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捜索終了

 テッドの指示に従い、カードを集める。


 捜索範囲が広いため体力的には少し大変だが、捜索自体は難しくない。

 テッドの感知能力があれば瓦礫の下や隙間に入ってしまっているカードであっても簡単に発見することができるし、瓦礫を動かさなければ回収できない場合も近くにいる兵士たちに手伝ってもらえば何の問題もなく回収できる。


『左に二メートル、二枚』

《……二枚とも魔物か》


 テッドの指示した場所に移動し新たに回収したカードは二枚ともアーマードベアー。

 はっきり言って、両方ともハズレである。


《次、頼む》

『感知範囲内にはもうないぞ』

《わかった。移動する》


 この王都跡地で被害者の捜索を開始してから今日で三日目。

 昨夜の時点で王都が存在していた頃の七分の五ほどの範囲の捜索が完了し、集まったカードの枚数は三千枚を超えている。


 三千と聞くとかなりの数に思えるが、トーラたちが言うには三千では少なすぎるらしい。

 これでは王都から逃げ延びたと予想される人数を足しても元々王都で暮らしていた住民の半数にも満たないというのがトーラたちの見解。

 一昨日、少しの瓦礫だけを残してほとんど更地へと変化してしまっているこの王都跡地を見た際に予想していた以上に被害が大きいと思ったばかりだが、もし今朝聞いたトーラたちの見解が正しいのだとすればさらに予想以上に被害が大きかったことになる。


 カードを残すことなく消えてしまった住民の半数はヒュドラの毒によって一瞬のうちに全身を溶かされてしまったのか、それともカードコレクターのような者に回収されてしまったのか。

 どちらにせよ、無事ではないことは確か。

 このまま王族が見つからないようならベールグラン王国は本当に滅亡してしまうらしいし、ヒュドラによる被害がいかに甚大であったか、改めて恐ろしく思う。


『右前方、一枚』

《また魔物か》


 今度はロックディア―。

 おそらく、この付近に存在するというダンジョンから出てきた魔物だろう。


 今みたいに人間だけでなく魔物のカードも落ちているのは、ヒュドラが破壊した場所から王都へと侵入してきた魔物が冒険者等によって倒されたりヒュドラの攻撃に巻き込まれたりしてカード化したからだろうか。


 ヒュドラから逃げなくてはいけない中さらに他の魔物にも襲われることになるとは不運すぎるとしか言えないが、これは逆に考えることもできる。

 さっき見つけた二枚も魔物のカードであったし、昨日まで捜していた場所と違い、この辺りには随分と魔物のカードが多い。

 つまり、この辺りにいた人間はアーマードベアーやロックディアーなんかの魔物にやられた可能性もあり、ヒュドラの毒に当たって溶かされてしまった者に比べるとカード化している可能性が高い。

 ということは、今日は昨日までよりも多くの人数を救出できるかもしれない。


 ……ただ、カードの状態で十五日以上が経過してしまうと精神が壊れてしまうという話をフィナンシェから聞いた覚えがある。

 ブルークロップ王家の回復魔法なら壊れてしまった精神を治すことも不可能ではないが、それをするには一人につき十日分の魔力を必要とする上そこまでしても絶対に精神を治せるという保証はないため三千という数になるとさすがに対応しきれないという話もテトラから聞いている。


 ヒュドラがこの場所を襲ってからすでに五十日以上。

 これまでに発見したカードとこれから発見するカードのうち、正常な意識を保っている者はほとんどいないだろう。

 三千枚以上のカードを発見できてはいるが、そのほとんどはもう人間らしい生活を送れなくなっているかもしれない。






 やはりアーマードベアーなどの魔物にやられた者が多かったのか、今日捜索した範囲には昨日までよりも多くのカードが落ちていた。

 夕飯前にトーラから聞いた話だと最終的な救出カード枚数は七千に届くかもしれないとのこと。

 それでもだいぶ少ないらしいが、予想よりは被害が少なく済んでいるといえないこともない。


「カードから戻しても精神が壊れてしまっていたら被害的にはカード化すらせずに死んでしまったことと変わらない。だが、少なくともカード化したまま誰にも気づかれずに何百年、何千年と放置されることはなくなったのだ。それだけでも救出した価値はある」


 うろ覚えだが、トーラはこんな感じのことを言っていただろうか。

 実際に数百年ものあいだカードの中に閉じ込められていたトーラだからこそわかることがあるのだろう。

 先ほどのトーラの言葉には強い意志と説得力が込められていた。


「捜索活動の方はほとんど終了したらしいわね」

「うん。明日と明後日も捜索は続けるけど、王都だった場所は一通り捜索し終えたってトーラさんが言ってたよ」

「そう。アタシたちも明後日の昼には地面を綺麗に均し終わると思うわ」

「そしたらこの国ともお別れだね。次は……」


 テントの中、ノエルとフィナンシェが会話している声を聞きながら、ゆっくりと意識が薄れていった。

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