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とりあえず解決

「それじゃあ昨日聞いた通り、未明にはこの街を離れるんだな?」

「この都市の責任者たちには話を通してある。門を通らず浮遊魔術で街を出ていくことも承諾してもらった。予定に変更はない」


 夜。少し早い時間に夕飯を食べたあと、明日の行動についてテトラが淡々と述べる。


 何かの残した土塊の撤去も終わったからもうこの都市に留まる理由はないということなのだろう。

 明日の夜明けまえに要塞都市を離れることは昨日も聞いたし準備もできている。

 しかし、どうして逃げるようにして街を出ていかなければいけないのか。その理由が思い出せない。


《夕飯後の説明では明日ここを発つということ以外触れられなかったし、今の確認に対しても明日出立する理由については語られなかった……》


 昨日の夜、夕飯を食べ眠くなった頭でテトラから説明を受けたときは未明に街を発つ理由までしっかりと語られていたと思うんだが一体どんな理由だったか……理由自体は正直どうでもいいが、思い出せそうで思い出せないというのはなんとなく釈然としないな。


《なぁテッド、明日俺たちが夜明けまえに出発しないといけない理由を覚えているか?》


 困ったときのテッド頼り。

 テッドならきっと俺にもわかりやすいように理由を説明してくれることだろう。


『知らん』

《そうか。テッドも覚えていないか》


 なら仕方ないな。

 別段理由を訊かなければならないという事情があるわけでもなし。テトラたちに再度確認するほどのことでもない。

 少しモヤモヤとするが、今日はもう寝てしまうか。


「明日早いのならもう寝ようと思うが、他に話は?」

「いや、今ので全てだ。私以外の者も……特に語るべきことはなさそうだな。もういつ寝てくれてもかまわないぞ」

「そうか、なら、一足先に寝させてもらう」


 ノエルの結界魔術があるとはいえ夜の移動は気をつかうからな。

 明日に備え、今すぐに寝てしまった方がいいだろう。

 というか、そのための早めの夕食だったのだろうし。


「あ、じゃあ私たちも。途中まで一緒に行こ、ノエルちゃん、シフォンちゃん」

「そうね、そろそろ寝させてもらうわ」

「トールさん、おやすみなさい」

「おやすみトール!」

「アンタ、寝坊なんてするんじゃないわよ。もししたら置いていくから」

「ああ、おやすみ」


 やはり、フィナンシェたちももう寝るのか。

 熟練の冒険者は休めるときににしっかりと休むものという話を聞いたことがあるし、それこそが体調管理の基本であり秘訣といったところなのだろうな。

 要はメリハリが重要ということなのだろう。

 特に、俺たちの中で唯一の浮遊魔術と結界魔術の使い手であるノエルは早めの休息が必要だろうしな。

 なにしろノエルがいなければ浮遊魔術でこの街の外壁を越えることすらできないし、何も始まらない。

 昼間に街の外まで連れ出し安全な場所に繋いでおいたという馬たちのもとに辿り着くこともできなければ結界頼りの夜間移動もできなくなってしまう。

 それだけはまずい…………ということもないだろうがまぁ自信家でなにかと自分の有用さを誇示したがるノエルからすれば絶対に避けたいところだろう。


「……あ」


 そういえば、夜明けまえにこの都市を離れる理由は誇示の反対、目立ちたくないからだったな。

 たしか、この都市の英雄として評判が高まってしまっている俺たちが都市を離れようとすると民衆が押し寄せて見送りにくるとかなんとか。

 それでカードコレクターのような者が紛れているかもしれない民衆の中を王女であるシフォンに歩かせるのは危険だから人目につかないようにこっそりと街を出るということになったんだったか。

 ……なんとなくだが、そんな感じだったような気がするな。


「……まぁ、なんでもいいか」


 もしも理由が違っていたとしてもそれをいま確かめる気はないし、とりあえずは納得のできる理由を思いつけたのだからそれでよし。

 モヤモヤもスッキリしたし、今日はぐっすりと眠れそうだ…………いや、ぐっすりと寝すぎたら置いていかれるんだったか?

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