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僕をさりげなく弱らせる方法  作者: 降井田むさし
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ぬいぐるみと僕

ぬいぐるみを欲しいと思ったことはたぶんない。ゲームセンターとかでは取ったときの達成感や取るまでの行程などを目的にプレーしていたのだと思う。欲しいからとかそういう理由をゲームセンターのぬいぐるみでは抱いたことは無いだろう。


ピンクの丸いキャラクターのぬいぐるみをUFOキャッチャーで取ったことがある。もちろん取りたいとも取れるともあまり思ってなかった。だから一回のつもりでプレーした。UFOキャッチャーのアームが僕の腕よりも弱いことも知っていた。だから絶対取れないだろうと思っていた。でも、そのキャラクターの頭に付いている細いヒモの狭い隙間にアームが偶然入って取れてしまった。


そのキャラクターのぬいぐるみは大きくて、テレビの中継で見る方の硬いバレーボールではなく、柔らかい方のバレーボールの大きさくらいあった。その後、その丸くて大きなぬいぐるみは、なんやかんやでスーパーマーケットの商品券に変わっていた。


スーパーマーケットにはよく行く。家から歩いていける距離にあるから。でもスーパーマーケットで買い物をしたあとの帰り道で二回に一回はビクッてなる。最短で帰れる帰り道の目線の先にぬいぐるみがいるから。近所の家の半透明な窓にへばりつく犬のぬいぐるみは不気味すぎる。普通のぬいぐるみではビクッとはならない。だがそのぬいぐるみは、いい感じに崩された不気味な顔をしている。そして窓が半透明なのでぼやっとしている。それにいい感じに覗いている感を漂わせている。恐ろしい。


自分の犬のぬいぐるみをソファーとソファーの間に入れていた記憶がある。プレゼントはあまりしないが白い猫のぬいぐるみを誰かに贈ったことは覚えている。僕はぬいぐるみは別にプレゼントしてほしくはないが、プレゼントでくれるとしたら小さいサイズのぬいぐるみでいい。もし二メートルくらいのクマのぬいぐるみを貰ったとしたら部屋に入る度にビクッてなる気がするから。スーパーマーケットの帰り道以外でビクッてなりたくないから。


ぬいぐるみは、ぬいぐるみって名前だから、布で包んであってそれを何かしらの糸で縫ってあれば、ぬいぐるみって名乗っていいのかななんて疑問を抱いている。ただの立方体でも縫って包んであればそれはぬいぐるみなのだろうか。


僕をさりげなく弱らせるとしたら、スーパーマーケットからの帰り道に見かける不気味な犬のぬいぐるみがいる窓を僕が通る度にちょっとずつちょっとずつ何日もかけて開けていって、最後には全身が見えるようにすればいい。ちょっとずつ犬のぬいぐるみが姿を露わにしていくことが怖くてかなり弱るだろう。その近所の家の半透明な窓にへばりつく犬のぬいぐるみと同じタイプのぬいぐるみが取れるUFOキャッチャーを見かけてしまってもかなり弱るだろう。あの犬のぬいぐるみは一匹見るだけで十分だから。

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