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連戦行脚、疲労困憊中

「ここが旧ミカグラ採掘場よ! メタルリザードがたくさん住み着いてるらしいわ!」


 ターコンス高原から浮遊魔術で十分。

 すでに使われなくなった採掘場。

 敵はメタルリザード。総勢百二十七体。


 滞在時間:一時間と二十二分。

 身体状態:回復魔法によって全快。

 精神状態:軽度の疲労。




「ここがサナミナ森林よ! 植物系の魔物がたくさんいるわね!」


 旧ミカグラ採掘場から浮遊魔術で二十五分。

 リカルドの街二つ分くらいはありそうな大きさの森林。

 敵は木や花に擬態した魔物と森に住み着いている種々の魔物たち。討伐数百六十一体。


 滞在時間:二時間。

 身体状態:回復魔法によって全快。

 精神状態:動くのがダルく感じられる程度の疲労。




「ここがミラ沼よ! 水棲魔物の宝庫よ!」


 サナミナ森林から浮遊魔術で十二分。

 ところどころ濁っている部分の見られる、湖と呼んでも差し支えない広さの沼。

 敵は魚型、貝型、虫型、蛙型、蛇型、蜥蜴型……。討伐数九十体。


 滞在時間:三十七分。

 身体状態:回復魔法によって全快。

 精神状態:怒り。放心。現実逃避。




「ここがトーミヤ盆地よ! とにかくたくさん魔物がいるわ!」


 ミラ沼から浮遊魔術で五十分。

 とにかく広大な盆地。

 敵は四足型、二足型、飛行型、六足型、十足型。討伐数七十二体。


 滞在時間:一時間。

 身体状態:回復魔法によって全快。

 精神状態:意識の混濁。重度の疲労。




「ここが交易都市リーシャンの東門よ! 腕試しはこれで終了にするわ!」


 トーミヤ盆地から浮遊魔術で一時間三十分。日没直前。

 現在拠点としている交易都市リーシャン東門前。

 およそ十時間ぶりの帰還。


 身体状態:回復魔法によって全快。

 精神状態:眠気。倦怠感。安堵。






 ――と言ったところだろうか。


 疲労のせいかそれとも思い出したくもないのか、ミラ沼での戦闘開始直後からの記憶が曖昧になってしまっているが、曖昧になってしまっている部分をテッドの証言で補完するといま紙に書いたような内容になるはずだ。

 しかし……。


「今日一日で本当にこんなに倒したのか?」


 討伐数の総計が優に五百は超えているんだが……。


『嘘を言う必要があるか?』

「いや、ないな」


 俺の疑問に対するテッドの即答。

 たしかに、テッドが俺に嘘を伝えても何の意味もない。


 しかし、これが事実だとしたら今日だけで優に五百を越える数の魔物を討伐していることになる。

 魔力を用いることによって人間よりも遥かに正確に周囲を把握している上に頭も良いテッドが数を数え間違えたり記憶違いをしていたりするとは思えないが、この数をたった四人で討伐したというのはさすがに素直には納得しにくい。

 特に、その四人のうち一人が俺というのが余計に信じがたい。


 ミラ沼の途中からはずっと瞼を下ろしていたような気がするし、そもそも起きていたのかどうかすら覚えていない。

 そんな俺が本当にこの異常な討伐数に貢献できていたのだろうか。

 テッドからの指示に従って動いていたとしても、記憶が残らないほど頭が働いていない状況下で適切に魔物と戦えていたとは思えないんだが……。


「もう一度聞いておきたいんだが、これだけの数の魔物と戦いながら、俺はかすり傷一つ負わなかったんだな?」

『そうだ。誰一人として怪我を負っていない』


 戦闘終了後に全員がシフォンから回復魔法をかけてもらっていたのは戦闘による疲れを癒すため。

 その回復魔法によって傷が癒えた者はいない。


 二度も確認したんだ。

 これは事実なのだろう。


 そして、それが事実だからこそなおさら信じがたい。


 集中力が切れるどころか意識があったかどうかすら危うい俺が無傷で長時間の戦闘を乗り切る。

 果たしてそんなことが可能なのだろうか?


「……まぁ、いいか」


 考えるのも面倒くさくなってきた。

 部屋で休んだおかげでだいぶ視界もはっきりしてきたとはいえ、記憶が曖昧になるほど異常な精神状態にあったのはついさっきのこと。

 今日はもうこれ以上頭を働かせない方がいいだろう。


 記憶が曖昧になったのは浮遊魔術での移動中ですら次の目的地について何も教えてくれないノエルに振り回されたせいで何の情報もなくたくさんの見知らぬ魔物と連戦するハメになったから。


 その戦闘を無傷で乗り切ることができたのは日々の戦闘訓練によって俺の地力が上がっていたから。


 とりあえず、今はそう思っておくことにしよう。

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