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膠着状態

 また日付が変わるまでに執筆終わらなかったorz

 森の木々の間から唐突に現れた五人の男。


 ひょろ長い男と黒衣の二人。

 そしてカルロスとケイン。


 五人のうち一人、ひょろ長い男が叫んだのを皮切りに、この五人を交えた戦闘が始まってしまった。


 ひょろ長い男と一緒に現れた黒衣の二人の相手はカルロスとケイン。

 さっきまでフィナンシェたちと戦っていた黒衣の相手はそのままフィナンシェと筋肉ダルマパーティが継続。

 ひょろ長い男の相手が俺とテッドだ。


 カルロスとケインがそれぞれ一人ずつを相手しているため戦場は四ヶ所。

 カルロス、ケイン、フィナンシェたちが担当している三ヶ所はすでに戦闘中だが最後の一ヶ所、俺とひょろ長い男はお互い距離をとったままその場を動けないでいる。


 戦っても勝てないかもしれないという思いもあるが、俺たちが下手に動くことでフィナンシェたちを含むこの場全体の状況が悪化してしまうことが一番怖い。

 敵もスライムであるテッドにびびって動けないのだろう。

 黒衣の奴らに自分のことを守るよう命令していた男だ。きっと俺と同じように憶病な男に違いない。

 とにかくしばらくは様子見だ。


 カルロスが言うにはこのひょろ長い男が俺たちのことを狙っているカードコレクターらしい。

 そしてカルロスとケインはそのカードコレクターを追ってこの場に現れ、俺たちに忠告までしてくれた。


 俺はてっきりカルロスとケインはカードコレクター本人かカードコレクターの仲間だと思っていたのだが今の状況を見る限りではそうではなかったようだ。

 今もカルロスとケインはひょろ長い男と一緒に現れた黒衣の二人を相手している。


 カルロスとケインは味方なのだろうか。

 まだカルロスたちが敵でないと決まったわけではないが敵だと断定できるだけの材料もない。

 これまでの情報と今の状況から考えると俺たちがカルロスとケインだと思っていた二人組は実はカルロスとケインじゃなかった。カルロスとケインはカードコレクターを追っている。俺たちもカードコレクターをなんとかしたい。

