10月19日――初陣②
引いたのはレベル3のカード。見た目は位の高い坊さんに似ている。そのカードを手札に加えて、湯人はシールゾーンからレベル2のユニットを選択して、コストを払ってアカメの上に乗せた。
「進化、『黒凪 アカメメイゲツ』」
・レベル2
・コストアイコン2
・――このユニットのアタックがヒットした時、二枚ドローできる。
・黒凪 アカメメイゲツ 『八咫烏』、レイブン
眼光を見開き、まるで体が肥大化するかのように、鳥が絞め殺される時の様に、アカメの姿が変わっていく。丸まった体は巨大化してスリムに、縮こまった羽は体の倍の大きさへと広がった。足の鉤爪は鋼の色を見せ、より鋭い眼光で眼前の勇者を睨んだ。赤い瞳のその鴉は、恐らく、これは湯人の推測ではあるが,明らかに『悪』として存在するべき存在なのだ。
その悪意を感じたのか、クロードの剣を構える手に力がこもった。
「アカメの能力、進化時に二枚ドロー。さらに手札から黒祈祷師 異ヅンを招集」
若干、アカメの進化時の姿に驚きはしたが、間髪入れずに湯人も手札からブラックユニットをバトルゾーンに招集した。
・レベル2
・――このユニットが登場した時、あなたのシルバーユニットがレベル2以上なら、山札を三枚めくり、レベル2以下のユニットを一体、手札に加えても良い。その後、めくったカードを山札の下に置く。
・黒祈祷師 異ヅン 『八咫烏』、ヒューマン
招集されたのは黒い神主服を着た、壮年の男だ。昔の日本貴族の様に烏帽子をかぶっているのが特徴的だ。その烏帽子も黒のため、全身黒だ。祈祷師ということで大麻を右手に持っているが、普通の大麻と違って、先端の白紙が黒く塗られている。
まるで闇の術士のようだ、と柊真は思って、相手の出方を伺った。
「能力を発動します。黒祈祷師 異ヅンの能力、登場時自分のシルバーユニットがレベル2だった場合、山札を上から三枚めくって、レベル2のブラックユニットを一枚回収」
大麻をブンブン、異ヅンが振り回すとカードが山札から三枚、湯人にだけ見える様に展開される。その中から湯人は一枚選んで、残りを山札の下へ置いた。
「アタック、黒祈祷師 異ヅンでイノセント・ナイトに攻撃」
「ノーガードだ」
「ノーガード?」
「ん?ああ、言ってなかったな」
これはミスったな、とばかりに柊真は頭をかく。そして自分の手振を一枚、開帳して見せた。およそ、真剣勝負ならありえない自殺行為だが、ルール説明ならば特に問題ないだろう、と判断してのことだ。
「カード右上にレベルアイコンがあるだろ?基本的にブラックユニットでもシルバーユニットでも、この値よりも上のユニットには攻撃できないんだ。まぁ、それは今はどうでもいいんだ。ここで重要なのは、ユニットの攻撃はブロックできるってことだ。このアイコン、基本的にはこのアイコンの合計値が攻撃しているユニットのレベルアイコンを上回れば防御は可能だ。ちなみにブラックユニットがシルバーユニットを攻撃する際はこのレベルがシルバーユニットを上回っていないといけないんだよね。
防御の手段はシンプル、相手のレベルアイコンを上回る様に手札を捨てればいい。その際にガードしますってちゃんと宣言してくれよ?まぁ、でも。ガードってあんまり俺好きじゃないからなーっと、話が逸れたか。続きをどうぞ?」
異ヅンの大麻から黒いオーラが湧き出て、イノセント・ナイトの腹部を直撃する。直後、イノセント・ナイトは苦しみだし絶叫を上げ、倒れ伏した。
倒れたイノセント・ナイトを光子が包み、その姿を消した。カードはドロップゾーンへと置かれ、柊真は感慨もなく次の攻撃に備える。
「黒凪 アカメメイゲツでクロードにアタック」
「ノーガード」
勢い良く空中へと翔んだアカメメイゲツは直後、斜め下のクロードの腹部に向かって急速ダイブした。鋭く尖ったくちばしはクロードを吹き飛ばし、クロードは苦渋の表情を浮かべる。そしてその様子を見て、アカメメイゲツはけたたましく笑い声を上げた。
柊真のコインゾーンからコインが一つなくなり、セーブゾーンへと移動する。不思議そうにその光景を見つめる湯人に、柊真は懇切丁寧に説明する。
「今、俺のシルバーユニットがダメージを受けたことで、俺のコインは残り四枚になった。このコインが先に全部なくなった方の負けだ、オーケー?」
