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新たな目標設定

 アシッドウルフ二体との戦闘の結果、思っていた以上に高く表れた訓練の成果と、それまでの一連の動きで浮き彫りになったフィナンシェの弱点と俺の実力不足。


 パーティ全員の実力を考えるならば明らかに一人だけ実力の劣っている俺が全面的に悪い。

 だが、パーティとして活動している以上はフィナンシェにも非がないとはいえないだろうし、なによりこの先だれかと協力が必要な場面があったときにさっきのような独りよがりな行動をとられたら困る……はずである。


「だからフィナンシェにはもう少しまわりに合わせる動きを意識してほしい」

「うん、わかった。意識してみるよ!」


 魔物を片付け休憩中に伝えた、どちらかといえばお願いに近いフィナンシェの動きへの指摘。

 顔色を変えることもせず笑顔で返答してきたフィナンシェは指摘内容をきちんと理解しているのかいないのか。


「俺もできるだけフィナンシェの動きに合わせた行動を心がけてみるが……まぁ、初めのうちは上手くいかないだろうな」


 フィナンシェの単独行動や思考はおそらくこれまでの経験によるもの。

 パーティを組まず一人での冒険者生活が長かったせいや実際に一人でもなんとかしてしまえるだけの力を持つがゆえにさっきのような行動をしてしまうのだろうから、意識してみたところで身体に染みついた癖は簡単には抜けないだろうし、フィナンシェ一人でも成果をあげることのできてしまう依頼ばかりを受けている現状ではその癖を治す必要性も危機感も全く感じられない。

 こんな状況で本気で周囲に動きを合わせようと意識できるのかどうか。


 それに、フィナンシェが動きを合わせようとするには俺に実力が伴ってなさすぎる。

 だからこそ動きを合わせる練習をするには最適な相手になれるような気もするが、このままではただフィナンシェの足を引っ張るだけの結果に終わってしまうことは目に見えている。


「とりあえず、魔物を見つけても一人で突っ込まない。行動を起こすのは俺やテッドにもわかるような合図を出してから。緊急時以外はそのことを意識して動くようにしてくれ」


 俺もフィナンシェも、今のままでは絶対に駄目。


 まずこれまで通り俺がフィナンシェやノエルと肩を並べられるくらいに強くなるという目標は大前提として、それに加えフィナンシェの動きに合わせ動けるようになるための練習も実戦や頭の中でのイメージトレーニングを問わず重ねていくのは必須。

 とはいえフィナンシェ同様に俺の方も急に動きが良くなるなんてことはないから、その上でどれだけ互いに互いの動きに合わせようと意識していけるかが重要といったところだろうか。


《互いに動きを合わせようとしてその結果、逆に動きが合わなくなるなんてことも考えられるからな。テッドもそばで見てて気づいたことがあったらなんでも言ってくれ》


 とりわけ心配なのは俺が自分の実力不足に焦り嘆いて周囲に目を向けることもできないような状態に陥ってしまわないかということ。

 フィナンシェが俺に合わせようと頑張ってくれていることも忘れ俺が強くなればすべてが解決するなんていう短絡的な思考に走りでもしたら目も当てられないからな。


《特に、俺でもフィナンシェでもどちらか、あるいは両方がなにか良くない方向に進んでいると思ったらすぐに教えてくれ。原因はわからなくてもいいから、まずい気配を感じたらすぐに頼むぞ》


 何か失敗するとしたら俺の方が可能性は高いが、万が一ということもある。

 同じ食いしん坊コンビの一員であるテッドに見ていてもらえばフィナンシェが不調になったとしてもすぐに気づくことができるはずだ。


《それと……》

『くどいぞ。そう何度も言われなくともわかる。一度深呼吸でもして落ち着け』


 さらに細かい注意点を伝えようとしたところで遮られた、再三の念話。

 テッドから念話が送られてこなければ気づきもしなかったが……たしかに、いまのは少ししつこかったかもしれないな。


《悪い。明確な目標ができて気が急いていたのかもしれない》


 あとは他に、テッドの力を借りずにアシッドウルフ二体を倒せたことで気が良くなっていたのかもしれないが……。


『わかればよいのだ。前々から思っていたが、お前は心にもっと余裕を持て』


 何はともあれ、さっそく周りが見えていない行動をしてしまったことは反省しないとな。

 今みたいに簡単に周りが見えなくなってしまうようだと、さっきの懸念も本当に現実になりかねない。

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