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偶然、必然、謀略?

 オコノミヤキを味わいながら待っているところに威勢のいい青年らしい声と良い笑顔で届けられる追加注文の品々。


「追加の新鮮サラダと温野菜パスタとオコノミヤキ五人前お待ちどおさま!」

『きたか。早くかばんに……』

《店員が離れるまで我慢しろ》


 このやりとりももう何度目か。


 すでに入店から一時間。

 テッドとフィナンシェの食欲はとどまるところを知らず、口に合ったのかノエルの食事量もいつもより多く……。


 テッド二人前、フィナンシェ二人前、ノエル一人前。

 新たにテーブルの上に置かれた計五人前のサラダとパスタとオコノミヤキもほんの数十秒で三人前まで数を減らし、見る見るうちに残りは一人前、ノエルの分を残すのみ。

 かと思えば……。


「オコノミヤキ十人前おまちどおさま!」


 さらにそこへ届けられるオコノミヤキ二枚重ね計五皿の十人前。

 三十分ほどまえから追加注文のオコノミヤキが一皿に二枚のった状態で出てくるようになったのは更が足りないのか運ぶ手の数が足りないのか……。

 それ以前に、テッドとフィナンシェの食事量を見越して多めに注文したことは覚えているがあと何人前の料理がここへ運ばれてくることになっているのか……。


「こんなに食べてるのにまだ飽きがこないわね」

「そうだよね、いくらでも食べられちゃうよね!」

『なくなったぞ。次の分を早くくれ』


 現時点でももうパスタとオコノミヤキが五十皿ずつ以上にその他副菜が三十皿以上。

 俺たち以外に客のいない、普段から客が入っていなさそうなどう見ても隠れ家的名店のこの店のどこにこれほどの量の食材があったのか。

 まさか注文に合わせて適宜買いに行っているというわけでもないだろうし、フィナンシェの胃の容量と同様にこの店の食材貯蓄量もかなり謎。

 一体どこから料理が出てきていてテッドとフィナンシェの食事速度に負けない速さで料理を完成させている料理人はどのような機敏さと調理法を持っているのか。

 よく思い返してみると店の外観も店という感じではなくただの民家だったように思うし……そもそもオコノミヤキのように数百年間製法が失われていた再現料理を扱っている店はその物珍しさと料理の完成度から繁盛しているのが普通なのに店自体が見つけにくいという条件を考慮したとしてもこのオコノミヤキの味があってこんなにも客の入りが悪いということがありえるのだろうか?


 …………なんというか、考えれば考えるほど本当に、料理が美味いことと店内が綺麗に整っているということ以外謎しかない店だな。


 特に気になるのは――


「フィナンシェはどうやってこの店を見つけたんだ?」


 どこもかしこも謎だらけのこぢんまりとした、しかし美味しい料理を大量に提供してくれる店。

 こんな小さく外観も店らしくない評判にもなっていなさそうな店、普通に生活していたとしたら絶対にその存在を知ることはできないだろうし、偶然見つけたということも考えにくい。

 普通に考えれば俺やノエルが今日フィナンシェに連れてこられたようにフィナンシェも誰かから紹介されたというのが妥当なところだろうが……。


「ん~とね、なんとなく美味しそうな匂いがするな~と思って来てみたら偶然この店に辿り着いたんだよ? すっごいラッキーだよね!」


 当然のようにあっさりと自身の食に対する異常な嗅覚によって発見したと答えるフィナンシェ。


 まぁ、フィナンシェのことだからそういうこともあるのではないかとは思っていた。

 思ってはいたが……。


《テッド、さっきのアレは本当の話か?》

『嘘を伝えてなんになる。すべて本当のことだ』


 小一時間食べ続けわずかに食欲が薄れたテッドから伝えられた、衝撃……というほどでもない新事実。


 ――この店の者が、領主の関係者であることを示すペンダントを身につけている。


 要するに、かつてのイエロースライム接近のときに会ったこの領の領主からの使者カルロスとケインが身につけていた両翼のついた盾をかたどったペンダントをこの店の者たちも持っているということらしいが、領主の関係者のいる店とフィナンシェの偶然の巡り合わせ。


 はたしてそんな偶然が、本当にありえるのだろうか……?

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