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繋がる糸

 第一話投稿から1年経過、2年目突入!!

 と、いうことで、事前に告知していた通り本日より更新頻度を2~3日に1回に変更したいと思います。

 次回更新は7月29日月曜日の予定です。



 まだテッドと出会うまえ。

 孤児院の入口前に土を盛り小さな山を作って怒られたことがあるが、あれのデカい版といったところだろうか?


 瓦礫が散乱し走りにくい岩場の上を逸る脚と気持ちで必死に走り続け走破した、瓦礫の終点、オークたちの目的地。

 そこに見える、まるで山脈のように横に長く家のように高く積み重ねつくられた、岩の壁。


 それと――黒く蠢く、怪しい流動体。


「え? ねぇ、トール。あれって……」

「あれはもしかして、アレか? だが、なんでアレがここに……?」


 目に入ってきた岩壁と流動体への驚きと戸惑いはひどく。

 特に、怪しげな流動体を目にしての反応は顕著。

 フィナンシェと俺。二人そろってほとんど同時に口にした疑問の声をより正確に言い表すのであれば、そうであってほしくないという願いと、どうしてアレがここに、他にも存在していたのかという真意を込めた困惑の声だろうか。


 視線の先に高く横長に積み重ねられた岩壁も気になりはするし視界にずっと映り込んできてもいるが、それよりも目が離せないのはその岩壁の前、どう見ても以前見た『アレ』にしか見えない小柄なオークほどの大きさをした、ドロドロの何か。


 そして――


「トール、テッド」


 外面モードに入ったのか凛々しく細められた目を一瞬だけこちらに向け、全力で流動体に肉薄していくフィナンシェの後ろ姿。


 名前だけを呼んだ静かな声は短く鋭く、まさに水を打つような思い。

 ピンと伸びた背筋に靄が晴れたように澄んでいくこの視界と悪夢から醒めたかのようにハッとしたこの気分は朧気にでもフィナンシェの戦意と意図が俺に伝わってきてくれたおかげだろう。


 おかげで、やるべきことがハッキリとした。


《テッド。足跡でもなんでもいい。オーク以外の魔物か人の痕跡を探せ》


 よく見れば姿の見えない二百のオークに四体の上位種と、露骨に怪しいドロドロの何からしき流動体。

 フィナンシェに入れ直してもらった気合とクリアになった頭と目で状況を確認し整理してみれば、今すべきことは火を見るよりも明らか。


 姿を消したオークたちとラシュナの魔湧き中に見た何かの仲間らしき流動体。

 このことから思い浮かぶことはいくつかあるが、その中でも特に急いで対応しなければいけないものといえばここに来るまえに話に挙がっていた可能性の一つ。


 オークたちを飼いならしている、何者かの存在。


 もしもあの流動体がラシュナで見た何かとは全く違う存在であったりオークたちがここにいないのはあの流動体に食われたからではなく単に別の場所にいるからだというのならそれはそれでいいし、同じ存在であったとしてもスライムの縄張り方面や別の場所から勝手にやってきたというのであればそれもまた良くもないものの悪くもない。


 だが、何者かが何らかの意図をもってオークを操り、意図的に何かにオークたちを襲わせたというのであれば話は別。


 各地で発見された中規模以上の魔物の巣のこともあるし、もしこの岩場にオークの巣をつくり、さらにはオークたちや何かを操る術まで持っているような存在がこの付近にいるというのなら絶対に捕まえなくてはいけないことくらい俺にもわかる。


 そしてその何者かがまだこの付近にいる可能性は……極めて高い、のではないかと思う。


 たしかラシュナで何かを倒した際フィナンシェはユールの外壁上から何かを観察するような妙な視線を感じたと言っていたし、そのあとに行われた話し合いではその視線の主は何かをつかって実験を行っていたのではないかなんていう考えも挙げられていた。


 ラシュナと今回。

 両方とも魔物がたくさんいる場所で何かが発見されていることや思い返してみるとラシュナの近くにも中規模以上といえるくらいには大きなゴブリンの巣があったことも考えると、今この場所に何かの仲間らしき流動体が現れたことは決して偶然ではないようにも感じられる。

 というより、何かを観察していた者と魔物の巣をつくっている者たちが実在したとして、その者たちが同一の組織に所属あるいは双方が協力関係にあるのかもしれないとこじつけてみればここにあの流動体が現れたことが偶然だとは思えない。


 ラシュナのときのようにどこかからあの流動体を観察をしている可能性もあるし、可能性がある以上は逃げられるまえにその存在を確保するのが最善。

 ゆえに、フィナンシェが流動体に向かったのであれば、その確保の役目は俺の仕事。


《俺たちがすべきはここにいるかもしれない何者かを発見し、捕まえることだ。絶対に痕跡を見逃すな》


 そう思い、走り始めて十数分。

 岩壁に沿って走ればいつかはその痕跡を見つけられるかもしれないと考え、岩壁と平行に走り続けていたのが功を奏したのだろうか。


『あったぞ。知らない人間の靴跡だ』


 半信半疑。

 実はそんな者などいないのではないか、フィナンシェと一緒に流動体と戦った方がいいのではないかと思いながらも走り続けた末。


 ついに――――痕跡を発見した。

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