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近づく敵、倒された俺たち

 眠ってから四時間ほどで目が覚めてしまった……。

 その後、うまく寝付けなかったので文字数少なめですが一話執筆しました。

 今話は初っ端からバトルが始まってますが、敵が接近してくる描写を書き忘れたわけではありません。

 敵から逃げるため円を描くように右回りに移動する。

 その後ろをぴったりとくっついてくる敵。

 敵との距離はほとんど離れていない。

 もう少し近づけば敵の攻撃が当たってしまう。


 だが、残りの敵はこいつだけ。

 他の敵はすべて倒した。

 あとはこいつをどうにかできればこちらの勝ちだ。


 しかし、こうもぴったりと後ろに張りつかれてしまっては反撃もできない。

 反撃ができないのであれば逃げ切るしかない。


 敵の攻撃が当たるのが早いか、それとも敵が動けなくなるのが早いか。

 このまま敵の体力切れを待ちながら逃げ切るしかない。


 こちらからは敵に反撃する余裕がない。

 敵は敵で、ギリギリのところでこちらに攻撃が当たらず焦れている。


 体力勝負の我慢比べ。


 先に崩れたのは、こちらだった。


 力が入らなくなり、速度が緩む。

 ほんの一瞬。

 たった一瞬の減速が命取りだった。


 背中に敵の攻撃が当たり、足元がぐらつく。


 さらに追撃。

 一撃、二撃。

 強い衝撃が加えられ、動けなくなっていくのがわかる。


 もうダメだ。

 そう思ったとき、終わりが訪れた。


 敵の攻撃によって大きく弾き飛ばされる()()()

 飛ばされた先で動きが止まり、そのまま動けなくなる。


 周囲にはフィナンシェとシフォンも倒れている。

 完全敗北だ。


 ()()、こいつの勝ちか。


 ()()()()()()()()()()()()()を見て、俺はそう思った。






「はぁ。テッド、またお前の勝ちだ。おめでとう」

「おめでとう! けど、くやしい~!」

「これで六連勝……。スライムは遊戯においても世界最強なのですね」


 全員で一斉にコマを回し始め、最後まで動きを止めなかったコマの持ち主が勝ち。

 そんなゲームを始めてから三十分ほどが経過した。


 勝負は六回行い、六回とも勝者はテッド。


 テッドはその水餅のようなカラダの中にひもを吸い込んだり吐き出したりすることで上手にコマにひもを巻いたり、投げたりしている。

 五回目まではカラダの表面にくっつけたコマをくるくると回しながらひもを巻いていたのだが、面倒くさくなったのか六回目はコマとひもの両方を体内に取り込みカラダの中でひもだけを器用に動かして巻き付けていた。


 俺たちが回している四つのコマはテッドが欲しがったから買ったモノだ。

 どうして興味を持ったのかはわからないが、コマを購入してから数十日。

 テッドはこの宿の部屋の中にいるときはコマを回していることが多かった。

 この連勝はその成果だろう。


 ただし、今回は勝敗はどうでもいい。

 このゲームの目的はシフォンがテッドに近づけるようになることだ。


 シフォンがリカルドの街を発つのは明後日の昼の予定だ。

 もしも街中でこのまま何も起こらないようなら、シフォンを襲ったやつらはブルークロップ王国までの街道上でシフォンを待ち伏せしている可能性が高い。

 その場合、俺とフィナンシェはブルークロップ王国までシフォンについていくと決めている。


 しかし、俺は本当はそんなに強くない。

 護衛をするには力不足だ。

 そのため、テッドの、というよりはこの世界のスライムの威光を借りることになるのだが、その際、シフォンがテッドに近づけないと困る。

 だから「テッドが姿を見せていれば襲われないかもしれない。ということで、シフォンにはテッドに近づけるようになってほしい」と半分騙すような真似をして、テッドに近づく特訓をしてもらうことにした。

 シフォンは昨日までの観光で十分満足したらしく、残り二日を特訓に費やす羽目になったことを残念がる様子はなかったのが幸いだ。


 しかし、テッドに近づく訓練なら六日前に出会ったときから少しずつ行っているがほとんど進展がない。

 そのため、特訓と言っても何をすればよいのかはわからなかった。


 三人と一匹で頭を悩ませた結果出てきたのは、


『テッドの嫌な感じを上回るくらい何かに熱中すればきっと近づけるよ!』


 というフィナンシェの案だった。

 その後、シフォンの「私、コマに触ったことないんです」「実は、友達とゲームをするのが夢だったんです」という言葉をきっかけにコマで遊ぶことになった。


 それからシフォンにコマの回し方を教え、ゲームを六回おこなった。


 テッドから感じる嫌な感じというものは本能的なもので相当強烈なものと聞いていたから、コマで遊ぶ程度のことでどうにかなるものなのかと思っていたが、意外とどうにかなるようだ。

 シフォンは昨日までよりもテッドに近づくことができている。


「シフォンちゃん、もうだいぶ近づけてるね!」

「はい。自分でも不思議です。昨日まではあれだけ嫌な感じがしていたはずなのに……」


 シフォンは俺たちと遊ぶことがそんなに楽しいのか、ゲームに熱中することでテッドから一メートルほどの距離まで近づけていた。

 昨日までは三メートルの位置から一歩も進めなかったことを考えると大きな進歩だ。


 フィナンシェが言うには、一度近くまで接近できればその後はテッドに近づいた際に感じる嫌な感じが軽減されるようになるらしい。

 どうしてそのようなことが起こるのかはわからないが、まぁいわゆる慣れというやつなんだろう。

 耐性ができるとでもいうのか、もしフィナンシェの言っていることが正しいのならこれでシフォンも嫌な感じというやつをある程度気にせずにテッドに近づけるようになったはずだ。


 欲を言えばあと五十センチメートルほど近づけるようになってくれるといざというときに守りやすい。

 明後日の出発前にはカラク工房に注文した品がいくつか完成するらしいので、それを受け取りに行く前までにはそのくらい近づけるようになってほしいところだ。

 さすがに、敵が現れたわけでもないのに途中の街道や町中でテッドをかばんから出すわけにはいかないからな。

 今回の特訓の期限はカラク工房へ向かう前までだ。


「もう少し近づけるよう頑張ってみます」

「その調子だよ、シフォンちゃん!」

《張り合いがなくてつまらん。もう少し上手く投げてくれ》


 テッドだけズレたことを言っていたが、この日はそんな感じで一日中コマを回しているだけで終わった。

 傍点をあまりつかったことがないので、傍点のつかい方が下手だったかもです。

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