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信頼ゆえに

 凸凹と破壊の痕が残る断面。

 高さ十三メートル、幅八メートルはありそうな長く高い岩山の断面横を数秒かけて走り抜け、ついに進入した元・オークの巣。


 そこに見える、四体のオークとそのオークたちよりも一回りは大きく屈強そうなオークジェネラル一体。


《テッド、伏兵は?》

『心配ない。このまま進め』

《そうか、わかった》


 やっと見えたオーク四体とオークジェネラル一体。


 フィナンシェからの報告通りなら敵は視界に移るこの五体ですべてだが、さすがのフィナンシェも岩山に遮られ見えなかった部分にいるオークは発見できない。

 だから岩山を抜けて進入した先、この辺りにまだ確認のできていなかったオークが潜んでいるかもしれないと思ったんだが……杞憂だったみたいだな。

 しかも、元・オークの巣内部は多少岩が散乱しているもののほとんど平地。

 この見晴らしなら隠れられる場所もかなり限られるし、今確認できている五体以外にオークがいるようにも見えない。ということは、奇襲の心配もほとんどなし。

 これなら安心して、目の前のオーク四体を倒すことに集中できる。


 ただ一つ、気になるのは……。


《……それにしても、思っていたよりもオークたちがバラけているな》

『そうなのか?』

《ああ。俺たちが近くにいることはわかっているだろうからもっと固まって防備を整えているのかと思ったが、オークジェネラルの周りには一体もなし。他の四体のオークたちも二体一組になってそれぞれ百メートルくらいは距離をとりながら今も別々に岩集めを進行中だし、まさかフィナンシェや俺たちに気がついてないのか? ……いや――》


 テッドの感知範囲外。

 まだ三百メートル以上は離れているだろう場所にいる、オークジェネラル。

 そしてそのオークジェネラルからそれぞれ百メートル以上は離れた場所で互いの組も百メートルくらいは距離を離しながら二体一組になって作業を続けている、四体のオークたち。


 オークジェネラルに向かって一直線に突っ込んでいくフィナンシェを気にした様子もなく、フィナンシェのあとに続いて現れた俺とテッドに視線を向ける様子もないオークとオークジェネラルを見て実はまだ俺たちがここまで接近していることに気がついていないのではないかとも一瞬思ったが、さすがにそれはない。


 相手はただでさえ鼻の利くオークたち。

 いくらなんでも視認もでき足音も聞こえるこの距離まで近づいた俺たちの接近に気がつかないなんてことはありえないし、おそらくはさっきまで考えていたことと同様、俺たちの存在や接近にも気がついた上でなお俺達の存在を無視しているのだろう。

 と、いうことは――


《――ここまで接近してもまだ、俺たちにかまうより作業を優先する方が重要だと考えているのか》

『取るに足らぬ存在だと思われているのではないか?』

《そうだな。俺たちを弱いと侮っているか、それかオークジェネラルの強さにそれだけ信頼を置いているということなんだろうな》

『オークどもの考えは後者だろう』


 さすがにオークたちも俺たちがここまで来るために少なくない数のオークを倒してきたことは把握しているはず。

 それをふまえて考えれば、オーク・オークジェネラルともに、そんな俺たちよりもあそこにいるオークジェネラルの方が一枚も二枚も上手だと思い安心しているのだろう。


《それなら、その甘い考えをそのまま利用させてもらうか》

『手軽だな』


 俺たちにとって一番厄介で避けたかった状況はオークとオークジェネラルを同時に相手取らなければいけない乱戦状態。


 ゆえに、オークたちのオークジェネラルへのこの信頼は好機。


 オークジェネラルの強さを知っているからこそオークたちはオークジェネラルに加勢しようとも俺たちの進行を妨げようともせずに作業を続けているのだろうが、ただ、その信頼は俺たちが本当にオークジェネラルよりも劣っていたときにのみ成り立つもの。


 フィナンシェなら一対一でオークジェネラルに負けるようなことはないだろうし、たとえこの先オークたちがオークジェネラルが劣勢であると気づき加勢に向かったとしたとしても、この距離なら鈍重なオークたちがオークジェネラルのもとに辿り着くよりも早く俺とテッドが四体のオークのもとまで駆け寄れる。

 そうなれば、テッドの魔力に触れたオークたちはもう捕えられたゴブリンも同然。

 今の俺の実力でもあっというまに殲滅できる。


《一応何があるかわからないから最後まで油断はできないが、これなら、進入する前に考えていた百倍は楽に討伐できそうだな》

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