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二ヶ所目:ガラガ湖

 魔物からの襲撃を警戒してあちこちに視線を送っていたのも無意味だったのか、ノエルが結界を張っているのなら俺にできることはもう何もなさそうだという予想が覆ることもなく無事に時限式映像記録装置の設置が終わってから四日。

 装置の設置後予定通りに次の場所を目指し移動を開始し、特に危なげもなく辿り着いた二ヶ所目の目的地、ガラガ湖。


 その荒廃さゆえに人どころか魔物ですら近づかないのか、道中荒れ果てた周囲の景色を眺めながらえらく閑散とした開けた場所だななどと思い、本当にこんなところに湖があるのかとすら考えていたが、これはさすがに予想以上というか……予想すらしていなかったな。


 まさか本当に、水まで涸れているとは……。


「なぁ、本当にここがガラガ湖なのか?」

「ええ、そうよ! 間違いなくここがガラガ湖よ!!」

「なんで胸を張って言ったんだ……?」


 まぁ、なぜか胸を張って誇らしそうな顔をしているノエルは置いておくとして。

 自信満々にここがガラガ湖だと告げてくるノエルの声を聞きながらぐるっと周囲を見回してみても、水なんて見つかりもしない。

 目の前にあるのはただただ大きな窪地だけ。


 昔はここに水があったと言われればこの窪地が湖の名残に見えないこともないが……最後に湖が確認されたのはいつの話なんだろうか?

 窪地を近くで観察してみても泥っぽくなったりしている様子もなければ水音の一つもしないし、かつてはこの窪地いっぱいに水が張ってあったという話を信じるとしても村の一つくらいなら簡単に呑み込んでしまえそうな大きさをしているこの湖がたった数年でここまで干上がるとはとても思えないんだが……。


「ほら、トール。ここが昨日野営した場所で、ここがいま私たちがいる場所だよ。それでこれが一昨日通過した山から崖までの距離でこの山を越えてから崖に着くまでにかかった時間が大体一時間。昨日野営した場所からここに来るまでにかかった時間は三時間くらいだから……」

「たしかに、地図通りならここがガラガ湖で間違ってなさそうだな」


 フィナンシェが広げ、指差しながら見せてくれた地図を見れば一目瞭然。

 目印もないこんな場所だからどのくらいの距離を進んだかは推測するしかないが、俺たちの移動速度は一昨日も昨日も今日もそう大差ない。

 それでいて一昨日移動に一時間かかった山から崖までの距離を今日移動につかった三時間に当てはめてみれば今朝発った野営地から一昨日の山崖間の距離三つ分の位置にちょうどガラガ湖が存在していることになっている。


「うん。これだけ見通しのいい場所なら地図が間違ってたとしてもそんなに関係ないからね。もう少し先に進んでみてもいいけど、たぶんこの場所がガラガ湖跡地で間違いないと思うよ」

 

 フィナンシェとノエルがそろって目算を誤ったり地図を読み違えたりする可能性もほとんどないからな。

 これだけ開けた場所で湖らしきものの一つも見つかっていないということは、ここがガラガ湖だったということでほとんど決まりだろう。

 そして、これだけ開けた場所で魔物の姿や生物が生活しているような痕跡の一つも目にしていないということは、このガラガ湖周辺に魔物の巣がないこともほとんど確定だろう。

 つまり……。


「はぁ……」


 口から出たのは落胆のため息。

 軽く落ち込んでしまった頭に思い出されるのは四日前のこと。


 結界を張り、浮遊魔術をつかい、装置に込められるだけの魔力を込め、岩山の端――崖っぷちから岩山の内側全体を俯瞰する映像を記録できるように装置を設置し、さらにはオークたちに発見されぬよう装置を土属性魔術で周囲の岩肌に溶け込むように偽装して……。


 結局、ロックブロックの岩場では移動から設置までのほとんどがノエルの力のみで終わってしまったから、今度こそは俺も何か力にと思っていたんだが、この様子だとこのガラガ湖周辺で頑張らなくてはいけないようなことは何もなさそうだな。


 地面の下で生活するような魔物もいるからまだ油断はできないが、てっきり湖が水棲魔物の巣になっているのではないかなどと考えてここに来てしまったぶん、そもそも湖がないという事実を前にして拍子抜けといった気持ちが大きい……。


「とりあえず今日一日はここら辺に魔物の巣がないか探してみよっか!」


 とりあえずなどと言っているあたりフィナンシェもガラガ湖周辺に魔物の巣がない可能性が高いと思っているのだろうし、この感じだと明日の朝早くにはナラナフ森林目指してここを出発ということになりそうだな。

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