらえる、と聞いたときから考えていた問題だ。古今東西、自分の願いを叶えることの対価がパンくず一つだった試しはない。それはメシアでさえ例外ではない。

 イエス・キリストはその奇跡と引き換えに、民草から石を投げられ処刑された。ジークフリートは不死の(からだ)を得て親友に殺された。釈迦は、アラジンは、アリエルは、皆望むものを得たが、引き換えに多くを失った。


 ゆえに、人間である自分が望みを叶えたとして、ヤギョウガラスにも何らかの見返りがなくてはいけないのだ。そうでなければ叶えられた望みは酷く薄っぺらいものの様に感じられる。例えば、賛辞を送られても、理由がわからなければむしろ不快に感じる、と言った風にだ。


 「答えろよ、ヤギョウガラス」

 沈黙が流れ、やがてヤギョウガラスは低い声で言葉を紡いだ。

 『……無理だ。それは我には許されていない』

 「はぁ?なんだ、そりゃ。契約内容もわからない書類には判子は押せないだろ」


 『これに関しては我に非がある。だが、一つ分かって欲しい。決して汝を傷つける内容ではない』

 「それは俺が決めることだ。願いは叶えられる、ただし……なんてどう考えてもおちょくっているとしか考えられないからな」


 その言葉にヤギョウガラスは低い声で唸る。カードの身では感情表現はできないが、その唸り声から不機嫌になっていることは伺えた。だが、湯人にとってはどうでもいい。


 「俺を裏切ったら、カードになってでもお前を殺す」

 『ああ、その時は汝の剣を甘んじて受けることを約束しよう。だが、逆の場合は……』

 「俺を殺しても構わない。な?これで対等だろ?」


 頬を歪ませ、口元をめいいっぱい釣り上げて、湯人は笑顔を浮かべた。だが、それは決して喜びから溢れた笑みではなく、むしろ……



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