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原因の憶測

 ノエルが声を出そうとした瞬間告げられた、何者かのカード化報告。

 何があってカード化したのかわからない状況で声を出すのはまずいと思い咄嗟に口を塞いでしまったせいでノエルから物凄く睨まれているが、今は弁解をしている場合ではない。


《カード化の原因は?》

『わからん。急に心拍が停止し、数秒後にカード化した』

《急に心臓が……? 病気かなにかか? いや、だが……》


 早急に確認すべきは二人組の片割れがカード化した理由。

 とりあえずノエルとフィナンシェに静かにしているよう手振りで伝えながらテッドから情報を教えてもらうも、原因はよくわからない。


 見ていた限りでは樹木型魔物は動いていなかったから、魔物に攻撃されカード化したというわけではないはず。

 急に心拍が停止したというテッドの言い方から考えても、木の陰に隠れた時点ですでに魔物から深手を負わされていたというわけでもない。

 となると、原因として考えられるのは病気くらいだが……そんなにも急にカード化してしまうような病を患っている者がわざわざこんな危険な森に足を運ぶ理由が思いつかない。


『病気ではないだろうな。なぜならこの世界の者は――』

《この世界の者は、大抵の病なら一度カード化すれば根治される、だろう?》

『そうだ。この世界の者はカード化した段階で大抵の病から解放されるという話だったはずだ』


 この世界に来たばかりの頃フィナンシェから聞いた説明では、軽い病程度ならカード化した際に体内から取り除かれ、重病であったとしてもカード内で療養すればある程度は症状が軽減された状態でカードから元の姿に戻ることができるということだったからな。

 木の陰に隠れている二人組のうち片方はもう一人に背負われているということであったし、カード化したヤツが病を抱えていたとした場合にはおそらくはその背負われている方がカード化してしまうような重篤な病を抱えていたということになるのだろうが……それならば背負われなければ移動もできないような病人をこの場所まで連れてくる意味がない。


 一応、稀にカード化の法則が適用されずにカード化することもなく死に至ってしまう病もあるということはこの世界の知識として蓄えているし、万が一あの木の陰に隠れている者がそういった病に侵されているのであればもしかするともう死の刻限が迫っていてそのためにこのナラナフ森林でしか手に入らないような薬の材料を探し求め、手に入り次第すぐに調合し、飲ませ、あるいは塗布する必要があるから無理を承知で病人を連れてきたのかもしれない――と思わなくもないが、よく考えるとすでにカード化している時点でもし本当になんらかの病に罹患しているのだとしてもカード化の法則の適用外の病ではないことは確定済み。

 であれば、いまカード化してしまった人物が病で死ぬ可能性が低いということも事前に想定できたはずのことであるし、危険をおかしてまでこんな場所に連れてくる理由はない。

 カード化の法則によって簡単に他人を自由にできてしまうこの世界、いつカード化するかもわからない病人を他人に預ける気になんてなれなかったから一緒にいるという理由で納得できないこともないが……まぁ違うだろうな。

 やはり魔物だらけのこんな森に病人を背負ってやってくる者がいるとは考えにくいし、おそらくは樹木型魔物の放った遅効性の毒にでもやられたのだろう。

 この世界特有の未知の毒が原因なのだとすればテッドがカード化の原因を突き止められなかったことにも納得がいくしな。


 それに――


『今カード化した者が本当に病に罹患していたのなら辻褄が合わない。今カード化したのは、もう一人を背負っていた方の男だ』


 今しがたテッドから伝えられた、この情報。


《……え?》


 思わず聞き返してしまったが、伝えられた内容は単純明快。

 カード化したのは背負われていた方ではなく、背負っていた方。

 つまり、両者とも病人とでもいう事態でない限りは背負われていた方が病人で背負っていた方は元気であると考えるのが自然。ゆえに、カード化したのが背負っていた方の人物であるからにはカード化の原因が病気であると考えるのは不適切だということなのだろう。


 そしてもしもそれが真実であるとするならば、この辺りには人を一人背負いながらこんな森の奥まで来れるような人物ですらあっというまにカードに変えてしまうような、そんな強力な毒かなにかを持った魔物が潜んでいるかもしれないということになる……ということは、とりあえず今すぐここから離れた方がいいのかもしれないな……。

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