真っ暗な岩場にて
更新遅れてすみません! ちょっと急な来客に対応したりバル〇ン焚いたりしてました!
次回以降、一気に話を進展させていきたいと思います!
中に何も入っていない箱型魔物、モバロック。
カード化せずに消え去ったという名称不明の謎魔物、流動体。
モバロックは存在自体が珍しいという話であるし、そんなモバロックがたまたまこの岩場に生息していてたまたま流動体に吸収されずに流動体のいた付近にカード化して落ちていたとは考えにくい。
となれば、この岩場にいた、あるいはまだこの岩場か岩場付近にいるかもしれない何者かがモバロックをこの場に持ち込み、何らかの理由でカード化したモバロックをこの場に置き去りにしていったと考えるのが一番筋が通っているような気がする。
そしてその場合一番ありえそうなのが、中に入れたモノごと一緒にカード化するというモバロックの性質を利用した何者かが本来ならカード化せず持ち運びには適さないはずの流動体をモバロックの中に押し込めカード化させ、この岩場に持ってきたという可能性。
モバロックをこの場に持ち込んだ人物あるいは集団が俺とテッドの発見した操糸魔法つかい他四十七枚のカードを所持していたヤツと共通の目的を持った者または操糸魔法つかいたちのカードを所持し望遠鏡をつかって何かを観察していたらしいヤツと同一人物であるという前提が必要だとは思うが、そもそもこの岩場に人間が立ち入ること自体が稀なことであると考えれば操糸魔法つかいのカードを持っていたヤツがモバロックをつかってこの岩場に流動体を持ち込んだ可能性は決して低くはない。
操糸魔法つかいたちのカードの横に望遠鏡らしきものが落ちていたことについても、はじめから流動体を観察する目的で望遠鏡を持ち込みあの大岩の上に陣取っていたのだとすれば納得がいく……というより、オークたちも姿をくらました今、この岩場であんな大岩の上から望遠鏡をつかって観察したくなるようなモノなんてあの流動体以外考えられないし、あの流動体を観察していたようなヤツが流動体やモバロックと全くの無関係だとは考えにくい。
だから――
「あの流動体は、このモバロックに入れて持ってこられた可能性が高いということか……」
――と、思ったんだが……。
「ううん。それはないと思うよ。だって、モバ種の中に生物を入れてカード化しても中の生物は一緒にカード化されないはずだから…………たしか、カード化状態じゃない生物はモバ種がカード化するときに外に弾き出されちゃうって研究結果が報告されてたはずだよ?」
どこに報告された結果なのか。
どうしてフィナンシェがそんなことを知っているのか。
途中、パンでも口にしていたのか変に間が空きながらも伝えられた謎の報告事例。
まぁ魔物にも詳しいフィナンシェのことだから魔物について調べているうちにモバ種のことやその事例のことも知ったんだろうとは思うが、もし今フィナンシェの言ったことがフィナンシェの思い違いでも報告間違いでもなく事実であったとしたならば。
「……じゃあ、モバロックと流動体は偶然同じ場所にいただけ。もしくは何らかの関係はあるかもしれないがいま予想したような関係ではないということか?」
考えられるのは大岩の近くに落ちていた望遠鏡らしきものと【カディル】の関与を疑いたくなるような数枚の人間のカードを見つけて無理に大岩の上にいた人物とこの岩場で見たすべてのモノを結び付けようとしてしまっていた可能性だろうか。
たしかに、一度心を落ち着けて考えてみればそもそもあの流動体が人の手によってここに持ち込まれたと断定するための証拠もないし操糸魔法つかいのカードを持っていたヤツとは別に偶然この岩場に立ち入っていたような変人がいないとも否定しきれない。
流動体を観察していたヤツとは関係のないその変人が偶然モバロックのカードを所有していた可能性もある。
他にも考えようと思えばいろいろと思いつけそうな感じもするし……もしかすると俺は、変に頭が凝り固まってしまっていたのかもしれないな。
とはいえ。
「う~ん、どうなんだろう? 私もいま『それはないと思うよ』って言ったばかりだけどトールの言ったことが合ってるような気もしてて……あのドロドロがカード化しなかったのは完全に倒しきれてなくて逃げられちゃったからかもなんて考えてたんだけど、もしかしたらあのドロドロは生き物じゃなかったり? でも意思を持って自発的に動いていたように見えたし……う~ん?」
俺たちがここに来たのはオークたちの行動理由を調べオークたちを殲滅するため。
この岩場にまだ生存しているオークがいるのかどうかはわからないがこの岩場での異変を調査しに来たのだからこの岩場に現れオークたちを襲ったと思われる流動体のことを無視するという選択肢はない。
かといって今のままではオークが謎の行動をおこした理由や流動体がどうやってここに現れたのかを知るための情報が不足しすぎていて無数に可能性が存在してしまっているし……。
《テッド、カードの様子は?》
『良くて黄色だな』
《黄色か……まだ危ないな……》
操糸魔法つかいたち六人をカードから戻して情報を聴こうにもいつカード化したのかわからない上にカードの色は全員赤か黄色。
色が健常者を示す緑になるまでは戻しても数時間後にはまたカード化してしまう可能性があるしそもそも発声器官や手足なんかが傷ついていた場合には情報を聞き出すことすらできないかもしれないと考えるとまだ操糸魔法つかいたちをカードから戻すこともできないし……というより、操糸魔法つかいたちをカードから戻せれば夜のあいだの見張りなんかも任せられてもっと楽に身体を休められるんだが。
…………まぁ、どうせ夜が明けるまでは移動もできないからな。
操糸魔法つかいたちがオークの目的や流動体について何か知っていたとしてもそれを確認しに行けるのは夜が明けてから。
しっかり眠れないのは少しキツいがどうせ朝まで何もできないのだし、誰かのカードが緑に変わるまで気長に待つとするか。