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どっちみち

 ノエルが旅支度を始め、フィナンシェはそんなノエルを応援している。


 よくわからないが、これはもう話がまとまってしまったということなのだろうか。

 すぐにでもブルークロップ王国に向かって旅立つような流れになってしまっているんだが……。


「フィナンシェはギルド長の態度を気にかけて、ブルークロップ王国行きを遅らせた方がいいという意見じゃなかったか?」


 まさか魔湧きの日が来るからそこで活躍して名を上げたいというノエルからの頼みを聞いただけで、コロッと意見が反転してしまったのだろうか?


「そこはまだ気になってるけど……クライヴさんは問題ないって言ってたんだよね?」


 ノエルの応援を中断し、こちらに振り向いたフィナンシェがそう訊いてくる。


「怪しい情報はないと言っていたな」

「それなら大丈夫なんじゃないかなあ?」


 ギルドでのクライヴとのやりとりを思い返し、問題があるようなことは言っていなかったと伝えると、気の抜けるような間延びした声で答えが返される。


 真面目に考えているのかと問いたくなるような返事だったが、言いたいことはわからなくもない。

 クライヴから教えてもらったリカルドの街やブルークロップ王国周辺の情報の中に、きな臭い話はなかった。

 俺としても、ギルド長のことが無ければ今すぐ出発してもいいと思っているくらいだ。


 というか、フィナンシェとしてはギルド長の態度なんかよりもノエルの力になることの方が重要ということなのだろう。


 知り合いが頑張ろうとしていたらそれを全力で応援するのがフィナンシェという人間であるし、ましてやノエルは仲間。

 クライヴから仕入れた情報から危険は少ないと判断できるし、そうなればフィナンシェが今すぐのブルークロップ王国行きに賛成したとしてもなんら不思議ではない。


 それ以前に、フィナンシェとノエルがいれば大抵のことは何とかできるしな。

 この二人がいて危険に陥ることなんて滅多にないだろうし、なんだかもう説得するのも面倒くさくなってきた。


 クライヴが言うにはブルークロップ王国の情報は少し古いものであるらしいからそこが少し心配ではあるが、ギルド長が俺たちを止めようとしていた理由は政治的な駆け引きのためというのがフィナンシェ、ノエル、クライヴの見解。

 ノエルも「本気でアタシたちを政治に利用としようとしているなら領主からの命令書でもなんでも持ってきて街から出さないようにしているはずよ。そうしていないんだからギルド長の言うことなんて無視していいのよ」と言っていたし、政治についてはよくわからないが、政治的な理由でブルークロップ王国行きを止められているというのであればギルド長の発言は無視してしまってもかまわないのだろう。

 

 そもそも、ギルド長含むこの世界の人間は全員、俺やテッドの実力を盛大に誤解しているからな。

 ギルド長は俺たちのことを世界最強の存在だと思っているわけであるし、そう考えると俺たちの身の安全を心配してくるわけがない。

 そして、俺たちの身の心配をしているわけでないのなら俺たちを引き留めようとする理由は政治的なものくらいしか考えられない。


 となると、やはりギルド長の言うことは無視してしまってかまわないな。


「今日はもう遅いから、明日の朝一番に出発するわよ!」

「朝ごはんをしっかり食べてから出発しようね!」


 二人も行く気満々であるし、どのみち今からこの雰囲気を覆すことなど俺には不可能。

 ここはもう説得は諦めて、せめて俺だけは馬に乗らなくてもいいように交渉する方向に切り替えた方が正解かもしれない。






 肌寒い。

 日が昇って間もないからか、空気がまだ冷たいな。


「本当にギルドに報告しないで出発するのか?」

「いいのよ。またギルド長に止められても面倒でしょ?」


 ギルドの言うことなんて放っておけという態度のノエルが鼻唄まじりに返答してくる。

 機嫌が良さそうなのは、ノエルがテッドに近づけるようになるための旅立ちだからだろうか。


「問題ないわけじゃないけど、ブルークロップ王国に行くってことは一応昨日伝えてあるから……あははは」


 ノエルの言い分だけでは信用できないためフィナンシェにも視線で返答を求めると、返答に困ったかのように笑いながらそう返事をしてくる。


 問題はあるみたいだが、そもそも俺たちは友人に会いに行くだけだしな。

 文句を言われるようなことはしていないはずだ。


 政治的に問題があったとしても、そんなことは政治のわかる人たちがなんとかすればいい。


「じゃあいくわよ」

「頼む」


 街を出て少し歩いてからノエルに浮遊魔術をつかってもらい身体を浮かせ、足の裏が地面から離れたことを確認しながら両手でしっかりと棒を握りしめる。


 今回初の試み。

 手に持った棒はノエルの乗る馬と縄で繋がっており、念のため身体にも縄を巻き付けている。


 こうしておけば馬に牽引してもらえるのではないかと考えて準備してみたが、果たして上手くいくのだろうか?

 上手くいけば、馬に乗らずに馬と同等の速度で移動できるはずなんだが……。

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