 つまり、カルロスたちは敵じゃないとまでは言えないが敵だとも言えない。限りなく黒に近いグレーな存在ということになる。

 味方だと思ったところでいきなりバッサリ斬られる可能性もあるが、とりあえずはこのまま共闘という形をとっておくのがいいだろう。


 目の前のひょろ長い男やカルロスたちと戦っている奴らのことも気になる。

 俺はさっきカルロスに指摘されるまでカードコレクターの存在をすっかり忘れていた。

 さっきまで戦っていた十七人がカードコレクターに操られた人物だというのならどこかにカードコレクターがいることはわかっていたはずなのにまったく警戒していなかった。

 カードコレクターが近くから俺たちのことを見ていた可能性なんて思い浮かんでなかった。

 もしフィナンシェたちをこの場から逃がしたとしても逃げた先でカードコレクターに襲われる可能性もあった。

 あれだけ油断しないようにと心がけていたつもりだったのに全然足りなかった。


 カードコレクター本人の実力はわからないがカルロスたちと戦っている二人は相当の腕だ。

 もし逃げる途中で襲われたとしたら手負いのフィナンシェたちがこの二人を相手に逃げ切ることは不可能だっただろう。

 そしてその二人がこの場に来てしまった以上、フィナンシェたちがこの場から逃げることもできなくなった。

 カルロスとケインが二人を抑えているとはいえこの状況で逃げるのは困難だろう。

 それに、俺とテッドが相手できるのは精々ひとりまでだ。

 敵が増えたこの状況を俺とテッドに押し付けられても困る。


 覚悟を決めたと言っておきながら全然ダメだな俺は。

 奇襲を受けてからというもの、突然のことに驚いてばかりでまったく頭が働いていない。

 もっとしっかり考えていればカードコレクターやカードコレクターの護衛と思われる二人の存在にもっと早く気づけたかもしれないのに。

 もともと頭が回る方ではないのだから意識して頭を働かせなければいけなかったのに予想外の展開の数々に思考を止めてしまっていた。

 今こうして敵を前にした状態でこれだけ考えられるのだからさっきまでだって考えようと思えば考えることはできたはずなのに。


 とりあえず、敵が増えてフィナンシェたちが逃げられる状況じゃなくなった以上は総力戦だ。

 もう敵を倒すしかない。

 カルロスの言葉を信じるならばこのひょろ長い男はカードコレクターだ。

 カードコレクター本人が姿を現しているのだからもうこれ以上の伏兵は存在しないだろう。

 ひょろ長い男と黒衣の奴ら三人の計四人、場合によってはカルロスとケインを含めて六人を倒せば一件落着だ。


 いま周囲を見回した感じだとなんとかなりそうな気がする。

 決死の覚悟で敵に挑もうとしたところに水を差された上にフィナンシェを助けるためには敵を倒すしかなくなったわけだが状況は悪くなってはいない。

 敵はカードコレクターが一人と黒衣が三人。

 それに対しこちらは俺、テッド、フィナンシェ、筋肉ダルマパーティ四人の六人と一匹、カルロスとケインが本当に味方であるなら八人と一匹だ。

 しかもカルロスたちの実力はかなり高い。

 俺とテッドはほとんど力になれず、筋肉ダルマとフィナンシェは怪我のせいで満足な動きはできないがそれでもこちらの方が少し有利に思える。


 カルロスの戦闘スタイルはクライヴに似ている。

 フェイントや科学魔法屋で見た魔力を込めると魔法が発動するボールなんかの道具をつかい相手を翻弄しつつ少しずつ相手を追い詰めていくスタイルみたいだ。

 敵はカルロスの動きに対処しようとして動作がワンテンポ遅れてしまっている。

 カルロスの相手は見るからに力自慢のパワータイプだし相性は良いだろう。

 ここからでは確認できないが視線や動作によるフェイントが上手いのだろう。

 たまにカルロスの動きとは反対方向に敵が動いている。


 相手を騙すことに主眼を置いているようなカルロスに対しケインの戦闘スタイルは堅実の一言に尽きる。

 この世界の剣術はまったく知らないがどこかの流派の型をそのままなぞっているのではないかと思えるほど愚直な動きをしている。

 しかしその動きで敵の攻撃をすべて受けきりながら少しずつ敵にダメージを与えている。

 一つ一つの動作が丁寧で素早いために動作の途中で相手が変化したとしても気付いたときには次の動作に移り相手の変化に対応してしまっている。

 スピードタイプというと違う気がするが素早い動作で敵の行動を封じるその手腕は間違いなく本物だ。


 フィナンシェたちも善戦している。

 筋肉ダルマとクライヴの二人で敵の攻撃を受けフィナンシェとジョルドが敵を攻撃している。

 攻撃が敵に当たることはほとんどないが敵の攻撃もフィナンシェたちに直撃していない。

 あの敵は投げナイフを投げてきた奴だから心配していたが敵の持つ剣に毒が塗ってあるなんてことはないようだ。

 ダメージを食らったフィナンシェたちの動きにおかしいところはない。

 それよりも心配なのは筋肉ダルマとフィナンシェがいつまで戦えるかだ。

 筋肉ダルマは腹をバッサリ斬られていて本来なら動けるような状態ではないだろう。

 フィナンシェも意趣返しのように傷つけられた右腕の血が止まっていない。

 二人とも応急処置はしてあるが患部に巻かれた布や包帯には血が滲んでいる。

 二人が倒れる前に相手を倒すか、カルロスたちが敵を倒して加勢に行くまでもってくれればいいのだが。


 ローザさんはなぜか戦闘には参加せずにジョルドの隣で立ち尽くしている。

 ただ、ローザさんが動かない理由は俺やひょろ長い男が動けないでいるのとは違う理由だろう。

 高威力の魔法をつかう際には精神を集中させて魔力を練り上げる必要があると聞いたことがある。

 おそらく、強力な魔法をつかうために集中しているにちがいない。


 テッドの感知があればひょろ長い男が急に動き出したとしても対応できる。

 そう思い、フィナンシェたちの戦いぶりを眺めていたら不意にひょろ長い男が話しかけてきた。


「君がスライムを連れた少年かぁ。そして君の肩の上に乗っているのがスライム。よければ名前を教えてくれないかな? あ、ぼくはシークっていうんだ。君たちのご主人様の名前だからちゃんと覚えといてね」


