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首謀者判明?

「なぁフィナンシェ、あのオークたちがどうしてあんなところにいるのかが気になるんだが、過去に何かオークたちが大量に住処を追われるような事件とかはなかったか?」


 まえにロックブロックの岩場に行ったときに見たあのオークの数。

 あれだけの数のオークがあそこに住み着いているということはおそらく何らかの理由で前の住処を捨てなければいけなくなりロックブロックの岩場まで流れてきたということ。

 となれば、ここ数年の内にどこかで大量のオークが住処を捨てなければいけなくなるような大事やオークの集団移動がどこかで発生、目撃されているはず。

 そしてフィナンシェならきっとそういった情報にも明るいだろう――と、思ったのだが。


「う~ん、たぶんそういうことはなかったと思うよ? 私も魔物の情報はできるだけ集めるようにしてるけど聞いたことないし、オークがたくさんいるって聞いて冒険者ギルドでも調べたみたいだけどやっぱりそんな情報はどこにもなかったってギルド長が言ってたから」


 ピンと立てた人差し指を顎に当てながら小さく首を傾げそう言うフィナンシェ。


 この情報をさっきの説明の中で話さなかったのは俺には必要のない情報だと思ったのか、ただ忘れていたのか。


『余計な情報を与えず、まずはお前の考えを聴こうとしたのではないか?』


 テッドの言うように最低限の情報だけを与えて俺がどんな推測を立てるか様子を見ていたのか。


「それなら、オークたちの食事はどうだ? アイツらが何を食べているのか映像に記録されていただろ?」


 もし様子を見ていたのだとして、俺のこの質問は望ましいものだったのか否か。


「ううん。それが夜にしか食事をしないみたいで映像には何も映ってなかったんだよね」

「食べ残しとかもか?」

「うん。送られてきた映像を隅々までチェックしてみても食事の形跡は一つも発見できなかったって聞いてるよ」

「そうなのか……」


 様子を見ていたのだとするとフィナンシェたちでは思いつかなかったような何かを俺やテッドが思いつくことを期待して様子を見ていた可能性が高いと思うんだが……今訊いたことはすべてフィナンシェやギルドの方ですでに検証済みのようであるし、この感じだと期待には沿えなかった可能性が高いか。


 ……とはいえ、フィナンシェにとってはどうだったかわからないが俺やテッドにとっては得るものが何もなかったわけでもない。

 質問をしたことで新たに得られた情報もあるし、これでまた新たに推測を立てることもできそうだな。


 さしあたって、今の会話を聞いてテッドがどう思ったのか訊いてみるべきか。


『話は終わったようだが、何か気づいたことはあるか』


 フィナンシェから新たな情報を聞いてテッドはどう思ったのか、テッドの意見を聞いてみたいと思った瞬間にちょうどよく聞こえてきたテッドからの念話。

 気づいたことというよりかは気になることではあるが……。


《オークたちが本当に食事をしているのかどうかは気になるな》

『食事を?』

《フィナンシェが言ってただろ? オークは夜にしか食事をしない上に朝になってからの映像を確認してみても食べかすの一つすら発見できなかった、って。オークは鼻はいいみたいだが夜目は利かないみたいだし、真っ暗闇の中で食事してそんなに綺麗に食べきれるものなのかと思ってな》


 もしかしたら一口で食えるような小さなモノを丸呑みしているから食べ残しがないという可能性もあるが、あの辺りにそんな小さなエサが大量に存在しているとも思えないしな。


 それに、オークが日中に食事をしていないことは確定だとしても、だからといって夜に食事をしているとも限らない。

 人魔界にいた頃食事をせずに生きていられる魔物の話を聞いたこともあるし、食事をしないオークなんてものは聞いたことがないが、夜は暗くて映像を記録できないことを考えると食事をしている光景が映っていない以上は食事をせずとも活動できるオークがいないと断ずることもできない。


《もしもオークたちが食事をしなくとも生きられるのだとすればあんな場所に巣をつくれたこともあんな場所であんなにも数を増やせたことも容易に説明できるからな》


 これなら、オークの大移動の発生や目撃が確認されなかったことも食事を必要としないカラダに進化したオークが次第にその数を増やしていったということで簡単に説明がつくし納得もできる。


 もしかすると、本当にこれが正解なのではないだろうか?


 ――と、考えてはみたものの。


『もっと簡単に、人為的なものなのではないか?』


 あとから発言したテッドの言葉にも、そこはかとない説得力が感じられる。


 よくよく思い返してみれば最初にここを調査しに来た理由も各地での中規模以上の魔物の巣の発見に作為的な何かを感じたからということであったし、そう思って考えてみればあの岩場にオークの巣を形成した何者かがいたとして、その者がオークたちの食事も賄っているということも考えられない話ではない。


 しかしその場合、人の来ないあんな場所でコソコソと行動するように夜にしか食事を与えていないのは何故なのか。

 考えられるとすれば、あの場所に時限式映像記録装置が設置されたことを知っているからということくらいしか……。


 それでもって、あそこにあの装置が設置されていることを知っていて安全にあの岩場まで行き来できそうな人物といえば今ちょうど俺たちと別行動をしているノエル以外に思い当たらないんだが……。


《まさか、ノエルが犯人か?》

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