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男の証言

 カード化の法則は神による生物のための救済措置とされている法則。

 この世界の生物は瀕死になるとカードに変化し命を救われるかわりにカードから元の姿に戻るためには他者の力を必要とし、自身をカードから戻してくれた者の命令になんでも一つだけ従わなくてはいけないという制約がつきまとう。


 ゆえに、その命令次第では戻した者を一生支配下に置くこともできるほど強力な法則なわけで……。


「アンタたちが何の目的であの森林に入ったのか答えなさい」

「仕事に失敗して逃げ込んだ、というのが【神童】様の知られたい内容に該当するでしょうか? あの森林は人から身を隠すのに打ってつけでしてね。たまに隠れ家として利用させてもらっているのですよ」

「ナラナフ森林を隠れ家に? どういうことか詳しく聞かせてもらえるかしら」

「ええ、もちろんです。我々がかの森林を隠れ家にできている理由はそこの柱に括りつけられている彼女の血統魔法《隠形極致》のおかげでして、何者からも身を隠すことのできる彼女の力があれば活動的な魔物のいない森林を闊歩することくらい造作もないことなのですよ。【神童】様も彼女の力に気づいているからこそ、彼女に逃げられないようにこうして岩と炎で周囲を囲っているのでしょう?」

「そう、血統魔法、それも隠形系……どうりでそのコの魔力が捉えにくかったわけね」

「おや? 【神童】様にそう言っていただけるとは。彼女のパートナーとして私も鼻が高いですね。といっても、以前あなた方に近づいた時にはそちらの【ヒュドラ殺し】に簡単に見破られてしまいましたが」

「……アンタ、アタシがアイツに劣ってるとでも言いたいの?」

「いえ、そのような意図の発言では――」


 話せる状態まで回復した男にノエルが言った言葉――


『アタシたちの言うことをききなさい』


 その命令と直後に言われた「質問に答えなさい」という言葉に従いスラスラと質問に答えていく攫い屋の男。


 カード化の法則に従っているおかげかそこに以前ほどの不気味さは感じられず、男の態度は従順そのもの。


 ノエルが俺よりも下ととれるような発言が出てしまったせいで問答は一時中断されてしまったが、これまでに出た情報をまとめると少女と男の二人は人攫いに失敗して森林に逃げ込んでいただけ。中規模以上の魔物の巣の発生には関与していないのだろう。


「この様子だと時間稼ぎをしていたわけではなさそうだな」

「そうだね。あのコが無口なだけだったみたいだね」

「いや……まぁいいか。それよりも――」


 おそらくは無口なのではなく俺たちと口を利きたくなかったのではないかと思うが、フィナンシェの呑気な発言は置いておくとして……さしあたって気になることが一つだけ。


「今の問答に出てきた、血統魔法というのはなんだ?」


 ニュアンス的に結界魔法や希少魔法とも違いそうな謎の魔法。

 血統という言葉から考えるに、決められた血筋の者にしかつかえない特別な魔法といったところだろうか?


「あ、血統魔法はね。シフォンちゃんの回復魔法みたいな、その一族にしかつかうことのできない特別な魔法のことだよ」


 ……やっぱりそうか。

 血統魔法は生まれた瞬間に会得できるかどうかが決まってしまう魔法。


「つまり、やる気さえあれば誰にでも修得可能な希少魔法よりもさらに希少な魔法ということか」


 とはいえ、その一族の者にしか修得できないからといって強いとは限らないような気もするが、さっきの話を聞いた限りでは攫い屋の少女の血統魔法はノエルが警戒して周囲の地形を変化させなければいけなかったほどに強力ということなのだろう。


 この状況で何かができるような魔法ではないみたいだが一応警戒はしておいた方がよさそうだな。






 ――と警戒はしてみたものの何かが起こることもなく。


「聞きたかったことは大体聞けたわね。暴れられても面倒だからアンタにはもうしばらくアタシたちの言うことをきいてもらうわよ」


 人攫い以外に二人が悪事をはたらいていないことを確認し終え、少し休むと言い残しテントの中に入っていくノエル。


 時間稼ぎ云々が杞憂だったことは確認したし、少女の血統魔法もこの状況を覆せるようなものではないのか大人しくしていて、男の方もカード化の法則によって行動を制限済み。


 ということは……。


「俺たちも少し休むか」


 このあとの調査に備え、俺も休んでおいた方がいいということなのだろう。

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