表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

 胎動の章 その1

「うーん、う~む!!、、、まいった!!・・・」

「何とかならんだろうか!??」

おとこは、かなり悩んでいた。

 通常  

{大概の悩みというものは他人に打ち明けられれば8割がた解決する!}

と、いうが、、、

「・・・・・・・・・・」??!!

この場合、それは、あてはまるまい。

 ナニシロ、原因は、、、?、、、、これなのだ!


 「ぐぉー、くぅーーールルル、ひゅー、、、ふおっ、、*****ピュ~ン、ひよっ、ヒョッピー?!」


「・・・」


「・・・・」


「へうーーーーーーーーッ」


「ああ! うるさくて、、、、たまらん!!!!」


「どういう、、イビキなんだーーーっ!」


凄まじい、轟音を立てているのはヘラ族のトングーだ。

もっとも私は、普段{カパラ}、、、と、よんでいる、、

普段はここまでけたたましくはないのだが、、、、、!?

 彼ら、齧歯系ヘラ族の顔つきは鼻先が長く口が尖がっている。

体全体も毛深く、愛嬌のある顔つきはどことなく、

カピバラにそっくりで、なんとも憎めない存在なのだが…イビキのひどさは深刻だ。


し・か・し・!


問題はもっと別のところにある、、、、

 起きているときは、ある意味もっとうるさい!

ナニシロ・・・息を吐くように喋りまくる!相当なおしゃべりだ!!!

 

 ・・・きっとこやつは、口から先に生まれたに違いない。・・・


 しかし、この世界の他の種族たちもヘラ族を嫌うものは皆無に等しい。

国家間の争いが無ければ、、、の話だが。

  

 この世界は、複数の小国から成っていて互いに牽制、親交を繰り返しながら戦いの歴史を、綴っている。


 カパラと私の属しているいジュレム・ルーティン王を君主とするわが国は、

なりふり構わぬ武力で拡大し続けるドーベン・ダンマを指導者とする大国に次ぎ、

二番目の勢力を保っていた。

、、、とは言っても残りの小国全部をわが国がたばねたとしても、なんとか互角、

という状態ではある。

 だが、圧倒的な力の差で覇権を、握ろうとしているドーベン・ダンマ率いる軍を

打ち破れば、、、

おのずと 他の小国を我が国に追随させ忠誠を誓わせることができるだろう!!

 そして、王道を進むわがジュレム・ルーティン王が、魔界を束ねることになろう!


 

 幸運にも、


その舞台は整いつつあった、まったくの偶然の積み重ねでは、あったが、、


 だが!!


信じられないような奇跡的な偶然というのは、

歴史を振り見れば・・まま、起こり得るものだ!!!


その天下分け目の戦は、なし崩し的に我等200対敵軍22000という構図になってしまっていた。

 ウォルガ軍隊長率いる我々は戦に備えての先行軍として、多量の兵糧を運搬し

敵を迎え撃つ前線基地となるところにまで届けるのが目的だった。

 だが、運の悪いことに我々が国境近くのところまで進んだとき背後の川が氾濫、、

退却をすることも出来ず、

しかも敵軍が攻め寄せて来るまでの間に味方の本体が到着できるかどうか?

という、微妙なタイミングとなってしまっていた。

 明日には、敵軍22000の大軍がこの地に押し寄せてくるのである。


 そして日輪は登り戦いの幕は明けた、、、



巨大な龍が、空に向かってかけ登らんがごとく炎が渦を巻きながら立ち昇る、

 次の瞬間、、!?頭の中を、揺さぶられるような轟音が全身に突き刺さる!

 

敵軍には物理的にも精神的にも大ダメージを与えられたと、、確信する!


 言い伝えにある、古の超魔法並みの力が目の前で具現化したのだ!!

 彼らの驚きは、想像を絶するものだったに違いあるまい。

魔法力を、大幅に増幅させる作戦は天をも味方にした。

「この戦!我等が、勝利せり、、」思わず口元がゆるむ!

 

 「ま、まさか!?これほどの、威力までに、、、!?」

 ウォルガ軍隊長が隣で、茫然としたまま炎と、私の顔を交互に覗き込む

そのふたりを、吹き飛ばす勢いで、


「当たり前でアス!アシのお師匠様の作戦でアス!!凄いに決まっているでアス!」

 まるで自分の御手柄のように、、

えへん!、、、ッといった風にカパラが

大見得を切った。


「し、しかし、信じられません、魔法力がほとんど枯渇した現在、このような方法があるとは??

