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仰天な目覚め

 ふわふわとした視界の中、浮かび上がってくる景色。


 焚き火のまえ、つまらないものでも見るような目で少女を見下ろすノエルと、捕縛され座らされた状態からノエルを睨みつけている小さな少女の姿。

 そしてそれを眺めている俺とテッドらしき影。


『アンタ、名前は?』

『…………』

『あの場所で……危険な…………わよね?』


 聞こえてくるのはどこか遠く、それでいて聞き取りにくい、こもったような声。


 どこで見たのか。どこで聞いたのか。

 なんとなく見覚えのある光景に聞き覚えのある会話だが…………もしかしてこれは、夢だろうか?


 よく考えると俺自身の視界の中に俺らしき人物の後ろ姿のような影が映っているのもおかしいし、最近どこかで見た光景を睡眠中の頭が思い出し、夢として再現している――そう考えれば色々と説明がつくし、実際、この光景はつい最近見たもののような気もする。


『ラチがあかない……開き…………』

『…………』

『アンタ…………ないつもり?』


 明晰夢、というのだったか。

 ここがどこなのか、あの少女が誰なのかも思い出せない上に会話内容もほとんど聞き取れないが、聞こえてくる音はたしかに聞いた覚えのある言葉の数々。

 今見えているこの光景や聞こえている声が初めて見聞きするものだとは思えないし、やはりこれはどこかで経験した内容を脳が夢の中で再現しているのだろう。


『……を戻せば…………』

『…………』

『なんなら、今ここでアンタをカード化……』


 そしてこれが明晰夢なのだとするならば、たしかこのあとはテッドが何か言ってきて――


『少女の方はだいぶ怒りを……』


 この発言のあとは――


『……寝てなどいない……そろそろ食事……』


 それから――――それから……何と言ったのだったか?


 このあとテッドから聞かされたことに少なくない衝撃を受けたような気がするんだが……えーと…………。


『そうだ、一つ伝えておくべきことがある』


 そう。たしかこのあと。

 このあとにテッドが言ったことが重要だったはずだ。


『先ほど……で……たときの…………が、その言葉で……た二人、その時の……だぞ』


 そうだ。この言葉。

 肝心なところが抜けてしまっているが、今の部分が重要だったのは気のせいではないはすだ。

 思い出せ。今抜けていた部分に入る言葉はなんだったのか……。


『先ほどこの光景が……で……を捕縛したときの光景に似ていると……たが、その言葉で思い出した。そこの森林で見つけた二人、その時の……だぞ』


 もう少し……もう一度……。


『先ほど……ダララの森……攫い屋二人……似ていると……』


 核心に迫るのは、たしか最後の一文……。


『…………た。森林で見つけた二人、その時の攫い屋だぞ』


 ……あ。


 ――――森林で見つけた二人、その時の攫い屋だぞ。


 そうだ。これだ!


「思い出した!!」 


 事の重大さに意識が覚醒したのか声を上げながらガバッと飛び起きた目に入ってきたのはもう夜明けなのかテントの入口から薄っすらと差し込んできている光。


 昨日捕えた怪しい少女の魔力性質をテッドから聞き、それをノエルに伝え少女の人柄やおおよその能力を分析推測してもらう――なんてことを考えてから寝たような気がするが、それどころではない。

 テッドの話によると昨日の少女とカード化したもう一人は以前俺たちを攫おうとしてきた攫い屋の二人組。

 攫い屋などという真っ当ではない仕事をしている二人が人気のない森林にいた理由なんてロクなものでないに決まっている。

 とにかく、フィナンシェとノエルの二人にも少女ともう一人の正体を――と思いテントから出て見た光景はまだ夜の中燃える地面と周囲を囲むように隆起している尖った岩々。


 まるで、凶悪な魔物を逃がさないためにつくられた岩と炎の檻のようにも見えるが……これはいったい……。

 俺が寝ているあいだに、何があったのだろうか?

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