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買った覚えのない品々

 ノエルがいなくなり新たな目標を見つけてから八日くらいが経っただろうか。


『今日も上手くいかなかったな』

《そりゃあ、まぁ。まだ連携を意識し始めて七日程度だからな。七日前に比べれば多少はマシになっているんじゃないか?》


 ノエルは今頃どこで何をしているのやら。

 ギルドで報酬を受け取りがてらノエルのことを訊いてみても相変わらず何の情報も入ってこないし、ノエルがいないからこそフィナンシェとの連携練習がはかどっている面もあるとはいえ浮遊魔術がないせいで移動力は激減。

 ただでさえ遠方に出向く依頼の方が報酬も良い上に一日に受けられる依頼の数も減ったことで日の稼ぎはノエルがいたときの七割程度まで落ちているし、最近はめぼしい依頼もないから本当に銀貨数枚ずつしか持ち金が貯まっていかない。

 このままだと、金貨十枚を稼ぐまでにあと何百日かかることになるか……。


 金貨十枚を稼ぐまでは贅沢禁止。

 そう決めたのは俺だしテッドも納得の上ではあったが、早くノエルが帰ってきてくれないといつテッドが食欲に負けて小言を言い始めるかと気が気でないんだが……。


 それに。


『多少はマシになったなど、よくそのようなことが言えたものだな』

《……そうだな。今日のアレは俺が悪かった》

『自身を持つなとは言わん。だが、思い上がりは身を滅ぼすぞ』


 ここ数日の戦闘でやっと確かめられた訓練の成果。


 予想以上に強くなっていたいまの自分の実力と面白いようにカード化していく魔物の姿に得意になりすぎて無茶な突撃を仕掛けてしまったのはつい数時間前のことだからな。

 自分の力がどこまで通用するのか試したくて突撃した結果七体の魔物に囲まれ挙句の果てにテッドがかばんから出てきたことで魔物たちが怯えてくれなければ死んでいたかもしれないとか、バカすぎて笑い話にもならない。


《今日は迷惑をかけたからな。銀貨一枚までなら好きにつかっていいぞ》


 テッドもパーティメンバーなのだから助け合いは当たり前……とはいえ、今日は命を救われたからな。

 さすがに度を越した贅沢はさせてやれないが、銀貨一枚分くらいならまぁいいだろう――


『そうか。それならばそこの肉串二本と二軒先で売られているスープ一杯、それと新野菜屋のサラダとあの客の少ないオコノミヤキ屋のオコノミヤキにアポの実の盛り合わせを頂こう』


 ――と、思ったが。


《……それ、銀貨一枚でおさまるのか?》

『心配するな。きっちり銀貨一枚におさまる』


 それならいいが……。


《もし銅貨一枚でも越えそうになったらそれ以降の品は諦めてもらうからな》

『かまわん』


 テッドもこう言っていることだしな。

 とりあえず買いに行ってみて予算を超えるような事態になった場合、キッパリと諦めてもらえばいいか。






 …………本当に、銀貨一枚ちょうどだったな。


『ふむ。味付けを変えたのか。これはこれでよいな』

「トールたちがこんなに買ってくるなんてめずらしいね? 最近はあんまり食べないようにしてたみたいなのに」


 おそるべきテッドの食欲と言うべきか……。

 まさかこの辺りで売られている料理ほとんどの値段を記憶しているとは。

 急な値段変更でもない限りはこれからも銀貨何枚分といえばその枚数きっかりの品を購入させられそうだな。

 ……食べ物の代金については、滅多なことを言わないように気をつけておくか。


「あれ? トール? 聞こえてる?」


 というより、なんだか買ったときよりも量が増えてないか?

 最後に買ったアポの実の盛り合わせ以外はすべて宿に帰ってくるまでのあいだに食べ尽くしていたと思うんだが何故かオコノミヤキや買った覚えのない品までテーブルの上に置かれているし……。


「おーい? トール?」

「……どうかしたか?」

「あ、よかった。聞こえてた。帰ってきてからずっとぼーっとしてたから何かあったのかと思っちゃったよ」

「心配してくれたのか。ありがとう。だが、何も問題はない」


 そう。何も問題はない。

 問題はないはず……と、言いたいんだが。


《なぁテッド、購入した品……増えてないか?》


 増えてないかというより、どう見ても量が多いよな、これ?

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