いったい、、あ、あなた、、は、、、!?」

ウォルガ軍隊長が言葉を続けようとすると、カパラが遮るようにまくし立てる。

「ウォルガ軍隊長!!お師匠様に失礼でアス!このくらいのことは、お師匠様にとっては

朝飯前でアス!」

 いつながら、カパラの無作法なふるまいには冷や冷やさせられるがヘラ族の彼らの言葉には、

真心があり、実直なふるまいに不快感を感じるものなどほとんどなかった。

 それ程、彼等は他の種族にも愛されているといえる。


 「そ、そうであったな!カパラ、すまん、すまん!」

恐らくはこの国一番の剛の者であろうウォルガ軍隊長が、苦笑いを浮かべながらカパラに頭をさげる。

 彼は、、ベント種族の長で体格は正に戦人!しなやかな筋肉と強靭な骨格を持っている。

体毛は濃く、猿獣系のいかつい顔つきだが誰よりも忠誠心が強く、常に冷静沈着、公平な判断力の持ち主で

ジュレム・ルーティン王は誰よりも信頼していた。

 ただ、軍人としての地位は右将軍、左将軍に続く三番目であったが、これは彼の実力が他の二人に比べ

とび抜けているが故のルーティン王の采配である。

 

「まったく!今更お師匠様のすごさに気付くとは遅いでアス!!」

頭をさげる軍隊長に、さらに追い打ちをかけるカパラ、流石に見過ごしているわけにもいかず

二人の間に割って入る。

 「カパラ!もういいではないか!」

 「これ以上軍隊長を、困らせると今宵の勝利の美酒がまずくなる。」

 「そ、そうでアスか?では、この辺で勘弁するでアス!」

 まだ言い足りない、、

という顔をしていたが軍隊長の方に向き直るとにっこりと不器用な笑顔をみせた。

すかさず、

{いや!助かり申した}

という顔で軍隊長が私に目配せをした。・・・

だが、このカパラのキャラクターに何度救われたことか!思わず思い出し笑いする自分を省みる・・・


・・・随分と変わったものだ、、・・・


以前の私は、感情などほとんど表すことがなかった。

笑う、、などといった事は皆無だった。

 まあ、それは部分的な記憶喪失ためでもあろうと思われるのだが、そもそもこの世界になぜ自分が

いるのかも、全く覚えていない。

 ただ、それまで自分が存在していたところには、青空も、草も、風も無く狭隘な空間で生きていた、、

と、いう実感だけが身体にしみついている。

 

ある日突然、空を見上げ、土を踏み、、そして、体を風がとりぬける音、その心地よさ、、、

今まであり得なかった五感全てを刺激する世界は、今迄自分がいた世界と余りにも違いすぎて

軽くめまいを感じるほどだった。

 まるで、身体中の表皮を剥ぎ取られ真皮が剥き出しにされたように強い刺激が頭の中を通り過ぎた。

冷静さを取り戻すのに、小一時間ほど過ぎただろうか?

 遠く目に、獣のような姿が見える。慌てて大地に臥せり、動きを観察した。

ケガでもしているのか?動き始めた亀のように遅く、緩慢な動作だった。

 

・・・ほっと胸をなでおろす・・・

 あの動きならば、慌てて逃げることもあるまい。

改めて、自分自身を確認する、、、

 特に、身体的に問題はない、、自身の顔面と背中は確認できようもないが、、

着ている衣服履物も破損している様子は、?、、ない、

持ち物は?、、、

「なんだこれ?」

孤独であることは充分に認識していたが、思わず口から言葉がとびだした。


・・・透き通った石のような、、ガラスのような・・・


 明らかに、人為的な加工の残ったピンポン玉ぐらいの物を手の中に握りしめていた。

なぜ、そんなものを持っていたのかはもちろん覚えているわけもない。

 だが、何となく自分を取り戻す手掛かりになるような気がして其の儘ポケットにしまい込む。

背中になにか背負っているのか?、重さを身体に感じつつそれを下ろした。

 緑色のそれの真ん中にあるボタンの部分を触ると、静かにふたが開いた。


中身は何だろう??、、、


 緊急用とかかれた飲料水、食品と思しき固形物

・・高カロリー繊維質豊富そのまま喫食可・・

と書かれている。他、流動食にも同じような書き込みがあった。。

 それと、通信機器なのか、小さな画面のついた板状のもの、、、試しに電源を入れてみる!?

