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テッド最強説

 しばらくは1日1話ずつ更新予定。

 スライムが最強だと?


 フィナンシェ・デラ・ウェアと名乗る少女が口にした言葉は俺にとって聞き慣れないものだった。


 スライムがどういう存在かという質問に対して返ってきたのが世界最強。こいつの「なんでそんな当たり前のこと聞くの?」とでも言いたげな顔とさっきのテッドを目にしてからの慌てようを考えると嘘は言ってないようだが、もう一度訊いてみるか。


「おい、スライムが最強と言ったか?」

「う、うん。スライムって言ったら最強の生物、だよね?」


 こいつはまだテッドに怯えているようだが一応確認は取れた。

 なぜか疑問形だったが、こいつの反応からするとスライムが最強というのはこちらの世界では常識みたいだな。


 そしてもう一つわかったことがある。


 この世界は地球界じゃない。


 地球界には魔物は存在しないと聞いている。孤児院で教わった情報が間違っていた可能性や人魔界の人間が知らないうちに地球界に魔物が生まれた可能性、どこかの世界から“世界渡り”で魔物が来た可能性もあるが俺の直感がここは地球界じゃないと告げていた。


「フィナンシェと言ったか」

「は、はい! なんでしょう?」

「リカルドの街というのはどこにある?」

「あー、えーと。あっち?」


 フィナンシェは俺から見て右を指差しながらそう言った。


「そうか。あっちか。案内してくれないか?」

「それくらいなら別にいいけど。って、案内!? もしかしてそのスライムも一緒に?」

「そうだ。実は俺たちは迷ってここに閉じ込められていたんだ。だから案内を……」


 あれ?

 そういえば、俺とテッド以外の存在がここにいる?

 街もあって人もいる?

 それよりなにより、壁に穴が、いや、出口が出来ている!


「おい、テッド! 人間がいる! 穴も開いてる! ここから出られるぞ!」

『あの少女とさんざん会話しておいて、今頃気づいたのか』

「とりあえずあの穴が閉じる前にここから出るぞ!」


 ついに、俺たちは五日半も閉じ込められていた空間から抜け出すことに成功した。






 失敗した。


 俺とテッドは五日半も過ごしたあの空間から抜け出せた解放感と安堵、そして空腹感から残っていた食料をすべて食べてしまったのだがここからリカルドの街まで三日。一番近い集落までも一日半はかかるらしい。


 さすがに出会ったばかりの少女に無心するのは気が引ける。


「そ、それにしても、スライムでもトラップ部屋にかかったりするんだね」

「そうらしいな」


 俺たちが今いる場所はカナタリ領に存在する『カナタリのダンジョン』と呼ばれるダンジョンだそうだ。

 ダンジョンというのは魔物が生まれる場所のことで、ここカナタリのダンジョンのような洞窟型以外にも塔型や森型などいろいろあるらしい。ダンジョンには魔物のほかに宝箱やトラップ部屋というものが存在し、先程まで俺とテッドがいた場所は生き物を閉じ込める用のトラップ部屋の一つだと教えてもらった。近くに生き物がいると穴が開くタイプの部屋らしく、偶然フィナンシェが通りかからなかったら俺たちは死んでいたかもしれない。彼女は命の恩人ということになる。


「とりあえず街まで案内するね」

「ああ、よろしく頼む」


 テッドを頭の上に乗せた俺はフィナンシェの案内でダンジョンの出口へと向かって歩いていく。フィナンシェは俺たちの、というよりテッドの後方三メートルの距離から進行方向を指示しながら付いてきてくれている。

 案内すると言った手前、案内はしてくれているがよっぽどスライムが怖いようだ。三メートルより近くには絶対に近づいてこない。そしてそれはフィナンシェだけじゃない。

 遠くに見えた他の人間や魔物もテッドを目にした瞬間に一目散に逃げていく。


 最初は先頭なんて魔物と遭遇したらどうするんだよ。俺たち本当は弱いんだぞなんて思っていたがそもそも遭遇する前に魔物の方から離れていってくれる。戦う必要がなさそうでほっとした。


「スライムは最強なんだろ? その程度離れたところで意味はないと思うんだが」


 本当にスライムが最強なら三メートルなんて一瞬で詰められるだろうし、そもそもテッドが攻撃しようと思った時点でフィナンシェは逃げる間もなく命を落とすだろう。


 もちろん、そんな力はテッドにはない。


 トラップ部屋に閉じ込められた初日。テッドも壁に向かって全力で攻撃したが傷一つつかなかった。もしテッドがこの世界に来ることで最強になっていたなら俺が鉄杭をつかっただけで削れるような壁に傷一つ付けられないなんてことはなかったはずだ。


 つまり、スライムは最強というこの世界の常識はテッドには適用されない。テッドはいまだ最弱のままだ。


「そ、それでも。たとえこんな距離が意味のないものだとしても近寄るのは怖いの!」


 まぁ気持ちはわかる。俺だって「このドラゴンは安全だからもっと近くに来ても大丈夫ですよー」なんて言われても絶対に近づきたくない。


「そういえばドラゴンって見たことあるか?」

「ないよ! ドラゴンって言ったら出会ったら死を覚悟しないといけない代表例の一つだよ。一匹で街を滅ぼしちゃえるらしいし、出会いたくもないよ。そりゃあスライムと比べたら格が劣っちゃうけどさ」


 ドラゴンはこの世界にも居てその脅威は人魔界のドラゴンと同程度。そしてこの世界のスライムはそんなドラゴンよりも強いと。


 うわー。出会いたくねー。この世界のスライムどんだけ強いんだよ。


 そんな存在の近くにいないといけないなんてどんな罰ゲームだよ。フィナンシェはよく三メートル程度の距離に居られるな。

 もし俺が逆の立場だったら速攻で隣国まで逃げるね。いや、隣国の隣国まで逃げちゃうね。俺ならそうする。

 あ、でも逃げようとした瞬間殺されるかも。そう考えると逃げるに逃げられないか。


「なあフィナンシェ。もしテッドが怖いようならダンジョンの出口が見えたところで俺たちと別れるか?」

「ううん。案内するって約束したもん。ちゃんとリカルドの街まで案内するよ」


 まさか即答されるとは思わなかった。

 じゃあそうする、とか言われなかったのは良かったが。やっぱり、右も左もわからない世界でこの世界の住人であるフィナンシェと別れるのは少し怖い。この世界のことを色々と教えてもらいたいし、一緒にいてくれると助かる。


「そうか。じゃあ改めて道案内頼むよ」

「うん! まかせて!」


 こうして俺は、この世界の情報源兼用心棒のフィナンシェを仲間にした。

 全然書き溜めてないのに昨日調子に乗って3話も投稿しちゃったせいでちょっとピンチ。

 反省はしているが後悔はしていない。土日頑張ればなんとかなる……はず。

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