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ダララの森と三猿

 気分一新。新章突入です。

 仕事をして、訓練をして、また仕事をして、訓練をする。

 そんな風に活動日と休養日を交互に設け、休養日のほとんどを戦闘技術向上のための訓練に当てる日々を繰り返していたある日のこと。

 俺、フィナンシェ、テッドの二人と一匹で結成された冒険者パーティは、冒険者ギルド三階にあるギルド長室まで来るよう呼び出しを受けた。


「――というわけだ。そこでお前らには、モラード国に行ってもらいたい」


 ギルド長室に入って早速告げられた本題は、モラード国に行ってほしいというお願いだった。


 モラード国は内界で七番目に力のある国家。

 作物に適した豊かな土壌を持ち、農業国家とも呼ばれているとか。

 穏やかな気候と穏やかな国民性を持つことでも知られているがその反面、暮らしやすい環境ゆえに魔物の数も多く、兵士の数も多いみたいだ。

 そして、そんな長閑なモラード国に最近、新たなダンジョンが出現したらしい。

 この世界では何もなかったところに突然ダンジョンが出現したり、古くからある森や洞窟がいつのまにかダンジョン化していたりということが極稀に起こるそうで、今回はもともとあった森が急にダンジョン化してしまったケースに該当するそうだ。


 モラード国で二番目に大きかったダララの森。

 その森は五十日ほど前から急に様子がおかしくなったらしく、異変を察知した近隣の町がその町の兵士を森に派遣した結果、ダンジョン化していたことが判明。モラード国は即座に国内の兵士をかき集め、その『ダララのダンジョン』の調査を行ったらしい。


 急務で大がかりな調査を行った理由はただ一つ。

 危険かもしれないから。


 ダンジョンでは魔物の子どもが生まれることはない。

 すべての魔物がいきなり成体の魔物として誕生する。

 そして、魔物の誕生するペースはダンジョンによって異なる。

 一日一体しか魔物の誕生しないダンジョンもあれば、一日に五十体の魔物を誕生させるダンジョンもある。


 また、誕生する魔物の種類もダンジョンによってある程度決まっている。

 洞窟型なら暗所や狭い場所でも活動できる魔物、森型なら植物系統や動物系統の魔物が誕生しやすい。

 ダンジョンごとに弱い魔物しか誕生しないダンジョン、強い魔物が誕生しやすいダンジョンという特色もあり、もしダララのダンジョンが強い魔物の誕生するダンジョンだった場合は厄介なことになってしまう。


 さらに、森型というのが最悪だった。

 洞窟型のダンジョンの場合はそのダンジョンの出入り口は大抵一つだけ。出入口が複数存在していたとしてもその数はそこまで多くなく、監視も容易。

 しかし、森型の場合はその森の外周すべてが出入り口となってしまう。

 そのため、ダンジョンの外に魔物が出てくる可能性も高くなり、監視も大変となる。

 森型のダンジョンが誕生した時点でそのダンジョンの外周を囲うように壁や砦を造る必要と義務が生じるのだが、調査結果次第ではその壁や砦の大きさや強度をかなり高めなくてはいけないため、早急な調査が行われることとなった。


 調査を行った結果、森の最奥部――つまり、森の中心地点までは簡単に辿り着くことができたらしいのだが。そこはクレイジーモンキー、サイコモンキー、クレバーモンキーという名の強力な魔物たちの住処となっていたらしい。


 モラード国は魔物が多く、兵士も多い。

 しかし高い兵力を持っているわけではないそうだ。

 兵士一人一人の強さも連携も目を見張るほどのものではなく、クレイジーモンキー、サイコモンキー、クレバーモンキーの強力な猿型魔物たちを殲滅できるだけの力はなかったらしい。

 調査が行われたのは三十日ほど前。

 そのときに兵士たちが確認した三猿の数は二十を超える。

 三猿が一日一体誕生するのだとしたら、今この時点で五十体を超える数になっている計算となる。


 面倒なことに、三猿は仲間が一体でも攻撃されるとすぐにそれを感知して集団で反撃してくるらしい。

 それが原因でモラード国は三猿に手を出すことができず、手を出せないあいだにさらに三猿が増殖していくという悪循環。

 増殖を続けた猿たちはいつか森の最奥部から抜け出し、森から出てきてしまうかもしれない。

 モラード国が調査のため派遣した兵士の数はモラード国内全兵士のうち三分の一。

 それだけの兵数を派遣したにもかかわらず手を出せなかった猿たちが数を増やし、さらにおそらく、群れたまま森から出てくる。

 確実に、国が滅ぶ。

 その被害はモラード国だけにはおさまらず、近隣国をも滅亡させてしまうかもしれない。


 せめてダンジョンを囲う壁や砦が完成すればモラード国だけでも三猿に対処することは可能らしいのだが、それには九十日ほどの期間を要するという。

 しかも、優秀な土魔法つかいや建築技術に長けた者たちを総動員してやっと九十日。

 これ以上は完成までの期間を短縮することはできないようだ。


 ということで、モラード国は各国およびこのカナタリ領に協力を要請してきたそうだ。

 その内容を要約すると、期間はできれば砦完成まで。それが無理なら今日から十五日後に行う予定の三猿討伐作戦にだけでも参加してほしいということらしい。

 三猿の数が一度でも数匹程度まで減れば、その後はモラード国だけでも壁や砦が完成するまで猿を抑え込むことができる。だからせめて十五日後の討伐作戦には参加してほしいということみたいだ。


 そして、この作戦に必要なのは数ではなく個の力。

 もちろん数も重要ではあるが、数だけでなんとかなるのであれば多くの兵数を抱えているモラード国だけでなんとかなる。わざわざこんな要請をする必要はない。

 つまり、求められているのは猿たちを圧倒できる力を持った者。

 この作戦にはお前たちのような強い力を持った者が必要なのだ!


 と、ギルド長からそう説明を受けたところで俺は頭を抱えたくなった。

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