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暴発

 スライムよりも鈍い足取りで進むこと三時間と三十分。

 アンジェは三時間後にはダンジョンの出口まで辿り着けるといったようなことを言っていたはずなのに、その予想されていた時間を過ぎても未だ出口は見えず。


《テッド、核は?》

『ダメだ。見つからん』


 残り一つとなった何かの弱点、核も見つからず。


「フィナンシェ殿、ノエル殿! まだいけるか!」

「ええ、余裕よ!」

「私も、まだまだ動けます!」

「そうか! やはり頼もしいな! 我々もさらに気合を入れるぞ! シフォン様を絶対に守り抜け!!」

「「「はッ!!」」」


 フィナンシェたちが泥人形を倒し続けてくれているおかげでなんとか前に進めてはいるが、新たに現れ続けている敵の多さもさることながらフィナンシェ以外は全員一度以上はシフォンの回復魔法の世話になってしまっている始末。

 見るからに顔色が悪くなっていることからシフォンの体力や魔力残量も少なくなっているのだろうし、これ以上の連戦はまずい。

 回復魔法の有無は死活問題だ。

 シフォンが倒れてしまえば次に誰かが負傷した時点で先に進めなくなると思った方がいいだろう。


 ……とはいえ、どうすればよいのか。

 とりあえずダンジョンから脱出するという方針は間違っていないだろうからこのまま出口を目指して進んでいくとしても、フィナンシェもノエルもテトラたちも現時点ですでに最善を尽くしている。

 この世界でも有数の実力者であるフィナンシェたちが揃って最善を尽くしているにもかかわらず、この結果だ。

 進みは遅く、何度か無視できないほどの傷も負い、シフォンの回復魔法があってなんとか泥人形との均衡を保てている状況。

 もし出口まで辿り着きダンジョンを脱出できたとしても何かや泥人形が外まで追ってこないとも限らず、さらにダンジョンの周りは結界に閉ざされている。


 隔離され、逃げ場のない状態でいったい何時まで逃げ切れるか。


 一番の問題点は、ダンジョンから脱出したところで根本的な解決にはならないというところ。

 もし脱出に成功し、結界も解かれていてラシュナやさらにその向こうまで逃げおおせることができたとしても、ダンジョンすら取り込んでしまった何かという存在は残ることになってしまうし、放っておけばラシュナのダンジョンのみならずこの周辺の土地までも何かに食われ、支配下に置かれてしまう可能性がある。

 というより、ラシュナのダンジョンの魔湧きを鎮めにきたというシフォンの目的からして何かをどうにかしないかぎりここから離れることはできないだろうし、フィナンシェもシフォンを手伝うためここに残ろうとするだろう。

 ノエルも自分の実力を示すために残るに決まっている。

 そしてもちろん、そんな状況で俺とテッドだけ「はいさよなら」というわけにもいかない。

 俺としても、何かという明らかな脅威を残したままラシュナを離れたのでは気持ちが落ち着かないし、安心して眠ることもできない。


 ……やはりというか結局というか、何かをなんとかしないかぎり今回の決着はつかないのだろう。

 そしてなればこそ、何かにトドメを刺す方法を知りたいのだが、いったいどうすれば何かにトドメを刺せるのか。

 どんなに考えを巡らせてもその方法は思いつけそうにない。


 そもそも、この広いダンジョンを取り込み己のカラダとしてしまったらしい何かからその弱点である小さな核一つを見つけ出し破壊しなくてはならないということ自体が不可能に近い。

 泥人形が襲ってきているとはいえ何かが自分の体内にいる俺たちのことをしっかりと感知しているのかどうかすらわからないし、もし感知していないのであれば俺たちのそばまで弱点である核が来ることもあるかもしれないが、感知されてしまっているのであれば核は絶対に俺たちの近くには移動してこない。

 というより、ダンジョンを取り込んだ今でも核が何かの体内を移動し続けているのかどうかわからないか。

 それでも――


《どちらかといえば俺たちのことを感知されていた方が核の位置を予想しやすいか? 何かが俺たちのことを感知しているのなら核は常に俺たちから遠く離れた位置に移動させているだろうし、何ヶ所かにアタリをつけてノエルに貫通力のある魔術でそこを狙ってもらえばトドメを刺せる可能性も……》


 ――と思うだけなら簡単。


『ノエルの魔力がもたないのではないか? これだけ広大なダンジョンを貫ける魔術があるとも思えんぞ』


 現実はテッドの言うように簡単にはいかないだろう。






 ……と、そうしてフィナンシェたちが泥人形と戦い、俺とテッドで何かを倒す案を考え続けることさらに一時間。


 地図上ではとっくに出口のある地点を通り過ぎたにもかかわらず、未だダンジョンからは脱出できず。

 もしかすると何かがダンジョンの内部構造を変化させているのではないかと思い至った頃――


「ああもう、面倒くさいわね! 派手にぶちかますわよ!!」


 ――遂にノエルが、キレた。

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