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再再再々……度重なる予想外

 目の前までやってきたメタルリザードの急所を突きカード化させ、さらに後ろから続いてきたブルシットホーンを脚、首、胴と順番に斬りつけることで危なげなく斬り伏せる。


 ラシュナのダンジョンから誕生する魔物の弱点や行動様式はすべて把握済み。

 散々魔湧き対策をしてからここに来たおかげか、一体ずつ襲ってくる敵なら難なくカード化させることができる。

 魔物の大半を受け持ってくれているフィナンシェや護衛騎士たちにはまだまだ及ばないが、フィナンシェたちのおかげで俺やシフォンの前までやってくる魔物の数は著しく少ないし、この程度であればあと数時間だって戦えそうだ。

 そう思いつつ、斬り、突き、叩き、弾き、燃やし、飛ばし、潰しと、フィナンシェや護衛騎士たちが剣や魔法を用い様々な方法で魔物を片付けていくのを横目で盗み見ながらこのあとの行動について考える。

 手順としては、まずこのまま襲い来る魔物たちの相手をし続け、ノエルの準備が終わり大規模魔術が発動され次第ダンジョンから次の一群が現れるまえに何かを捜しだす。

 この手順で、間違いはないはずだ。


《問題はノエルが大規模魔術を放って以降、辺り一帯から魔物が消えているあいだに何か(アレ)を見つけられるかどうかだが……テッド、何か(アレ)がどこに行ったか予想はできないか?》

『……厳しいな。何か(アイツ)がどうのような意図で魔物を取り込んでいたのかわからんし、そもそもどのような感覚器官を持っているのかもわからん。遠方まで知覚できるような器官を持っているのならばダンジョンの入口に向かっていると思うが、襲撃してくる魔物の数が先ほどまでよりも多いからな。その可能性は低いのではないか?』

何か(アレ)によって数が減らされていない分、正面から来てる魔物の数も多くなっているということか? 魔物の数が増えているから、正面方向には何か(アレ)はいないと?》

『そういうことだ』


 何かの向かった先がわからないかと同じ魔物であり大食らいでもあるテッドに訊いてみたが、返ってきた答えは感覚的なものではなく理論的なもの。

 思っていた返答とは少し違ったが、おかげで何かはダンジョンの入口がある方へは向かっていないらしいことがわかったからまぁいいか。

 ……といっても、正面にはいないということがわかったところでじゃあどこに行ったんだとなるだけなんだが…………。


 とりあえず大雑把に正面を省いてみたとしても斜め向かいや左右に後方と、行き先の候補はいくらでもある。

 せめて左に行ったか右に行ったか、前にいるのか後ろにいるのかだけでもわかればいいんだが……というより、いつのまにか後ろに抜けられていた場合はラシュナはもちろんその先の町や村までもただではすまないことになるだろう。

 なにしろ、相手は触れるものすべてを吸収してしまえる存在だ。

 どのようにすれば傷を負わせられるのかも今のところはわかっていないし、もしこのまま対処法がわからず対応も遅れてしまえばいくつかの国が滅びることになったとしてもおかしくはない。

 少なくとも、それほどの脅威だと思って臨んだ方がいいということだけは確かだろう。


「ノエル! 上から見て魔物の少ない場所とかはないか!」

「こんなに暗いのよ、見えるわけないじゃない! 気が散るから黙ってなさい!」


 とにかくなんとなんくでもいいから何かのいる場所にアタリをつけておかないとノエルの大規模魔術で一掃後また魔物が湧き出てくるまでのあいだに何かを発見することなど不可能だろう。

 そう思い大規模魔術の準備のため上空に退避中のノエルに一応声をかけてみるも、ノエルからの返事は荒々しく、その内容も大体事前に予想できていた通り。

 フィナンシェでもあるまいし、普通はこの暗闇の中で光源もなく遠方を見通すことなどできやしない。


《あるいはフィナンシェなら上から周囲を見ることもできるかもしれないが……》

『フィナンシェを戦線から離脱させる気か? 堪えきれなくなるぞ?』


 テッドの言うように、フィナンシェがいなくなれば魔物を倒すための手が足りなくなる。

 それ以前にフィナンシェに上から何かを捜してもらうためにはノエルから浮遊魔術をかけてもらう必要があるが大規模魔術を準備中の今のノエルにそれだけの余裕があるかどうかわからないし、そもそも何かがまだ生きているのかどうかすらわかっていない。

 よくよく考えてみると何かに魔法攻撃を試した覚えはないし、もしかしたら何かは物質は取り込むことができても雷のような魔術攻撃は取り込めずに通用するかもしれない可能性もある。

 そしてもしそうであれば、今頃はさっきノエルが発動した魔術によってカード化、あるいは消滅しているかもしれない。

 そう考えると、迂闊にフィナンシェを戦闘から遠ざけるような真似はできない。

 居もしないかもしれない相手に怯えて現在を危機に曝すなど愚の骨頂。

 まずは生き延びなければ話にもならないとは、この魔湧きが開始されてから何度も思っていることである。


 ――などと考えた次の瞬間。


「あっ、ちょっと!」

「え?」


 ノエルの誰かに抗議するような声と、思わずこぼしてしまったというようなシフォンの小さな疑問の声が重なって聞こえてくる。


「どうした!」

「わからないわ! けど、閉じ込められたわ! 結界魔法よ!」


 二人の声が聞こえてすぐノエルに何があったのかと訊ね返ってきたのは、そんな答え。


『結界魔法』と、『閉じこめられた』……。


 今一つ理解が及んでいないような気もするが、とにかく、またなにか厄介なことが起こったらしいことだけは理解することができた。

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