死んだかも
前々から感じてはいたのですが現在の更新ペースだと筆が予想外の方向に進んでしまった際に修正する時間がないので、そのうち――おそらく更新開始から1年と区切りのよい10日後くらいを目安に、2~3日に一回、週3回くらいの更新ペースに変更したいと思います。
そのぶん作品の質は向上させられると思いますので、今後とも、本作『その最弱、最強と勘違いされる!』へのお付き合いのほどよろしくお願いいたします。
正面から真っすぐこちらに向かってきているという三体のオーク。
オークたちがそれぞれ武器になりそうなモノを手にしているかどうかは気になるがそのまえに一つ、確認しなければならないことは……。
《その三体の中に、上位種は混ざっていないよな?》
上半身を起こし見つめる先、あの岩の向こうから向かってきているオークたちは普通のオークか、上位種か。
一応、フィナンシェやノエル、ギルド長なんかからオークの上位種についての説明は聴いたとはいえその脅威度はまだ未知数。
話に聴くのと実際に戦うのでは全然違うし、話に聴いた上位種の情報だけも俺とテッドだけでは手に余る。
フィナンシェがそろそろ戻ってくるということだったから無茶をしてオークたちを倒す必要はないものの、上位種が混ざっていたらさすがにそれも難しい。
上位種がいないといいんだが……。
『安心しろ。ただのオークが三体だ』
よかった。普通のオークが三体か。
《それならなんとかなりそうだな》
とは言ったものの、正面に存在するいくつかの岩が遮蔽物となっているからまだオークたちから俺たちは視認できていないと思うが、オークは鼻がいい。
十中八九俺たちがここにいることには気がついているだろうし、力の強いオークたちからすればそこら辺に転がっている岩のほとんどが武器のようなもの。
そう考えればオークたちが武器になりそうなモノを所持しているかどうかにかかわらずこの地形は俺たちにとって不利。
そこら辺の岩を投げつけられただけでも、俺たちは死んでしまう可能性が高い。
《とりあえずは回避に専念するぞ》
『倒さないのか?』
《余裕があれば攻撃も加えるが、最悪フィナンシェが来るまで逃げ回るだけでいい。とにかく生き残ることが最優先だ》
敵の方が数も多く、地の利もオークたちにある。
その上、俺の体調も万全ではなく、オークの肉は分厚く頑丈。
以前戦ったときよりは俺も成長しているとはいえ前にこの世界のオークと戦ったときは一体を相手にするのですら相当苦戦したし、昨日ポイズンフロッグの討伐速度で馬にも敵わなかったことを思えば今の俺の剣ならオークを容易く倒せるかもしれないなんて自惚れもない。
何事も堅実が一番。
とにかく回避に専念、それがいま選択すべき最善手だろう。
《テッド、肩に乗れ。まずはここから移動する。誘導は任せたぞ》
『この場から離れすぎないように、だな?』
《そうだ。荷物が戦闘に巻き込まれず、フィナンシェが戻ってきたときすぐに俺たちに気づける位置で頼む》
とにかく回避に専念。
そのためにはまず、ここにおいてある荷物が巻き込まれないようここから距離を取った方がいい。
身体も身軽な方がいいし、この場所ではテッドを隠しておく必要もないからかばんも要らない。
ギルドから借りた馬も……この近くにはいないみたいだから今は気にしなくてもいいとして、剣は持った。
防具もつけたまま寝ていたから大丈夫。テッドが何も言わないから寝ていたあいだに留め具が緩んだ箇所もないはず。
テッドもしっかりと右肩に乗って準備は万端。
《よし、行くか》
『まずは左に進め。その方がオークの追ってくる見込みが高い』
《わかった》
左というのはフィナンシェが向かったのがここから見て七時の方角だったからか。
なんであれ、テッドが言うのならすぐに左に退避しよう――と、思ったが……。
『どうした?』
《悪い。立ち上がれない》
上半身を起こすときには何の抵抗もなかった。
だから、激しく動かなければこの体調でも問題なく動けるのだろうと思っていたが……腕や脚、身体のいたるところに力を入れても全く立ち上がれそうにないこの状況。
迫るオークに、動かない身体。
力の差は歴然。近くにいる味方もテッドだけ。
端的に言ってこれは、死んだかもしれない……。