 にちゃりとした表現がぴったりな不気味な笑顔と口調で勝手にしゃべり始めるシークと名乗るひょろ長い男。


 気持ち悪いという感情が素直に浮かび上がってきた。

 なんなんだこいつは。

 状況はこいつにとって良くないはずなのに俺たちをカード化して配下に加えるのが確定しているみたいに言葉を話す。

 こんな気持ち悪い奴の配下になんて絶対になりたくない。


「名前は教えてくれないか。まぁいいや。名前なんて下僕にしたあとに聞けばいいしね。それよりも、どうしてぼくが君たちから逃げないのか不思議って顔してるよね。教えてあげようかその理由」


 今は気持ち悪いものを見たときの顔をしていたはずだがそんなことは関係ないとばかりにひょろ長い男は言葉を続ける。


「それはねぇ。ぼくが君たちの弱点を知っているからだよ」


 弱点。

 まさか、俺たちの本当の実力がバレたか?

 いや、それならわざわざ弱点なんて言い回しはしないだろう。


「あれ、弱点に心当たりがないかい? もしかして君は弱点だと思っていないのかな?」


 相手の佇まいからは俺たちへの警戒が読み取れる。

 やはり、俺とテッドの本当の実力がバレているわけではないみたいだ。


「なら教えてあげよう。君たちの弱点、それは力を上手く加減できないことだ! 君たちは力を加減できない。だから、周りに仲間のいるこの状況では君たちは実力を発揮できない!」


 ズビシッと音が出そうな勢いでひょろ長い男が俺たちを指差してくる。

 その顔にはいやらしい笑みが張り付いている。


「ぼくはずっと君たちを監視していた。しかし、そのあいだ君たちは一度もまともに戦闘を行っていない。だから思った。もしかして君やそのスライムは自身の持つ強大な力を上手く制御できていないんじゃないかって」


 さっきクライヴにも似たようなことを言われたな。


「確信したのはさっきだ。本気を出す、逃げろ。ぼくがあそこの男二人に追われてこの道に出てくる少し前、微かに聞こえた君の言葉だ。必死に逃げながらだったけど確かに聞こえたよ」


 カルロスとケインを睨みながら俺たちが実力を発揮できない理由とやらを語ってくれる。

 俺たちの本気なんてたかが知れているのに、こいつはさっきの俺の覚悟をそういう風に勘違いしたらしい。


「ぼくらじゃ君たちには勝てない。けどそれは君たちが実力を発揮できたらの話だ。君は軽く走ったり物を壊さないように触れることくらいはできるようだけど君ができる力加減はそれだけだ。それ以上の力を発揮しようとすると周囲にも被害を及ぼしてしまうんだろう? だからさっき十七人に囲まれたときも戦闘を行わなかった。いや、行えなかった」


 無論、そんなことはない。


「そこのスライムにいたっては自力で動いているところさえ確認されていない。つまり、少し動こうとしただけで周囲に被害が及ぶような力が出てしまう危険性があるということだ。だから君はそのスライムに一切の行動を禁じている」


 そんなこともない。

 テッドの感知は地面に対しては上手く働かない。それを補うために俺の上に乗っていることが多いだけだ。

 街中では周囲の人を発狂させないためにかばんの中に入っていてもらわないといけなかっただけで、周りの迷惑を考えないのであればテッドが一匹で自由に行動することもできた。


「とにかく、君たちは仲間が周囲にいる今の状況じゃぼくに手出しできない。だからぼくは君たちの前に立っていられるのさ」


 俺たちの力にはびびっているけどその力を発揮できない今の俺たちは怖くない、ということか。


「君たちを狙っている親玉であるぼくを前にしても全く動こうとしない。今のこの状況が君たちがぼくに攻撃できないという事実を物語ってくれている。攻撃がないとわかっていれば君たちなんて怖くない。そろそろぼくの下僕になってもらうよ!」


 言い終わる前にひょろ長の両手から氷のつぶてが飛び、それと同時にひょろ長がこちらに突っ込んでくる。


 その攻撃をきっかけとし、膠着状態は終わりを迎えた。

 今頃はカードコレクターとの戦いに決着がついている予定だったし今回もバトルメインにするつもりだったのに思うように話が進まない。

 これもキャラが勝手に動くってやつなんでしょうか。

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