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ついうっかり

 リカルドの街に接近する魔物。

 兵士部隊が止めきれなかったのか、それともヒュドラとは別の別動隊の魔物なのか。

 確認できたのは、二足歩行する豚型の魔物が三体。

 数時間前まで戦っていたオークに似ているが、俺たちが戦っていたオークたちよりも二回りくらい大きい。


「オークキングが三体だな」


 筋肉ダルマの言葉に俺とシフォン以外の全員が頷く。

 やはり、オークの仲間か。


「しかし、オークキングが三体など聞いたこともないぞ」

「まぁ確かに。騎士さんの言う通り、オークキングクラスの魔物が三体も同時に出現するなんて話は俺も聞いたことがねぇ。こりゃあ異常事態だな」

「何言ってんだ。この規模のスタンピードがすでに異常事態だろうが」

「そりゃあ、まあ。リーダーの言う通りだな」

「リカルドの街の結界ならオークキング三体の攻撃くらい簡単に耐えきるだろう。しかし、だからといって野放しにするわけにもいかん。今、あの街にオークキングを相手にできるような者はいるのか?」

「冒険者はほとんどやられちまったからな。このタイミングで魔灯を使ったってことは兵士部隊も崩壊しちまってる可能性が高い。多分だが、俺たち以外にあれを相手にできるような奴は残ってないんじゃねぇか」

「そうか。なら急いだほうがいいな。シフォン様、走るので抱えさせていただきます」


 テトラ、クライヴ、筋肉ダルマの三人が話をまとめ、オークキングを目指して走り始める。

 俺とフィナンシェも「お前等も早く来い!」という筋肉ダルマの声に急かされて走り始めたが、まさかあの筋肉ダルマがあそこまで冷静に状況を分析できるとは。

 いや、もともとあいつは頭は悪くないという評判だったか。

 ギルドでそんなことを聞いた覚えがある。

 筋肉ダルマがしっかりと頭をつかっているところを見たのは初めてだが、普段の乱暴な様子からは想像できない姿に少し呆気にとられてしまうな、これは。


「ところで、オークキングってのはどのくらいの強さなんだ?」


 俺はオークキングという魔物に詳しくない。

 オークキングの所に辿り着く前にしっかりと相手の強さを把握しておきたい。


「んーっとね。だいたい、さっき戦ったオーク二百体分くらいの強さかな。ヒュドラと比べると全然弱いよ!」

「そうか」


 フィナンシェがなんてことなさそうに言うから実は弱いのかと勘違いしそうになったが、オーク二百体分の強さか。

 それって相当強いよな?

 俺はオーク一体を倒すのにも苦労した。

 それが二百体。

 数が大きすぎて具体的にどのくらいの強さなのかはわからなかったが、さっきの筋肉ダルマたちの会話からも相当な強さであることが窺えた。

 俺とテッドが相手できるような魔物ではないな。


 ただ、さっきの口ぶりからして筋肉ダルマたちならオークキングを倒せるのだろう。

 街にはローザさんとジョルドもいるはずだ。

 揃う筋肉ダルマパーティにフィナンシェとテトラ。

 これだけの戦力があれば案外簡単に倒せてしまうのかもしれないな。


 というか、科学魔法の力を利用した高火力兵器とかは存在しないのだろうか。

 結界だったり、深く大きな堀を作ったりと、守りには力を入れているのに攻撃面では大したことないことに違和感がある。

 もともとはスライムへの防波堤としてつくられた街らしいし、防御面ばかりが優れているのはそのことが関係しているのだろうか。


「あれで最後だといいけど」


 フィナンシェがついとそんなことを言う。


「どういうことだ?」

「見える範囲にはオークキング以外の魔物はいないし、戦闘音も聞こえないでしょ? だから、あの三体がスタンピードを統率していた魔物だとは思うんだけど、オークキング三体じゃヒュドラを従わせることはできないと思って……」


 そう言って思案し始めるフィナンシェ。


 オークキングはヒュドラよりも弱い。

 そんなオークキングが三体集まってもヒュドラを従わせることはできない。

 それなら、オークキング以外にヒュドラを従わせられるような強さを持つ魔物がいるんじゃないかということだろうか。

 言いたいことはわからなくもないが……。


「その魔物は、もう兵士たちに倒されている可能性もあるんじゃないか?」


 リカルドの街にいた兵士の強さは知らないが、しっかりと訓練した兵士が三千人もいたのだからヒュドラよりも強い魔物を倒せたとしてもおかしくはないと思う。


「うーん、そうかもしれないけど……」

「あるいは、ヒュドラがスタンピードを統率していた魔物で、オークキングたちはヒュドラに統率されていた魔物の内の三体という可能性もあるんじゃないか?」

「それも考えたけどなんだかしっくりこないんだよね」


 うーん、うーんと唸るフィナンシェだが、俺に思いつくのは今挙げた二つくらいだ。これ以上は力になれそうもない。

 横で悩むフィナンシェと一緒に少し先を走る筋肉ダルマたち三人とテトラに抱えられたシフォンを追いかけること数分。

 はっきりと見えるようになった街の様子は随分と慌ただしかった。


 結界外には、結界に攻撃し続ける三体のオークキングとそのオークキングに攻撃をしている数十人の冒険者と兵士が見え、結界内では、多くの人々が結界付近で忙しなく動き続け、何かの準備を進めているように見える。


 今のところ結界が破られる様子はない。

 もしもオークキング以外にも魔物が残っているのなら、その魔物たちに対処する必要もあるだろうし、その余裕も十分ありそうだ。

 だが、街にいる者たちは全員がオークキングに集中していて、他の場所へ注意を向けている様子はない。


 様子を見る限りでは、あのオークキングたちがスタンピードの最後の生き残り。

 やはり、他にも敵がいるかもというフィナンシェの考えは杞憂なのだろう。


 杞憂と言えば、シフォンの護衛騎士がシフォンの敵なのではないかという考えも杞憂だったな。


 シフォンを守ろうとするテトラの様子を見ていれば、テトラがシフォンの敵でないことはわかる。

 他の護衛騎士五人もおそらくそうなのだろう。

 護衛騎士たちがシフォンを狙ったやつらの仲間かもしれないなどという考えはとうに捨てた。

 テトラたちはシフォンの味方だ。

 そして、そのテトラがシフォンを連れてオークキングに近づいているということは、オークキングはシフォンを脅かすような敵ではなく、テトラの相手でもないということだ。

 つまり、テトラや筋肉ダルマたちがいればオークキング三体なんて敵じゃない。


 その考えが、俺に安心と、油断を与えた。

 守るという覚悟を決めたため、もう大丈夫だろうとは思いつつも念のためにシフォンを追いかけていた俺は完全に油断しきっていた。

 数時間におよぶ戦闘の疲れもあったのだろう。

 何も考えず、前方をしっかり確認することもせずに走り続けていた俺は、いつの間にか自分がオークキングにかなり接近していたことも、筋肉ダルマたちがすでにオークキングとの戦闘を開始していたことにも気づいていなかった。


「おい! 危ないぞ!」


 どこの誰とも知らない男の叫びが俺に向けられたものだと気がついたときには、俺はもうすでにオークキングの攻撃範囲内に入ってしまっていた。

 前回は今後のことを考えてあのような展開にしましたが、やはりもっと盛り上がる展開にした方がよかったかなぁと少し反省中です。というより、スタンピード戦で三回以上は盛り上げる展開を描くチャンスがあったのに全然盛り上げられていないことに自分の力量不足を痛感中。

 もっと精進します。

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