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いらぬ心配、万事問題なし

 近づく岩山。上がる声。


 大量にいるかもしれない魔物たちに気づかれないようにかゆっくりと飛行していたせいで思ったよりも時間がかかったが、岩山まで残り一キロを切ったであろうこの距離まで来れば俺でもわかる。


「たしかに、岩山の先でたくさんの影が蠢いているな」


 岩山の先……というよりは、岩山の中といった方が正しいか。

 フィナンシェの言っていた通りこの岩山はたしかにぐるっと大きく一周していてまるで円のような形になっている。

 形としては、アレに近いだろうか?


『見えたのか?』

《ああ。まえにシアターで観た映像の中に円形の闘技場が登場していただろ。アレに近い形をした岩山の内側に数十の動く影が見える》


 詳しい姿までは見えないが、点のような黒い影がたくさん動いているのは見えている。

 この辺りに人間が暮らしているとは聞いていないしフィナンシェも魔物の巣があったと断言していたから、あの影の正体は魔物で間違いないのだろう。


『円形闘技場か。岩山の高さはどのくらいだ?』

《空から斜めに見下ろす形になっている上にまだ距離があるせいでわかりにくいが……十メートルは超えているように見えるな》

『十メートルか。まるで小さな町だな』


 何か気になることでもあったのか高さを聞いてからそんな例えを言うテッド。

 規模的には町ではなくかなり小さな村といったところだが、言われてみればこの岩山は町を囲う外壁に見えないこともない。


《そうだな。円がもう少し大きくて中に建物でもあったなら、そう見えていたかもな》


 というより、実際に小さな町なのかもしれないな。

 あの岩山はそこそこ綺麗な円形で内側の直径も百メートル以上はあるだろうから、内側で蠢いている魔物たちからすれば外敵から身を守ってくれる安全な住処といったところか。

 岩山の外側にはまったく魔物がいないにもかかわらずあれだけの数の魔物が岩山の内側にいるということはあそこがあの魔物たちの巣になっていることに疑いの余地はないし、これは本当に小さな魔物の町だな。


「それで、あの魔物たちの正体はなんなんだ? 放っておいても大丈夫なやつなのか?」


 まぁ、あの岩山の内側が魔物たちの小さな町うんぬんは一旦置いておくというかどうでもいいとして、気になるのはあそこにいる魔物たちの気性。


 今回は調査用の装置の設置が主目的なのだからなるべく戦闘はしない方がいい。

 そしてそのためには、あそこにいる魔物たちがあまり活発に活動したり危険度が高かったりしない方が望ましいのだが――


「魔物の種類はオークとハイオークとオークジェネラルだよ。ハイオーク三体とオークジェネラル二体が協力して群れを統率してるみたい。この規模と種類ならそんなに危険でもないし、オーク種は拠点からあんまり離れない魔物だから討伐や間引きはしなくて大丈夫だと思う」


 どうやら、放っておいても大丈夫らしいな。

 オークがあまり遠くまで移動するような種でないというのなら危険地帯を挟んだ向こうにある町まで行ってしまうということもないだろうし、ここでいま倒さなくてはいけない理由もない。

 倒すにしてもここでの調査がある程度終わってからで問題ないだろう。


 とはいえ、豚型魔物は鼻がいいからな。

 対策をしてから慎重に近づかなくては。


「ノエル」

「結界を張ってあるから大丈夫よ。オークは魔力に疎いからアタシたちの姿も声も匂いも認識できないわ」

「なら問題ないな」


 結界なんていつのまに張ったのやら。

 俺としては一度移動を止めて何か対策をしてからと提案するつもりだったが、まさかすでに対策済みだったとは……さすがはノエル。世界一の魔術師を目指しているだけのことはあるな。


 ……というか、フィナンシェが遠慮せずに大きな声を出していたのも結界が張られていると知っていたからなのだろうな。

 あの岩山すべてを結界で覆うのは魔力消費が激しいだろうから、おそらくは《支点》とかいう指定した対象の動きに合わせて移動する結界が俺たちの周りを囲むようにして張られているのだろう。

 そしてそうなるとテッドも結界が張られていることには気づいていたはず。

 つまり、なんにも気づいていなかったのは俺だけか……。


「あとは装置を設置する場所を決めるだけね」

「あそこなんてどうかな?」

「よさそうね。あそこにしましょう」


 ……ノエルの結界があるのならこのあとの設置作業も心配いらないだろうし、俺にできることはもう何もないな………。

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