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世紀の大発見?

 夢物語とも史実とも語られる、真相不明の大魔術師。


 ユースファリ・マ・ダッド。


 魔法つかいや魔術師のあいだでは有名だというその男は本当に実在したのか、仮に実在していたのだとして本当に現在まで語り継がれているようなおよそ人とは思えぬ並外れた実力を有していたのか。


 天を裂き地を創り因果をも捻じ曲げたという彼の魔術は彼以外に操れる者もなく。


 まさに才気煥発。


 彼が死して以降、数多の魔術師がユースファリの魔術を手に入れようとその人生すべてを費やし研鑽を重ねたが、数百年の歳月をもってして、彼の実力の半分にすら迫れた者はなし。


 ゆえに、ユースファリは世界一。


 史上最強、魔術の傑物の名をほしいままにした唯一無二の天才魔術師――






「――それが、ユースファリ・マ・ダッド」


 ……たしか、そんな感じだっただろうか?


 かなりまえにノエルから一度聞かされただけだから朧気にしか覚えていないが、まぁ概ねこの認識で正しいだろうと仮定したとして。


「そのユースファリ・マ・ダッドの名が、どうしてこんなところに……?」


 久々の探索依頼。貯金生活の第一歩。

 カナタリのダンジョン奥地、カナタリのダンジョンの未探索地帯を調査しにきて出逢った石碑。

 そこに記されたユースファリ・マ・ダッドの名を示す文字。


 俺の貯金にかける意気込みが俺とテッドをこの場所に連れてきたのだろうか?

 フィナンシェやノエルとの探索中なぜか二人とハグレ進んでいたら発見したこの巨大な石碑と石碑に彫られた膨大な文字の羅列。


 ここに記された文字はユースファリ・マ・ダッド本人が残したものか。

 もしそうならば名前の他に記されているこの膨大な文字の塊はユースファリが後世に残したユースファリの遺産か。


 すべての魔術師の憧れ。魔術師の頂点。一つの魔術の到達点。

 そして、ノエルがいずれ越えるべき人物。


 ノエルが目指し追い越そうと躍起になっている偉大な人物の石碑が、どうしてこんなダンジョンの奥地にあるのだろうか?


「……とは思ったものの、冷静になって見てみればこの石碑も文字も随分と新しいな。ユースファリの名を騙った偽物の用意した石碑か?」


 数百年前からここに存在していたとは思えないほどに全く風化の痕の見られない石碑に、彫られた当時のままだと思えるほど綺麗に形の残っている読み取りやすい文字。

 ノエルから語られた内容通りであるならばユースファリは数百年も前の人間であるし、その人間が残した文字や石碑がこんなにも綺麗な状態で存在しているとは考えにくい、のだが……。


『ユースファリは因果を捻じ曲げるほどの力を持っていたのであろう? ならば石碑の保存程度、容易にやってのけるのではないか?』


 テッドの言うことにも一理ある。


 因果をも捻じ曲げるほどの力を持っていたと言われる稀代の魔術師。

 そんな魔術師であれば数百年以上のあいだ物体の状態を保存するくらいのこと、できてもおかしくないのかもしれない。


「とはいえ。そうは言っても俺とテッドだけで判断できることでもないしな……」


 この世界の者でもなければ魔術に精通しているわけでもない俺たちにこの石碑の状態が新しく見える理由やここに記されている内容がユースファリ本人の記したものであるかどうかなどわかるわけもない。

 テッドの言う通り万が一にもこれがユースファリ本人の遺したモノだった場合にはかなりの大発見をしたことになるが、現時点では真実は不明。

 今はフィナンシェやノエルとの合流を優先し、改めてノエルをここに連れてきた方が真相解明につながるのではないだろうか?


「とりあえず、ノエルを探すか」


 どのみち、フィナンシェやノエルとの合流は必須。

 この場所についてもギルドに報告することになるのだからどうせならノエルに調べてもらい、より詳細な情報を報告した方が良い結果にもなるはずだ。


『この場を離れる前に、石碑の内容を書き写しておいてはどうだ?』

「それもそうだな。一応、書き写しておくか」


 フィナンシェたちを探しに行く直前、テッドに促され取り出すは紙とペン。


 たまたま発見したにしては凄いモノを見つけてしまったかもしれないが、これもなにかの縁。

 最悪、ここまでの道順がわからなくなっても大丈夫なようにしっかりと内容を書き写しておいた方がよいだろう。

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