 この名前さえ覚えてはいないものの、この板状のものの扱い方は普段慣れ親しんでいたのか、

そうするのが当たり前のように指先が動くことが不思議だった。

 画面には、エラーコード2501、、と表示された。これは、何らかの不具合で全機能が

使用不能な場合に使われるナンバーのはず???

なぜ自分がそんな知識を持っているのか覚えてはいないが、何らかの形で学習をしたのは間違いない。


ふと気に成って、さっきの獣らしき方に目を向けると、、なんと!?

二本の足で歩行している!

歩行するしぐさも、じつに人間ぽい!

 「???、、にんげん?、、、なのか?」

だが、遠目にも体毛は濃く、頭の骨格は人間と程遠い。

 しばらく観察を続けたが、、「あっ!、、・・?!」

今度は、独り言と一緒に思わず体がピクリと反応する。

人とは、割と勝手なものだ、、

獣と思い込み放置していたのに人間かもしれないと感じたとたん、

ばたりと倒れ込む姿を見て些少な煩慮が生まれた。


 ・・・様子を見に近づいてみようか?・・・

 だが、手負いの獣だとしたら自殺行為だ、、しかし観察した時の動きは、体を引きずる様だった、

脚にけがをしている、、というよりは体の半身が動かない、、、

そういう様相だったので、恐る恐る歩を進める。

 ゴツゴツした岩場を超えると、さっきの獣と思しき動物は、、

大き目の岩に身体を預けて浅い息を繰り返していた、、、

 かなりの大けがで片腕は、完全に折れ骨が飛び出している、、、

と、云うよりはみぎ半身に甚大な損傷を負っている!!

 

 ・・・恐らく、半日とはもつまい!?・・・

 それほどの、有り様だった。

 やはり、自分が一瞬思った様な人間ではなく異端な様相をしていたが、

虫の息状態のそれを、ほおってはおけず、、

取り敢えず、手持ちの水を与えようとしたが、?

   

 ・・・器がない!!・・・

 どうしたものか?筒状器の水を渡したところで飲むことはできまい!?

 考えた挙げ句、獣と思しき動物の近くまで進むと丁度よい岩のくぼみを見つけて

そこに、半分ほど注ぎ込んだ。

 恐らくは警戒心がいっぱいでおびえながらも殺気立った目を、こちらに向けつづけているので

信用はされまい、、


 其の儘、視線をそらさずに始め居たところまで下がり、

手に持った水を、殺気立った視線を感じつつも飲みほして見せた。そして、その場に腰を下ろした。

しばらくの間、訝しむ態度を見せていたが、、やがて少しずつ身体を引きずりながら

水を注ぎ込んだ岩のくぼみに身を寄せてきた。

 やがて、そこまでたどり着くと鼻を寄せてクンクンと嗅覚で安全を確かめるようにした後、

長い舌で器用に水をピチャピチャとすくい上げる。

 喉の渇きを癒せたことで落ち着きが出たのだろう、殺気立った視線は和らいだものの、

再び歩を寄せると、さっと身を翻えし私の手の届かないところまであとすざりした。

 そこで今度は、食べ物を与えようと考えたのだが

固形物は食べられないような状態だったので、

流動食を一食分取り出すと半分を岩のくぼみに、

残りは蓋をせずにその場に置き、また元の場所に戻った。

 

水のときと同じく、安全かどうか確かめると余程空腹だったのか一舐めで吸い上げ

残りの半分は、驚いたことに怪我のない手でつかむと人間がそうするように飲み干したのだ!

 かなりの知性を、持っているのか!?、、

だが、、さらに驚くべきものを観た!!

ほんの少し、間を過ごすと体の傷が見る見るうちに治癒していく!!!

まるで、何倍速にもした映像をみるように、、、だ!

 だが、だが、、このあと、、、腰が抜けるほど驚くことになる。


                               つづく

 



 






 








 


















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