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まず一つ

 パァンッと何かが弾けるような音。

 フィナンシェが剣を振り下ろすたび、何故か物が弾けるような音が聞こえてくる。


『もう少し右だ。新しく生えたアイアンゴーレムの腕の付け根を狙え』

「フィナンシェ、やや右に修正! 新しくできたアイアンゴーレムの腕の付け根だ!」

『お前は一歩下がってその場で横に薙げ』


 走り、叫び、下がり、薙ぐ。

 テッドから言われたことをフィナンシェに伝えつつ、こちらはこちらで別の核を狙って剣を振る。

 フィナンシェのように弾けるような音は出ないが、ガッという音と手に握った剣が何かを切断したという手応えが返ってくる。


《これでいいのか? 次は?》

『メルロに持ち替え、肩の高さで正面へ向かって全力で伸ばせ』

《わかった。こうだな?》


 攻守ともにテッドに頼りきりの戦闘。

 剣から持ち替えたメルロに魔力を込め正面に向かって突き伸ばしたあとも『避けろ』『斬れ』『突け』『止まれ』と続くテッドからの指示に従い、身体を動かし続ける。

 何かはまだ激しく動いた反動から立ち直っていないのか反撃はあるものの先ほどまでのように回避しきれずに傷を負うということもない。

 フィナンシェが攻撃に加わっていることも良いのかもしれない。

 目の前のコイツに意識なんてものがあるのかどうかは不明だが、もしあるのだとしたらフィナンシェが加わりそっちにも意識が割かれるようになったことで俺たちへの攻撃が遅くなり、単調化。手数も先ほどの半分以下になっているのかもしれない。


 とにかく、このままなら……今攻めたてればコイツを再起不能にできる。

 そう考え身体にやる気を漲らせつつ、目の前に突き出されたアイアンゴーレムの腕を避けてはさらにその腕からこちらに向け新しく生えてきたというメタルリザードの爪を避け、一度縮めたメルロを思いっきり地面に向けて伸ばし叩きつけることでその反動を利用して後ろへ跳び何かから少し距離をとり、すぐさま剣に持ち替えては足元から迫るライオニードルの体毛を斬り払う……が、微妙に核から外れた位置を攻撃してしまったりそもそも核まで攻撃が届かなかったりするせいでなかなか決定打が出ない。

 しかし――


「フィナンシェ、左だ。そこを狙え! 《小火》」

「ここだね!」


 ――こちらも、一人ではない。


 小さな火を一瞬発生させるだけの簡単な火属性魔法《小火》をテッドの指示した場所に発生させ、その火に向かってフィナンシェが剣を叩きつける。

 すると、それまで聞こえていたパアンッという音の他にパキッという何かが割れるような音も聞こえ、《小火》の残光によって微かに見えていた何かのカラダが大きく波打ち、苦しんでいるかのように暴れ出す。


《やったのか?》

『とりあえずは一つ、といったところだな』


 暴れ出した何かから距離をとりつつテッドに確認してみると、核の破壊に成功したという答えが返ってくる。


 さすがはフィナンシェ。

 どうやら本当に核の破壊に成功したらしい。


《なら、残るは二つだな。そのまま指示を頼むぞ》

『当然だ。あんなガラクタ、すぐに片付けるぞ』


 そのまま昂りそうになってしまう気持ちを抑えつつ、テッドに一言。

 テッドからの頼もしい返事に頷きを返し気を引き締めると、身体の痛みも軽くなる。


 まずは一つ。

 核を破壊されて暴れ出したことから核が弱点であるという考えが間違っていなかったらしいことと核の破壊は不可能ではないということがわかったが、ここで気を緩めると一瞬で形成逆転されてしまう恐れもある。

 本当に安心できるのは、残り二つの核を破壊し何かが動かなくなったことをしっかりと確認してから。

 だからこそ、まずは一つということをしっかりと肝に銘じておく必要がある。


「フィナンシェ、無事か!」

「うん。平気だよ! それよりも早く次の場所を教えて!」

「次の弱点の位置は――」


 何かが暴れ出したときそのすぐ近くにいたフィナンシェの無事も確認したところで反撃を再開。

 依然として何かは暴れているものの、シールからナールまで追いかけてきたことと核を破壊しようと攻撃を続けていたさっきまでの攻防で何かの動きに慣れたのか、フィナンシェの動きは素早く的確。


 二個目の核を破壊するまで、反撃再開から二分もかからなかった。

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