湯人はゆっくりと頷き、
「能力発動、アカメメイゲツの攻撃がヒットした時、二枚ドロー。ターンエンドです」
「お前のシルバーユニット中々に陰湿な野郎だなぁ、ま。気にしないけどさ。ドロー。進化、『勇敢なる勇者 クロード』」
ターンが回ってくると、すぐに柊真はコストとして二枚、レベル1とレベル2のカードを捨て、次のレベルへとクロードを進化させた。
・レベル3
・コストアイコン3
・――1)自分のユニットが退却した時、山札の上から二枚ドローができる。
――2)城化(1)自分の手札(3)を捨て、次の自分のターン初めまで、手札のユニット一枚を表向きにして公開し、そのユニットの防御時のレベル+3。
・勇敢なる勇者 クロード 『星海騎士団』、アークヒューマン
クロードの鎧の色が無機質な鉄の色から、輝かしい蒼色へと変化した。青銅ではなく、その輝きはアダマンタイトと呼ばれる金属の色だ。持っている剣も華美な装飾剣だ。解読不能な文字が振られ、刀身に掘られ、その文字一つ一つが翡翠色の輝きを発している。顔つきもレベル2の時と比べて大人びており、勇者として順当に成長していることが伺える。
髪の毛も最初の短髪から、湯人が見せてもらったレベル4時の長さに近くなっていた。見た目も、能力も、まさに勇者と呼ばれるにふさわしいものはずだ。
「さらに、こいつを出させてもらう!金剛石の騎士 ドレイク=ジャン!」
・レベル3
・――あなたのシルバーユニットが攻撃された時、手札(1)を捨ててもよい。その場合このユニットをガードユニットとして使用できる。
・金剛石の騎士 ドレイク=ジャン 『星海騎士団』、アークヒューマン
招集されたのはクロードと同じアダマンタイトの鎧を着込んだ無精髭の騎士だ。ただし、こちらはまるで亀の甲羅の様な分厚い鎧で、巨大なハルバードを持ってはいるが、どちらかと言えば防御に適した見た目をしている。事実、能力も攻撃よりかは防御に向いていた。
「さらに、湖のイタズラ妖精 メルンを招集」
・レベル2
・――登場時、あなたのシルバーユニットがレベル2以上だった場合、山札の上から三枚めくり、レベル2以下のユニットを一枚公開してから手札に加えても良い。残りのカードは山札の下に置く。
・湖のイタズラ妖精 メルン 『星海騎士団』、フェアリー
水の塊をそのまま持ってきた様な、妖精というよりもスライムに似た生物が招集される。それはやがて液状の人の形を取り、いたずらっ子の様な爽やかな笑みを浮かべた、気がした。
能力としては異ヅンと同じで、いわゆるサポート特化のユニットだった。
「メルンの能力で山札から三枚めくり、レベル2以下のユニットを一枚まで手札に加える」
柊真はそう言って今手札に加えたカードを公開する。そのカードはレベル2のユニットで、双刃の剣を二本持った少年騎士のイラストが描かれていた。
「おっし、柊真の場にユニットが揃ってきたな」
観戦していたすずきはガッツポーズを取る。彼はよく柊真のバトルを見て、ドレイク=ジャンが絶対の盾として君臨するのを見てきた。ドレイク=ジャンはバトルゾーンにいながら防御も可能なオールマイティーなユニットだ。こういったユニットをうまく使ってこそ、プレイヤーとしては優秀だと言えた。
「さらに!手札を三枚捨て、クロードの能力発動。ユニットを公開し、レベル+3。俺が指定するのは、こいつだ」
柊真は残った自分の二枚の手札から一枚選んで、公開してみせる。彼が選んだのはレベル3のユニット。防御のための盾を装備したドレイク=ジャン以上に防御に適したユニットに見える。
「さぁ、いかせてもらうぜ?クロード!さっき腹にきついのかませて来たあの鴉野郎に一発きついのかましてやれ!」
命令に応じて、クロードは神速のごとき速度で接近し、人の目では捉えられない速度の斬撃をアカメメイゲツに食らわせる。アカメメイゲツは苦悶の声を上げる。まるで勇者の化物討伐劇だ。
ダメージがアカメメイゲツへと入った。コインゾーンのコインが一枚、セーブゾーンに置かれた。
「まだまだ行くぞ。ドレイク=ジャンでアタック」
「ガードします」
貯めに溜まったカードのうち、レベル2のカードを二枚消費してドレイク=ジャンの攻撃は防がれた。
「ターンエンド。どうぞ」
「ドロー、起床。コストを払って、進化。『黒公卿 マガツガラス』!」




