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これまたあっさりと

 何人いるかもわからない正体不明の敵。

 攫い屋の二人がここに来たということは俺たちがダンジョンに逃げたことはバレている。

 このままここにいるのはまずい。


 そう考え移動した森の奥。

 ノエルの張った球状の結界に守られながら、目の前に現れた九人の敵と対峙する。


「アンタたち、アタシにこんなことしてどうなるかわかってるんでしょうね!」


 俺が起きてから二時間と四十分。

 すでに日は昇り、敵の姿もはっきりと視認できる。


 今いるのは木々の少ない小さく開けた広場のような場所の中心。

 遮るものがなく見晴らしは良いが、隠れられるような場所もない。

 さらに敵の放った炎が半円状に俺たちを取り囲んでいるせいで敵のいる正面にしか逃げ場がない。


 ノエルが吼えるも、元気なのは口だけ。

 半径二メートルほどの球状の結界の中、両隣にいるフィナンシェとノエルは見るからに憔悴している。

 その証拠に、威勢のいい声を出した後もノエルは何もできない。


 逃げ場はなく、身体もボロボロ。

 一晩中気を張っていたことが疲労となって表に出てきてしまっている。

 傷こそ負っていないが、二人とも戦える状態ではない。

 当然、俺は戦力外。


 完全に追い詰められた形。


「今日は本当に運がいいな! 【ヒュドラ殺し】に【金眼】に【炎華】。二つ名持ちを三人も手に入れられるなんて!」


 俺たちに余力が少ないことを理解したのか、嬉しそうな声を上げる中肉中背の男。

 あれが敵の親玉だろうか?

 あまり強そうではないな。

 なんというか、特徴がない。

 印象に残らなそうな見た目をしている。

 三番目に呼ばれた【炎華】という名には覚えがないが、状況からしてノエルのことだろうな。


「勝手なこと言ってんじゃないわよ! たった九人、アンタたちなんてすぐに倒してやるんだから!」

「おや、まだそんな元気があったのか。いいかげん、虚勢を張るのはやめたらどうだ?  お前は今からやられるんだよ。お前がいま馬鹿にした九人にな! ほら、どんな気持ちだ? 悔しいか? 屈辱か? 俺は愉快な気分だよ。はーはっはっはっはっはっはげふ、げふん、ごほん、ごほん」


 ノエルが再び叫ぶが、その言葉は敵に軽く笑い飛ばされる。

 普段のノエルならこんなふうに挑発をされたら絶対に怒る。

 俺に突っかかってきたときのように怒鳴り散らし、威張り散らすだろう。


 案の定、隣を見るとノエルが下を向いてぷるぷると震えている。


 あーあ、やっちゃったな。

 そう思った三秒後、正面にいた九人は地に伏した。






「作戦通りね!」


 腕を組んでふんぞり返ったノエルがそう叫ぶ。


 俺たちの周囲で燃えていた炎はノエルの魔術によって完全に消し去られ、結界もすでに解除されている。

 そして目の前には九枚のカード。

 夜、俺たちを襲ってきたあの女のカードもこの中にある。

 伏兵がいる可能性もあるが、一応敵は九人しかいないという言質をとってから倒した。

 これで、夜から続いたこの襲撃もひとまず終わったと考えていいだろう。


 それにしても本当に大した苦労もなく倒すことができたな。


 敵はフィナンシェとノエルがいるときに俺の部屋を襲撃してきた。

 しかもわざわざ蝋燭の火を消しての襲撃。

 蝋燭の火がついていたのだから俺たちが起きていたことには気づいていたはずなのに、それでも攻撃してきた。

 これは敵がバカか自信家であることを示唆している。

 どちらにせよ都合がいい。

 敵が慎重に物事を進める性格でないのなら、攫い屋の二人を利用して罠にハメてしまえばいい。

 そう考えたノエルの思惑通り、敵はバカだったし、簡単に罠にハマってくれた。


 どうやったら敵の位置と人数を知れるか考えていた俺とフィナンシェに対して、攫い屋の二人を指差しながら『こいつらのどちらかに敵をここまで連れてきてもらえばいいわ。アタシたちを追い詰めたとでも言わせておけばむこうからやって来てくれるわよ』と言い始めたときには気でも狂ったのかと思ったが、まさか本当にその通りになるとは。


 保険をかけていたとはいえ、敵を呼びに行かせた攫い屋の男が裏切ったり逃げたりしたらどうするつもりなのかとか色々と考えていた俺がバカみたいだ。

 敵もこんな小者だったし、あんな適当な作戦でも案外なんとかなるもんなんだな。

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