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考えるのはやめにしよう

「それで、もう一度確認したいんだが、何かは本当に倒せたのか?」

『ああ、間違いなくな。ダンジョンも機能を停止したみたいだぞ』

「なら安心だな」


 何かが動きを止めてから三十分ほど。

 テッドからの返事を聞きホッと一息。


 テトラたちの疲労は激しく、ノエルは魔力切れ、地面に下りるなり倒れてしまったシフォンももうこれ以上回復魔法をつかえる状況にないということでこの場を離れ、この街で戦闘指揮を執っていたという指揮官の計らいで安全な場所まで避難してしまっているからな。

 フィナンシェもその指揮官や他の街から来たという兵士たちに事のあらましを説明したあと後のことはすべて俺とテッドに任せると言ってノエルたちに付き添って街の中に行ってしまったし、今この場にいるのは俺とテッドとあとは何かの残していった土塊の倒壊や魔物からの襲撃を警戒している兵士や冒険者たちのみ。

 周りにいる兵士や冒険者たちの中には【ヒュドラ殺し】がいるのなら大丈夫、なにかあってもすぐに解決してくれるだろうというような空気を醸し出している者もいるが、俺たちが何かと戦っていたときに要塞都市からの援護が全くなかったらしいということを考えるとこの中に何かのような大物に対抗できるだけの力を持った者はいないのだろうし、もちろん俺にもそんな力はない。

 こんな状況でまたこのデカブツ(土塊)が動き出したり魔物が大量に現れたりでもしたら大変どころの騒ぎじゃないことは一目瞭然だからな。

 核を破壊すれば何かは止まるだろうというテッドの予想が当たってくれてよかった。

 この土塊が動く気配がなく魔湧きも終了したらしいというのならだいぶ気も楽になる。


「あとはこの、バカみたいに大きい土塊をラールに被害が及ばないように崩すだけか……」


 ……とはいっても、どうすれば安全に土塊を崩すことができるのか。

 兵士たちの中でも特にそういったことに詳しいらしい工兵や魔法兵と呼ばれていた者たちも調べているみたいだが下手に動かそうとしたり崩そうとしたりすれば簡単にラールの半分は呑み込みながら倒壊してしまうだろうということだったし……。

 ここはやはり、今日はラールから全員避難させておいてノエルの魔力が回復次第ノエルに魔術でなんとかしてもらうというのが堅実的だろうか?

 こんな山のようにふざけた大きさはしていなかったが、それでも以前に城くらい巨大なヒュドラを同じく巨大な土属性魔術で抑え込んでいたノエルのあの腕前があればこの土塊も安全にこの場から取り除くことができるような気がするしな。

 というか、兵士たちから聞いた話ではこの土塊は何者かの魔法か魔術によって簡単には崩壊しないよう補強・固定されているということであったし、おそらくは何かがラール寸前で動きを止めたときにノエルが魔術を発動して頑張ってくれていたのだろう。

 だから何かの核が何かの口から出そうになったとき、ノエルは浮遊魔術を制御できるくらいの魔力しか残っていなかったのだろう。


「まぁ、この土塊が崩れないようにノエルが頑張ってくれていたとかそういうことのまえにもう夜だしな。この暗闇の中でこんなデカい土塊の撤去作業を行うのは普通に危険か」


 兵士たちも夜のあいだは監視と簡単な調査にとどめ、本格的な撤去作業は夜が明けてから行うつもりらしいからな。

 できればこの土塊が完全に片付くまでは寝るつもりもなかったが、俺たちにできることもなさそうだしそろそろフィナンシェたちのいるところに向かうか。

 こんなところに一人でいてまたカーベのようなヤツに襲われても困るし……。


《そういえば、何かに取り込まれたカーベや魔物たちはどうなったんだ? この土塊の中でカード化しているのか? それとも何かと一緒に死んだのか?》

『さあな。感知可能な範囲にはカードは確認できなかったぞ』

《じゃあ、テッドの感知が及ばないほど奥でカード化しているか、それかカード化もできずに何かと運命を共にしたか。現段階ではどちらとも言えないってことか》


 どちらにせよこの土塊の撤去作業が始めればいずれは判明すること。

 そんなに気にすることでもないと思うが……。


《他にもカーベとほぼ同時に俺たちを襲ってきた男女の二人組のことや、何かはどうしてケンタウロスのような姿をとっていたのかとか、よく考えてみれば色々と気になることは多いよな》


 特に、二人組。

 何かはもう倒したからそこまで気にしなくていいが、二人組の方はまた俺たちのことを狙って襲ってくるおそれがある。

 そのときに備え、なんらかの対策をしておかなければならない。


『二人組の男の方はどこかでカード化しているだろうが女の方は見つからないだろうな』

《俺たちをダンジョンごと結界の中に閉じ込めたヤツが、おそらくその女だからか?》

『そうだ。あの女は結界の扱いに長けていたからな。あのタイミングで大規模で強力な結界を張れる者は、あの女だけだろう』

《やっぱりか。だとすると、女の方は確実にラシュナから離れているな》


 魔湧き中のダンジョンや何かや俺たちを結界の中に閉じ込めたのは自身の安全を確保するため。

 そして、何かに破壊されるまで半日以上も残っていたほどの強力な結界を張ってまで俺たちを閉じ込めていたということは、それだけ中に閉じ込めたモノに外に出てきてほしくなかったということだろうからな。

 何を恐れていたのかは知らないが、女は確実に遠く離れた地まで逃走していることだろう。

 少なくともラシュナにいる可能性は限りなく低い。

 それだけの結界を張れるだけの力があるなら魔物に倒されカード化していることもないだろうし、今頃はどこまで行ってしまったことやら。


『どの方向に逃げたかもわからん。追跡は無理だな』

《なら、気にしてもしょうがないか》


 懸念事項が増える結果になってしまったが、まぁ仕方がない。

 カーベの言っていたことからたくさんのカードコレクターに俺たちの情報が出回ってしまっていることは確認済みだし、今さら狙ってくる相手が増えたところでそう大差はない。

 相手の数は少なければ少ないほどいいが、どのみち相手がどれだけいるのかもわからず警戒を緩めるわけにもいかないのだから同じことだろう。


「さて、シフォンに回復してもらったとはいえ今日は色々あったからな。テッドも疲れてるだろう? 俺たちもそろそろ眠りに行くか……」

『待て。この場を離れる時はあの男に伝えてからではなかったか?』

「悪い、忘れてた。そうだな。むこうにいる指揮官に伝えてから離れることになっていたな」


 もうなんというか、この場を離れるときは指揮官に一声かけるように言われていたことさえ忘れてしまうほどに考えるのが面倒くさくなってきたということなのだろう。

 実際疲れてもいることだし、こういうときはさっさとこの場を離れ現実逃避気味に寝てしまうのが一番だな。

 面倒なことは明日起きてから考えればいい。

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